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オープンイノベーションの新潮流
第4回「”いのち”を守る分野でのオープンイノベーション①」

“いのち”に関わる課題は、世界中で尽きることはありません。先進国においては、高齢化による「生活習慣病」、「がん」、「認知症」の増加が問題視されています。発展途上国においては、人口増加や人の流動化による「HIV」や「マラリア」の感染被害が拡大の一途を辿っています。それぞれ、深刻な社会問題と化す前に、世界規模での対処が求められています。

こうしたいのちに関わる社会課題は、どのように解決したらよいのでしょうか。オープンイノベーションの新潮流 第4回「”いのち”を守る分野でのオープンイノベーション」では、「製薬業界」、「非営利団体」、「行政」での”いのち”に関わる社会課題・オープンイノベーションへの取り組みについて4週にわたって事例を交えながら紹介します。

今週は、製薬業界でオープンイノベーションを紹介します。

 

最もオープンイノベーションが進んだのは、製薬業界

産業界で”いのち”を守るという責務を負う代表格の一つは、「製薬業界」でしょう。これまで、製薬業界は、治療法が見つかっていない疾患に対するアンメット・メディカル・ニーズを解消するために新薬の開発・販売に注力してきました。医学的な知見の蓄積や研究開発の積み重ねにより、革新的な新薬が数多く生み出され、中にはブロックバスターと呼ばれる1000億円以上を売り上げる医薬品にまで成長する薬も出てきました。このビジネスモデルにより、製薬企業は高い収益性を維持してきました。

しかしながら、この10〜20年の間で、製薬業界を取り巻く環境は大きく変化し、ブロックバスターの実現を狙った従来通りの進め方で収益を得ることが、困難となりました。

製薬業界を取り巻く環境が厳しさを増した理由は3つあります。

1つめは、従来型の医薬品として開発可能な標的が枯渇してしまい創薬開発の難易度が著しく高くなってしまったこと、安全性や副作用などの臨床試験の厳格化や被験者の確保が難しくなるなど研究費だけでなく臨床試験にかかる費用が膨らんでしまったこと、最後に、医療費抑制やジェネリック医薬品の台頭により製薬企業にブロックバスター中心のビジネスモデルからの脱却が求められるようになったことです。

医薬品の開発には、高いレベルのサイエンスが求められるため、従来からアカデミアとの共同研究が活発な業界でした。しかしながら、ビジネスモデルの変革をせまられたことで、より一層オープンイノベーションへと舵を切ることとなったのです。

活発なオープンイノベーションを可能としたのは、基礎から応用への橋渡しを担うスタートアップの台頭です。スタートアップの台頭により、製薬企業が社外に委ねられる範囲が広がりました。基礎研究はアカデミア、基礎から応用への橋渡しはスタートアップ、応用から製品化は製薬企業が担う形に役割分担が進んでいったのです。

加えて、製薬業界でも、近年急速に進展する情報通信技術(ICT)や人工知能(AI)を疾病の予防・診断・服薬率の改善等に活用しようとする動きが出てきました。この実現には、内容においても開発スピードにおいても、彼らとは根本的に異なる相手と組まずして実現は望めません。この動向もあり、製薬業界において更にオープンイノベーションが加速しました。

製薬企業がオープンイノベーションを行う上で注意すべき点は、自社の技術、販売チャネル、顧客基盤などの強みを鑑み、研究開発・事業開発に注力すべき疾患領域を慎重に見定めることです。そして、領域が決定したら、腰を据えて、徹底的に挑むべきです。社外パートナーの活用を前提としつつも、相応の市場規模、競合他社と比較した上での優位性、持続性を熟慮する必要があります。オープンイノベーションはあくまで手段です。自社の事業戦略・技術戦略に従って、重点領域に対して、計画的・定常的に打ち手の候補を補充するとよいでしょう。

次回は、製薬企業だけでは解決できないアンメット・メディカル・ニーズに対する取り組みの例として、弊社がお手伝いしました、ロックウェラー財団とビル&メリンダ・ゲイツ財団の支援に基づく「インターナショナル・エイズ・ワクチン・イニシアティブ」の例とアメリカオハイオ州による「オピオイド中毒対策のためのオープンイノベーション」の事例を2週にわたってご紹介します。