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COVID-19から生まれた事業機会と脅威―グローバル専門家コミュニティの多様な視点から ③

129名の専門家から見た今後のトレンド・機会・脅威を収集
ナインシグマは、世界中のグローバル企業の管理職層を中心とした専門家コミュニティ「OIカウンシル」を抱えております。コミュニティメンバー129名から、COVID-19によってもたらされる今後の機会や脅威について意見をヒアリングしました。
その結果、新たなトレンド、既存のトレンドを加速する影響、既存のトレンドを減速する影響が見えてきました。
前回は、デジタル・モビリティ・自動化・エネルギー分野での動きを見ていきました。第3回目は、食品・ヘルスケアへの具体的な事業機会や脅威をご紹介し、全体を振り返って整理します。

都市型農業システムと関連するセンシング・部材の機会
食品の地産地消という観点では都市型農業、テクノロジーで競争力を持つローカルな少量生産への期待のコメントが見られました。こういった、もともと注目されていたテクノロジーが一層広がる契機になるかもしれません。

食品の生産・流通の変化に伴うパッケージへの影響
食品の生産・流通エコシステムの変化に伴い、保存に関するニーズが変化する可能性があります。リモートワークが増えると、飲食店の代わりに小売店やデリバリーのニーズが増え、食品パッケージのニーズが増えるという予想が見られました。同時に、既存トレンドであるSDGsの観点からパッケージ回収の仕組みへのニーズが指摘されました。その他に、地産地消のためパッケージレスになっていくという見方もありました。

  • Ready-to-eat, ready-to-cook食品の市場や食品の配送が増える。食品保存料や、衛生管理の重要性が増す(食品、営業ディレクター)
  • (食品のデリバリーや小口の個人購入の増加などで)パッケージの需要が増えるとともに、その回収の仕組みが求められる(パッケージ、マーケティングマネージャー)
  • 地域の生産者からのパッケージレスの流通が起こる(自営業、経営)

軽症患者の受診減少による医薬品ニーズ低減・診療のデジタル化
広く言われていますが、直近では軽症患者の受診が減るために医薬品の需要が減ると言われています。医薬品需要への中長期的な影響は不透明ですが、遠隔診療など従来の医療システムをデジタルに置き換える流れは、少なくとも一部で不可逆的だと思われます。

  • 医療では、予防から治療まで、非中央集中的なアプローチが強化されるだろう。診断AIについてはExplainableなものが必要になってくる(研究所R&Dマネージャ)
  • ワクチン開発を短縮化する技術的、法的準備が必要になる。一方、軽い症状での受診が減るので、医薬品の需要は減るだろう。遠隔診療が広まるだろう(医師)

こういった動きに関連したテクノロジー活用事例をご紹介します。

公衆衛生目的のデータ収集と殺菌ニーズ
公衆衛生目的のデータ収集

  •  グローバル健康情報管理が専門。9.11の後に防衛意識が高まったのと同じで、公衆衛生への意識は高まり、関連産業が興るだろう。匿名で個人の健康情報を収集・分析する仕組みが必要(公衆衛生関連、CEO)
  • 殺菌技術がいたるところで求められる(玩具、経営)

中国では、公衆衛生目的でデータが積極的に活用されていることは報道などでご覧になっている方は多いかと思います。中国ほどではないにせよ、個人の体調データを収集していく価値が高まると思われます。それに伴い、前述のコメントのようにプライバシーやセキュリティとの折り合いをつけた実装が求められるのではないでしょうか。

医療機器のデジタル化トレンドの加速
前回の記事で、各産業にデジタル化トレンドが広く指摘されました。医療機器の場合は、それに加えてヘルスケアデータ集積という観点でも、デジタル化へのドライビングフォースが働くと思われます。

  • 医療機器の重要性が認知され、投資が進むだろうが、現状各機器は孤立的で、接続性がない。デジタルトランスフォーメーションは不可逆的。我々は他社の機器との互換性を持たせる開発を進めている。また、種々の機器の情報を統合して、より医療者や患者の役に立つようにしたい。(医療機器、R&Dマネージャ)

元々、医療機器のデジタル化のトレンドですが、これを機に一層加速していくのではないでしょうか。

危機への耐性と感染リスク低減に関連する変化の兆し
COVID-19によって生じた問題意識としては、大きく以下の2つが挙げられます。これらによって引き起こされた変化には、既存のトレンドに沿ったものとそうでないものがあります。

  • 社会や起業の危機への耐性(レジリエンス)
  • 感染リスクの低減

図. 今回見られた変化の兆しの分類

既存のトレンドが加速される部分については、少なくとも部分的には不可逆的な変化が伴うと考えられます。パンデミックの影響に関係なく必要とされていた変化であるためです。

一方で、既存トレンドや新トレンドについては、一時的なものか、恒久的なものかは個別に検証が必要となると考えられます。その際には、以下がポイントになるのではないかと思います。

  • COVID-19だけでなく次のパンデミックへの備えとして必要か
  • SDGsに沿ったものか
  • 消費者の新しい生活様式にマッチしているか

COVID-19のパンデミックはいつか落ち着くものとしても、より深刻な脅威が将来起こる可能性が十分あるため、社会としての何かしらの備えをしていくことにはなると予想されます。

OIカウンシルは、普段技術のマーケティング目的で提供していますが、今回は皆さまのヒントになればと、社会変化を見通すヒントとなる声を集めご報告しました。
今回の記事が何かしらの参考になったかは分かりませんが、ナインシグマはOIカウンシルのメンバーとともに、皆様が未来を作っていくためのお手伝いをしていきます。

 

 

 

佐藤 佳邦(Manager)
得意な技術領域:リチウムイオン電池、炭素材料、ナノ材料
ナインシグマにて、材料・化学分野を中心に大手メーカーのオープンイノベーション支援、
コンサルティングを提供するとともに、技術者コミュニティ・データベース設計・運営、
OIカウンシル事業の推進を担当。
2012~2016年 昭和電工でリチウムイオン電池材料の開発や技術営業、生産プロセス検証
2012年 東京大学大学院工学系研究科 修士課程修了(化学システム工学専攻)

 

 

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