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COVID-19から生まれた事業機会と脅威―グローバル専門家コミュニティの多様な視点から ②

129名の専門家から見た今後のトレンド・機会・脅威を収集
ナインシグマは、世界中のグローバル企業の管理職層を中心とした専門家コミュニティ「OIカウンシル」を抱えております。コミュニティメンバー129名から、COVID-19によってもたらされる今後の機会や脅威について意見をヒアリングしました。
その結果、新たなトレンド、既存のトレンドを加速する影響、既存のトレンドを減速する影響が見えてきました。
前回は、調査結果のうち大きなトレンドについてのコメントを紹介しました。第2回目は、各業界への具体的な事業機会や脅威について、各業界の専門家の見解を紹介します。

今後最も広く必要となるのはデジタル技術
前回の記事で述べてきたようなトレンド変化(デジタルトランスフォーメーションや地産地消)に対応するために必要だと多くの人が考えたのは、圧倒的にデジタル技術でした。

デジタルトランスフォーメーションや地産地消にはデジタル技術が必要図. 今後の変化への適用に必要なテクノロジー

具体的なコメントを見ると、やはりリモートワークのためにツールや通信速度などの改善を求める声が多く聞かれました。これらは、共感できる方も多いと思います。

  • リモートワークツールが必要(IT系、ソフトウェア開発マネージャ)
  • リモートコミュニケーションの充実のため、通信容量の拡大や、多機能化が必要(旅行会社、VP)
  • リモートだと、ブレインストーミングや協働の生産性が低い(エレクトロニクス、R&Dディレクター)
  • 通信容量、インターネット速度の向上が必要(多数)

ナインシグマとしても、展示会などに代わるサービスを、OIカウンシルを使って提供していきたいと考えています。

こういったデジタル技術のニーズの盛り上がりは半導体業界や通信機器業界、IT業界からみれば機会と言えるでしょう。これまでも盛んであった5GやAR、VR、クラウドなどの技術への投資が、バーチャルなコミュニケーションの広がりによりさらに加速しそうです。

  • メモリやストレージの需要がより加速されるので投資は継続する(半導体、R&Dマネージャ)

モビリティ市場への脅威
一方、デジタル化がモビリティ業界(MaaS、自動車、鉄道)にとっては脅威になりそうです。

  • 当社はMaaSを提供しているが、移動需要がデジタルツールに置き換えられるため、あらゆるモビリティが使われなくなる(IT、ディレクター)
  • 移動が減るため、モビリティ市場が減る。ビジネスの効率に対しては、短期的にはデジタル化でネガティブな影響が出るが、長期的には適応する(鉄道、エンジニア系マネージャ)

フードデリバリー以外のMaaSにはネガティブな影響が出ていると言われています。その一方で、タクシー会社による買物代行や患者搬送車両(ホンダ)など新たな機会も見出されています(参考記事: https://iotnews.jp/archives/152628 )

これまでのヒト・モノの移動の少なくとも一部は不可逆的にデジタル技術に置き換えられるのは間違いないと思います。ナインシグマも、リモートワークが標準として定着しています。
そこで、なくなるニーズの代わりに生まれるニーズというものに今後注目していく必要があります。

生産活動の自動化のインセンティブの高まり
インダストリー4.0などという言葉に代表されるように、従来からの生産活動の自動化は大いに注目されてきました。パンデミックの影響で、従業員の健康管理などのコストが発生していることにより、自動化を推進してインセンティブが強まっています。自動化ニーズの高まりに関連してセンサ、ロボット、AIソリューション等のニーズが高まる可能性があります。

  • スマートグリッド、エネルギー産業のデジタル化(オートメーション、自動測定など)が加速する(エネルギー産業ディレクター)
  • 労働者を感染から守るために追加のコストが必要になっている。自動化が必要(エレクトロニクス、CTO)

一方で、ニーズが拡大した自動化に対して生じる現実的な課題などについて、ソリューションが求められることになるでしょう。

  • リモートモニタリングが必要(鉄鋼、マネージャ)
  • 工場の操業計画の自動化ツールなどが必要(食品、企画系マネージャ)
  • 会議のリモート化のためのツール導入を進めていく必要があるが、一方でプラントの無人運転は不可能に近い(化学、営業ディレクター)

危機を想定したエネルギー貯蔵の必要性―水素社会への後押し
危機など大きな変化への適応を想定すると、エネルギーシステムについても新たな視点が加わります。再生可能エネルギーについては、もともと発電と電力供給のタイミングのコントロールのための電力貯蔵が課題でしたが、危機対応においてはより長期のエネルギーの保存性が重視されることになると思われます。こういった観点では、最近欧州や日本で盛り上がりつつある水素社会の一層の加速要因になり得るのではないかと思います。

  • エネルギーについては保存の必要性が高まり、水素への投資が強化されるのでは(研究所R&Dマネージャ)
  • スマートグリッド、エネルギー産業のデジタル化(オートメーション、自動測定など)が加速する(エネルギー産業ディレクター)

今回の記事では、デジタル・モビリティ・エネルギーの視点での具体的な機会や脅威について見てきました。次の記事では、食品・ヘルスケア分野での事業機会や脅威に掘り下げたコメントを見ていき、最後に各分野で見られたトレンドを整理します。

 

 

 

佐藤 佳邦(Manager)
得意な技術領域:リチウムイオン電池、炭素材料、ナノ材料
ナインシグマにて、材料・化学分野を中心に大手メーカーのオープンイノベーション支援、
コンサルティングを提供するとともに、技術者コミュニティ・データベース設計・運営、
OIカウンシル事業の推進を担当。
2012~2016年 昭和電工でリチウムイオン電池材料の開発や技術営業、生産プロセス検証
2012年 東京大学大学院工学系研究科 修士課程修了(化学システム工学専攻)