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特徴的なオープンイノベーション事例④:製薬業界におけるオープンイノベーションの動向

製薬業界ではこの10〜20年で同業界を取り巻く環境が大きく変化し、新薬開発が難しくなっています。
*関連コラム:https://ninesigma.co.jp/news/column-190508-4-1/
このような背景から、従来のビジネスモデルからの脱却をはかり、上市医薬品数を上げるべくオープンイノベーションの実施が活発化しています。というのも、医薬品は上市までに長期間の研究開発が必要となる、あるいは市場に出る確率が極めて低い(0.004%:2018年時  *厚生労働省ホームページ「臨床研究に関する現状と 最近の動向について」より)という特徴を有しており、一定間隔で新薬を上市し続けるには多数の創薬シーズを並行して検討し、検討母数を上げることによる上市数の確保が必要となるためです。このため、少なくとも創薬シーズ数増加の観点で、オープンイノベーションによる外部技術の取り込みは不可欠となっています。
積極的にオープンイノベーションを行っている製薬企業では、自社内にパートナー探索を積極的に推進するオープンイノベーション専任組織を持つだけでなく、ナインシグマのような第三者機関を活用することで、他社より早く・かつ網羅的にパートナー候補となる組織を見出そうとしています。

国内外の製薬企業での募集案件には違いがある

このような背景から、ここ数年で製薬企業が弊社を介して外部パートナーを探す案件が増加しています。
弊社を介したヘルスケア企業におけるオープンイノベーションの目的は、技術探索・プロセス探索・付加価値創造・ビジネスモデルの創造という四カテゴリーに分類できる傾向にあります。
*関連コラム:https://ninesigma.co.jp/news/column-190508-6-2/

今回、この傾向をより詳細に分析したところ、国内外の製薬企業でのオープンイノベーションの動向に違いがあることが分かりましたのでご紹介いたします。

国内外製薬企業を依頼主とした弊社募集案件内訳

表1をご覧ください。こちらは、ナインシグマが依頼を受けた製薬系公募の内容を分類したものですが、国内と海外(主に欧米)で依頼内容の傾向に差が見られました。

国内製薬企業からの依頼は、新規創薬シーズ(新規標的分子、並びに新薬候補化合物)や製剤技術/DDS(Drug Delivery System)という、”製薬会社の研究・開発領域”のコア技術に関する募集案件が大半を占めています。

一方海外製薬企業では、新規創薬シーズや製剤技術等の公募も実施していますが、それに加えて、製造技術や臨床試験など新薬開発の後半に該当する技術募集も同様に多数実施していることが分かります。中でも特徴的なのは、臨床試験やデジタル技術という「ビジネスモデルの創造」にフォーカスした公募が積極的に実施されている点です。製薬業界を含めたヘルスケア業界では、従来の製薬企業や医療機器企業に加えて、IoTやAI(人工知能)などの技術の発展によりApple社など異業種からの参入が激化しています。従来の製薬企業の主戦場である医薬品事業では、(特に日本では)医者が患者に薬を処方する構造となっていることから、製薬企業は患者との直接的な接点を持つことはありません。一方Apple社などのIT/電機メーカーは顧客との直接の接点を有します。また世界的な高齢化や医薬品の高機能化に伴う医療費の高騰が問題視される中、がデジタル技術等を用いた「治療から予防」への注力に舵を切る可能性もあり、従来的な製薬・ヘルスケア業界の先行きは不明瞭になりつつあります。このような背景から、製薬企業は従来のビジネスモデルから脱却し、新しく患者まで巻き込むようなエコシステム構築の準備として、現在のビジネスモデルの高効率化(製造プロセス・臨床プロセスの改善)と新しいビジネスモデル創造パートナー探索(デジタル技術等)を実施していると推測されます。

 

ナインシグマで実施したグラクソ・スミスクライン株式会社(GSK社)技術募集事例の紹介

最後に、GSK社の例を紹介します。同社はナインシグマプラットフォーム上にて、多数のデジタル技術に関する公募を実施しています。

同社は、臨床研究プロセスをサポートすることで新薬を効率的に開発し、患者をサポートするための方法を常に探求しています。例えばウェアラブルのセンサーからスマートフォンアプリまで生活の中に溶け込むテクノロジーの使用に期待しており、特に、臨床試験のパラダイムを前進させるための新しいアイディアを持つパートナーを求めています。

①臨床研究を革新するデジタル技術

グラクソ・スミスクライン社が、臨床研究プロセスを支援する新しい方法やアイデアを求めている。より効率的な新薬開発やその効果的な実証、そして可能な限りの患者の支援を目的としている。依頼主は特に、ウェアラブルセンサーからスマートフォンアプリに至るまで、デジタルテクノロジーを活用した新たなソリューションに期待を寄せている。

Digital Innovation in Clinical Research

②臨床試験におけるペイシェント・エクスペリエンス(患者体験)の向上

グラクソ・スミスクライン社が、臨床試験に参加する患者の体験を向上させる方法を求めている。依頼主は有力な方法を通じて、患者とのパートナーシップをこれまで以上に充実したものにすることを目指している。

Enhancing patience experience in clinical trials

③セルフケアの未来を変える

セルフケアの未来を変える

GlaxoSmithKline(GSK)社が、消費者が自分でできることを増やし、より快適に、より長く生きることを実現できるよう「セルフケアの未来を変える」という使命を負っている。そこで3つのテーマで募集を行った。
【テーマ 1】デジタルヘルス技術
【テーマ 2】在宅診断
【テーマ 3】製剤技術
※募集要項の詳細:https://www.ninesigma.com/s/IC_2018_0172

 

④禁煙やタバコ削減の未来を変革

禁煙やタバコ削減の未来を変革

 

GSK Consumer Healthcare社が、現状の禁煙やタバコ削減のアプローチを促進、または再検討するための新たな技術を求めた。

※募集要項の詳細:https://www.ninesigma.com/s/RFP_2019_0027

 

 

不確実性が増す中、本業で余裕があるのであれば、新規ビジネス創出のための種まき作業も必須です。リソース的にも専門分野的にも全てを自社で実施することが難しくなっている中、オープンイノベーションは必要不可欠なツールです。本業に余裕が出るような業務・プロセス効率化、あるいは新規ビジネス創出のためのパートナー探索、大きいものから小さいものまでオープンイノベーションの活用の場は無限に存在します。
是非活用をご検討されてみてはいかがでしょうか。

 

 

山 﨑 寛 史
ナインシグマ・アジアパシフィック株式会社
静岡県立大学/薬学研究院 修了、日本化薬/ 医薬品事業部を経てナインシグマ入社。