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特徴的なオープンイノベーション事例③:オープンイノベーションのテーマから見る水素社会実現の鍵

脱炭素化が重要な社会課題となる中、燃焼時に二酸化炭素を排出しない再生可能エネルギーとして水素エネルギーの普及が期待されています。国内でも内閣府の戦略的イノベーション創造プログラムに採択 (注1) されるなど、水素社会の実現を目指す動きが強まっています。

私達にとって身近な水素利用技術の一つに燃料電池自動車がありますが、街なかで見かける機会はそれほど多くはありません。水素エネルギーはどこで使われているのでしょうか。また、普及の鍵はどこにあるのでしょうか。

水素社会の実現のためには、水素の「製造」「輸送」「貯蔵」「利用」それぞれについて技術の確立が必要となります。ナインシグマでは2018年以降、水素技術に関連した技術探索として、以下のテーマで募集を行いました。

 

ナインシグマで実施した技術募集事例の紹介

①「燃料電池マイクログリッド向け水素貯蔵技術」

グローバルな大手メーカーが、燃料電池マイクログリッドへ低コストで水素供給可能な革新的技術の共同開発パートナーを求めている。とくに、水素貯蔵・供給時に二酸化炭素を発生させないアプローチに期待している。

※募集要項の詳細:https://www.ninesigma.com/s/RFP_2019_0019

 

 

②「低圧で使用可能な産業車両向け水素貯蔵システム」

 

株式会社豊田自動織機が、低圧で使用可能な産業車両向け水素貯蔵システムの開発パートナーを求めている。とくに1MPa未満で安定的かつ高速に水素吸蔵放出を可能とするシステムに期待している。

※募集要項の詳細:https://www.ninesigma.com/s/RFP_2018_3922

 

 

③「車体床下スペースに設置可能な水素圧縮容器」

 

BMW社が、従来は巨大な円筒状容器に充填する高圧水素を、車体床下スペースに設置可能な水素圧縮容器を求めている。

※募集要項の詳細:https://www.ninesigma.com/s/NG_2018_0131_N_031

 

 

④「高出力密度SOFCの開発パートナー」

大手メーカーが、高出力密度の固体酸化物形燃料電池セル(SOFC)およびその積層体の開発パートナーを求めている。具体的には、(a)メタルサポートセルの大型化技術、(b)焼結多孔金属端のガスリーク防止技術、(c)セル間抵抗低減技術、(d)セルフレームアセンブリおよび積層体の出力密度向上設計に期待している。

※募集要項の詳細:https://www.ninesigma.com/s/RFP_2018_3945

 

各テーマを追っていくと、「製造」「輸送」「貯蔵」「利用」それぞれ個別の技術課題解決に加え、電気自動車と比べた際の設備・ランニングコストの低減、利便性向上が、水素社会実現への重要な課題となっていることが分かります。

例えば「低圧で使用可能な産業車両向け水素貯蔵システム」では1Mpa以下での水素貯蔵・供給システムの実現を目指していますが、これは日本国内の高圧ガス保安法・消防法によって定められる水素供給インフラ整備のコスト低減および利便性向上を同時に狙ったものです。また、「燃料電池マイクログリッド向け水素貯蔵技術」では、水素インフラの普及にともなうコスト低減を上回るような、革新的な水素製造低コスト化技術を求めています。

政府や研究機関の試算 (注2) によると、現在約100円/Nm3 の水素供給コストを、太陽光発電との組み合わせや、製造プロセス最適化により2030年~2050年にコストを5分の1程度まで下げることが可能となり、他エネルギーと比べても競争力を持つとのことです。

直近では燃料電池車の開発凍結を宣言する完成車メーカーが出るなど、水素社会の実現には不透明な部分が多いのも事実です。また、電気自動車の方が先に普及し始め、モビリティという観点からは直接競争を避ける傾向がより強くなっています。しかしながら、欧州を中心とした脱炭素化・クリーンエネルギー政策が強力に推進されていることから、キープレーヤー達がビジネスとして成立しうる形を模索しながら実用化に向けた開発を進めています。

水素社会が実現したといえる日が来るまでにはまだ時間がかかるかと思われますが、当初想定された全体像から形を変えながら、利便性、コスト競争力などの要件が整ったタイミングで新たな水素エネルギーブームが訪れるものと思われます。

 

 *(注1) 戦略的イノベーション創造プログラム「エネルギーキャリア」 https://www.jst.go.jp/sip/k04.html
 *(注2)例えばNEDOの試算 https://www.nedo.go.jp/content/100888555.pdf

 

 山 本 洋
ナインシグマ・アジアパシフィック株式会社
名古屋大学大学院  工学研究科電子情報システム専攻修了  博士(工学)
株式会社東芝 ストレージ&デバイスソリューションを経てナインシグマ入社