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特徴的なオープンイノベーション事例⑪:インフラ・設備メンテナンス分野でのオープンイノベーション

国交省によると、今後30年で必要となる道路・河川などのインフラ維持管理・更新費用は最大194兆円を超えると推計されています。(2019年~2048年) また、道路・河川などの公共インフラだけでなく、工場設備・鉄道設備・電気・ガス配管等、民間が保有する設備も含めると、より巨額のインフラ維持管理・更新費用が必要になることは容易に想像できます。
社会生活の維持、安定的な生産の継続に必要不可欠なインフラ・設備のメンテナンス業務ですが、工場での生産業務と比較し、まだまだ自動化・機械化が進んでいません。というのも、作業対象が巨大であり、かつ(何百万個も画一的な製品が生産される量産製品の製造と比較し)対象が少量、また形状・構造・使用素材などが多種多様であることから、ロボットに求められる動作が複雑になってしまい、そもそも技術的に困難かつロボットの開発費用が割高になる傾向があります。このため、高さ200mの工場の煙突への登攀など、危険な作業もいまだに人によりなされています。

一方、既設インフラ・設備の老朽化進行への対応や、作業者の安全性の確保、作業者の高齢化・労働人口減少を補うため、インフラ・設備のメンテナンス業務の自動化・省力化は急務と考えられています。また、5年前と比較し、センシング技術・(AIを含む)画像解析等の情報収集・処理技術が格段に進歩・一般に普及してきており、その追い風もあってか、ここ2-3年積極的なインフラ・設備メンテナンスの自動化に関する研究開発やオープンイノベーション活動が活発になっている傾向がみられます。

例えば、2015年には国土交通省による「次世代社会インフラ用ロボット(トンネル維持管理用)」では、国のプロジェクトとしてインフラ用ロボットの研究開発が推進されました。またナインシグマでも、東京電力株式会社による「送電鉄塔の塗装を革新する技術の開発パートナー」や大手メーカーによる「コンクリートの劣化を、移動しながら非接触で検査する技術」を支援しました。

 

<2015年実施の事例紹介>

送電鉄塔の塗装を革新する技術の開発パートナー

東京電力株式会社が、これまで人手に頼ってきた送電鉄塔の塗装メンテナンス(鉄塔各部位にリーチしての錆とり、塗装はがし、それらの飛散防止、塗装など)の劇的な省力化に挑む開発パートナーを求めた。

※募集要項の詳細

 


② コンクリートの劣化を、移動しながら非接触で検査する技術

大手メーカーが、コンクリートの劣化を、移動しながら非接触で高速に検査できる技術を求めた。具体的には、地上高さ5~10mを走る高速道路の裏面(床・梁など)や柱のコンクリート劣化を、地上を走る自動車に搭載した検査機で走りながら検査することを想定。

※募集要項の詳細

 

続いて、2017年~2019年実施の事例を紹介します。

<2017~2019年実施の事例紹介>

③ 自走式線路点検装置の開発パートナー

大手鉄道会社が、線路上を無人で走行し、軌道狂いや線路上の障害物などの線路の異常を検知することができる装置の開発パートナーを求めた。

※募集要項の詳細

 


④ 自走式植物ツル伐採ロボットの開発パートナー

東京電力ホールディングス株式会社が、電柱支持線から植物ツルを除去可能な自走式ロボットの開発事業社を求めた。自走式ロボットは、昇降機構部および伐採機構部で構成されることを想定しており、いずれか一方の機構のみの提案も可とした。

※募集要項の詳細

 

 

⑤ 高所作業の安全化チャレンジ~鉄塔・煙突に命綱を張るロボット~

山九株式会社が、煙突・鉄塔工事において危険を伴わざるを得ない作業を安全に行う手法を確立すべく、ロボットやドローンなどによる無人での親綱初期展張技術の実現を共に目指すパートナーを求めた。
※募集要項の詳細

 

 

上記以外にも、大手建設会社による「コンクリート画像の高精度な画像処理技術」、東京電力ホールディングスによる「蓄電池の状態を遠隔にモニタリング・診断可能にする技術」, 「管路内における融着ゴムの剥離技術」、「地中掘削工事の効率化パートナー」、「工事の効率樹木伐採化パートナー」など、大手建設設備事業社による「無線通信が可能な省電力の振動センサ」等の公募を実施しました。

 

2015年と2017年~2019年で、インフラ・設備メンテナンス技術に関する技術の推移をナインシグマに相談いただいた範囲で見てみると、2015年では「点検・検査システム」などロボティクスにおける「認知・知覚」が主たる自動化の対象となっており、該当する技術の研究開発は大手メーカー、大学などが主として担っているという傾向がありました。あるいは「鉄塔メンテナンスの自動化」など、一つのメンテナンス業務における課題全体に対応可能なソリューションを求める傾向となっていました。
一方、2017年~2019年は、センシング技術・画像処理等の「認知・知覚」技術に加え、修繕・修理時の「動作」部分の機械化・自動化即ちロボティクスにおける「アクチュエータ・制御」技術を求める事例も増加しました。また、「動作」部分の機械化実現のため、トータルソリューションを求めるのでなく、課題を要素分解・単純化しロボットが実現しやすい動作として落とし込んでいる事例が増えました。
また、ロボットによる作業動作の代替実現を実際に目指すという、フィールド試験を経ての試行錯誤・すり合わせが重要になる案件が増えたことから、日本国内の企業を対象としパートナーを求める案件が多くなっています。点検・検査システムに関しても、従来のような大手IT企業や大学だけでなく、中小企業やベンチャー企業による提案も増加傾向にあり、この分野の技術に関する研究開発のすそ野が広がっていることが推測されます。

 

今後、より実践的なインフラ・設備メンテナンスの自動化検討が活発化する可能性が高く、ますますインフラ・設備メンテナンス分野におけるオープンイノベーションが加速すると考えられます。
オープンイノベーション活性化により、ロボット関連技術を有する組織にとってはビジネスチャンスの広がりが期待できます。また、技術を求めるユーザー側から見ると関連技術の研究開発が活発化することにより、より使用環境に即した技術を得られる可能性が高まります。オープンイノベーション活性化により生まれた好循環により技術革新が進むよう、ナインシグマも微力ながらお手伝いを進めていきたいと考えています。

 

これまで、11回にわたりナインシグマが支援したここ2-3年の特徴的なオープンイノベーション事例を紹介してきました。

ここ1-2年のオープンイノベーションブームでは、CVCの設立やスタートアップの買収などの大がかりなものがメディア等で取り上げられてきた傾向にあります。一方、今回の事例紹介にあるような「身近な課題を解決するために外部パートナーと協働すること」もオープンイノベーションの一つです。ナインシグマではオープンイノベーションという言葉が一般になる10年以上前から、企業のオープンイノベーション活動の支援を行ってきています。単にパートナー・技術探索だけでなく、これまで蓄積してきたノウハウを生かした「オープンイノベーションが機能するための組織づくり支援」や、様々な分野の技術に知見を有する点を生かした「技術の出口戦略策定支援」、あるいは堀江氏らによる「新規テーマ創出支援」など、(技術分野問わず)研究開発推進に関連する幅広いお手伝いが可能です。

オープンイノベーションをやってみたいけれど何から始めていいのかわからない、あるいは研究開発に関して悩み事をお持ちの場合は是非お気軽にご相談下さい。

 

 

金森 朋子
ナインシグマ・アジアパシフィック株式会社
東京工業大学大学院  理工学研究科  化学専攻修了、日産化学、NEC (Thailand)を経て、ナインシグマ入社

 

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