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COVID-19から生まれた事業機会と脅威―グローバル専門家コミュニティの多様な視点から ①

129名の専門家から見た今後のトレンド・機会・脅威を収集
COVID-19の世界に与える影響はあらゆる領域に及んでいます。その影響は側面によってネガティブな場合もポジティブな場合もあり、視点によって見える景色は大きく異なります。
ナインシグマは、独自の専門家コミュニティ「OIカウンシル」に所属する、世界中のグローバル企業のメンバー129名から見た今後の機会や脅威について意見をヒアリングしました。
その結果、サプライチェーンのローカル化、デジタル化などの大きなトレンドから生まれる、各業界への具体的な事業機会や脅威についてのコメントが得られました。

各業界のマネージャ層の見解を3回にわたってご報告
この記事では本調査で得られた知見を3回の記事にわたってご紹介します。

調査は、管理職以上のメンバーを中心に各業種、欧米など海外メンバー129名を対象にアンケート形式で行いました。COVID-19が引き起こした一概にとらえきれない変化の中で、本調査の提供する様々な視点からの景色が、皆様の事業の未来を見通すヒントになれば幸いです。

OIカウンシルメンバー内訳

OIカウンシルメンバー業種

 

サプライチェーンは脱グローバル化するが、ビジネスの国際交流は続く
以下のグラフはCOVID-19が国際的な経済環境に与えると思われる影響についての複数選択の質問の集計結果です。

COVID-19が国際的な経済環境に与えると思われる影響

図. 今後のグローバルのビジネス環境について

途上国やアジア経済の優位性についての見方は割れていますが、全体的にはサプライチェーンの脱グローバル化を上げている声が多く、6割ほど得られました。一方、ビジネス上の国際交流が減少するという声はごく一部、2割程度に限られました。
一見相反するような見解ですが、サプライチェーンのローカル化による危機耐性を高めることと、オープンイノベーションをふくめたビジネス上の国際交流を行うことは矛盾するわけではありません。生産・物流のフェーズではローカルに、企画・商談・研究開発などのフェーズではグローバルにというすみ分けが見て取れます。

脱グローバル化=危機対応x気候変動対策
具体的なコメントをいくつか見てみると、以下のようなものがありました。

  • サプライチェーンのローカル化(地産地消)に進むが、一方で危機への備えとして海外オフィスとのやり取りは円滑化・緊密化するだろう(サービス業、ディレクター)
  • COVID-19は伸び切ったサプライチェーンの脆弱性を明らかにした(建設、ディレクター)
  • サプライチェーンのローカル化が進む。目的は2つあり、1つが危機への適応のため、2つ目が環境影響への配慮(農業系サービス業、ディレクター)

危機への対応のためという目的に加え、長距離輸送がもたらすエネルギー消費やCO2排出環境影響を減らすという観点が見られました。脱グローバリゼーションというトレンドには、気候変動対策という以前からのトレンドに重なった動きという面も見て取れます。

さらにサプライチェーンのローカル化に言及するコメントも見られ、途上国が自国産業を成長する機会となるという見解もありました。

  • サプライチェーンがローカル化する傾向になれば、途上国が自国産業を育てる機会になる(エレクトロニクス、R&Dディレクター)
  • 影響が小さかったASEAN諸国のシェアが増えるだろう。国際的な貿易・流通は縮小する(エレクトロニクス、CTO)

デジタルトランスフォーメーション・地産地消が多くの業界に影響
続いて、COVID-19によって引き起こされると予想されるトレンドについて、事業へのインパクトが大きいものを選んでもらいました。

多くの業界で、デジタルトランスフォーメーションが第一、次に地産地消の影響が大きいとみられています。

COVID-19から生じるトレンドで、事業へのインパクトが大きいもの

 

図. 自社ビジネスに最も影響が大きいトレンドについて

皆さんが実感されている通り、全体的にデジタルトランスフォーメーションの加速による影響が大きいのは明らかです。それ以外に、このデータから見られる特徴としては以下が挙げられます。

  • 自動車業界では、「移動のデジタルツールへの置き換え」「地産地消」という、直接的にヒト・モノの移動を減らすインパクトが注目されている
  • 食品業界では地産地消の影響が大きいとみられており、保存や物流、生産の在り方へのインパクトが懸念される

これらの大きなトレンド変化の中で、具体的にどのような機会や脅威が起こり、我々のビジネスに影響を与えていくのでしょうか。
この次の記事では、これらのトレンドに関して、より具体的な事業機会や脅威を掘り下げたコメントを見ていき、関連する事例とともにご紹介します。

 

佐藤 佳邦(Manager)
得意な技術領域:リチウムイオン電池、炭素材料、ナノ材料
ナインシグマにて、材料・化学分野を中心に大手メーカーのオープンイノベーション支援、
コンサルティングを提供するとともに、技術者コミュニティ・データベース設計・運営、
OIカウンシル事業の推進を担当。
2012~2016年 昭和電工でリチウムイオン電池材料の開発や技術営業、生産プロセス検証
2012年 東京大学大学院工学系研究科 修士課程修了(化学システム工学専攻)