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自社技術から新しい事業領域の可能性を見出すには?

“自社技術のポテンシャルを感じつつ、事業を広げる際に行き詰まりを感じていないでしょうか。自社技術の価値を見出し、既存の事業領域の外へ踏み出す具体的なアプローチのご支援事例を紹介いたします。”


この記事はこんなお悩みの方におすすめです。

  • 自社技術の市場は頭打ちで今後の売上成長が期待できない
  • 自社技術を有効活用して新市場開拓による事業拡大を目指したい
  • 自社技術を他の技術と組み合わせて新しい事業領域の可能性を最大化したい

 

目次
 1.自社技術から新しい事業領域をどう見出すか?
1-1. 技術視点での新規事業検討とは
1-2. 技術を起点とする新規事業の検討手順
 2.ナインシグマならではアプローチ
  2-1. ステージ “-1” : 重要な価値の見極めと分かりやすい提示
2-2. ステージ 0 : 技術の展開先の確実な幅出し
2-3. ステージ 1 : 客観的な情報収集と蓋然性の向上
 3.具体的なご支援の事例
  3-1. Step 1(ステージ -1): 技術の棚卸しによる強み整理
3-2. Step 2(ステージ 0): 市場ニーズの幅広い探索によるニーズのある機能の特定
3-3. Step 3(ステージ 1): 客観的な情報収集と評価による有望な事業領域の絞り込み
 4.まとめ

1.自社技術から新しい事業領域をどう見出すか?

技術の進化と市場の変化が著しい現代の製造業界で今後も生き残るべく、多くの企業は既存の事業領域に固執せず、事業拡大に向けた検討に取り組んでいます。このような取り組みをアンゾフのマトリクスで整理した際、多くの企業は「既存製品×新規市場」「新規製品×既存市場」などの象限において事業拡大を目指しているのではないでしょうか。

このコラムでは「既存製品(技術)×新規市場=新規市場開発」型の事業成長に着目し、自社の持つ技術を最大限に活用し、新たな収益源を見出すためには、どのようなアプローチが有効なのか解説します。

1-1. 技術視点での新規事業検討とは

自社技術を有効活用して新しい市場に進出する試みは、今日のビジネス環境においても有効であり、例えば以下のようなメリットがあります。

  • 自社技術を起点にした強み弱みや特徴を分析し、競合との差別化や市場ニーズに合致した独自の価値提案が可能
  • 幅広い技術や研究開発の基盤があれば、既存技術の転用や新技術の応用の成功確率が上がる

一方で、デメリットや気を付けるべきポイントも以下のように挙げられます。

  • 自社技術が持つ真の提供価値を深く理解したうえで、それをどのように市場ニーズに適用できるかを見極めないといけない
  • 異なる業界や市場で実際に役立つか技術なのかどうかの評価が難しく、技術の適用可能性や有効性を過大評価することもある

うまみのある新しい市場を見つける活動は簡単ではなく、必ず成功するわけではありませんが、多くの成功事例が生まれていることも事実です。

1-2. 技術を起点とする新規事業の検討手順

自社技術を起点として、異分野も含めた事業領域の可能性を見出す際の検討手順をご紹介します。一般的な手法として、ステージゲート法があります。これは、1980年代にロバート・クーパー教授が開発した手法で、新規事業開発や新製品開発などにおいて、アイデア創出から市場投入までをマネジメントする手法です。この手法では、プロジェクトの進行をいくつかの「ステージ」に区切り、各ステージの終了時に設けられた「ゲート」を通過するための基準をクリアしているかを評価します。ゲートを設けることで、高リスクの新規事業や製品開発の際のリスクとコストを削減し、成功の見込みが高く実行可能な成果の創出を目指すものです。よって、ステージゲート法の成功の鍵は、早期に可能な限り多くの試みを行い、不確実性を排除し、リスクを管理することにあります。

ステージ0 – アイデア創出:多くのアイデアを集め、初期のフィルタリングを行います。実行可能なアイデアを選択し、次の段階へ進めます。

ステージ1 – 初期調査:選ばれたアイデアを更に発展させ、市場におけるニーズとの整合性を考慮し、ビジネスモデルを構築します。市場調査や顧客からのフィードバックを通じてアイデアの実現可能性を評価します。この段階で技術的な課題も検討されます。

ステージ2 – ビジネスプラン作成:全体のビジネス戦略を定め、リソース計画やマーケティング戦略を策定します。

ステージ3 – 開発:製品開発を行い、プロトタイプを作成します。このステージで、製品の設計と試験が行われます。

ステージ4 – テスト:限定的な市場で製品をテストし、製品やビジネスモデルの修正が必要かを検討します。

ステージ5 – 市場投入:採算性を確保したのち、製品を販売し、事業化を行います。

2.ナインシグマならではのアプローチ

ナインシグマは上図のステージゲートでいうステージ0と1のアーリーステージのご支援を得意としていますが、さらにステージ0以前の検討(ここではステージ”-1”とします)を設けたご支援を行っています。弊社がどのようにして技術起点で新しい事業領域を見つけ出しているのか、弊社ならではの特徴も交えてご紹介します。

2- 1. ステージ”-1”: 重要な価値の見極めと分かりやすい提示

弊社では、ステージ0のアイデア創出をより幅広く行うため、まず自社技術の棚卸しをするところから検討を開始します。「技術が提供できる真の価値」を見出したうえで、その価値を分かりやすく「翻訳」することがアイデア創出において重要であると考えています。技術の重要な特長を明確にし、提供できる機能やユーザーにとっての価値を理解しやすい言葉で言い換えます。この「翻訳」により、技術の持つポテンシャルを広く捉えることができ、ステージ0のアイデア創出において、異分野・他分野の方からも用途アイデアが得られやすくなります。

ここで技術の価値を整理した事例を1つ紹介します。あるクライアント様は、すでに複数の事業領域をお持ちであり、かつ全社的な自社コア技術も複数お持ちでした。しかし、社会課題やメガトレンドという観点から、自社技術の強みを生かせる新たな事業領域を特定したいというご相談がありました。各事業領域においてコア技術の強みは深く理解されているものの、自社の多岐に亘る全社的な技術の可能性を既存領域以外に見出すことが難しいという課題をお持ちでした。

そこで弊社との議論の中で、コア技術⇒コア技術のグループ⇒提供価値という整理を行うことで、個々のコア技術で見た際の細かいスペックや機能はそれぞれ違っていても、より大きな括りでコア技術をグルーピングしていくと、ユーザーに提供できる価値機能を突き詰めた形で見出すことができました。事前の技術の価値の整理を丁寧に実施したことで、次のステップで社会課題やメガトレンドという広い観点から様々な業界のニーズを見つけることができました。弊社には、大手メーカーで研究開発の経験を持つ理系のコンサルタントが多く在籍しており、このような自社技術の価値を整理するところから伴走してご支援いたします。

2-2. ステージ0 : 技術の展開先の確実な幅出し

市場ニーズの探索にあたり、自社技術の展開先や用途アイデアを聞き出すことは非常に重要ですが、知らない業界や分野まで自社で幅広く実施するのは難しいものです。弊社では、独自のグローバルな業界エキスパートプラットフォーム「OIカウンシル」を活用したアンケート調査を行い、市場からの生の声を1次情報として取得しています。このプラットフォームを通じて、普段接点のない異分野や異業界のエキスパートからの意見を得ることが可能です。さらに、ステージ-1で実施した技術の「翻訳」がここで活きてきます。自社技術を専門用語ばかりやスペックのみで伝えても、いかにエキスパートといえど理解をすることは難しいものです。技術を提供価値に翻訳して見せてやることで、エキスパート達自身の専門分野に基づいた用途アイデアの着想を促し、自社内の議論だけでは到達できないような新しい気付きを得ることができます。このような幅出しを行うことで市場ニーズの全体感が見えてきます。その上で最もニーズありそうな領域を特定していきます。

2-3. ステージ1: 客観的な情報収集と蓋然性の向上

ステージ0の幅出しから捉えた有望と考えられる事業領域についてさらに検討を進めます。OIカウンシルで得られた情報に加えて、ディスクトップ調査の情報を組み合わせることで、技術の異分野・異業界への応用可能性や市場性をより蓋然性を持って検討します。各分野や各業界のエキスパートの生の声を起点に、得られた情報の確度を客観的に確かめていきます。

3.具体的なご支援の事例

最後に、自社技術から新しい事業領域の可能性を見出した実際のご支援事例をご紹介します。

  • クライアント様 : 大手電子部材メーカー/CTO&技術企画室
  • ご相談内容 :
    自社のコア技術を軸に短期的(1-2年)及び中長期的(3-5年以上)を見据えた新規事業を創出すべく、潜在的ニーズに基づいた広範な事業領域の把握と有望領域の検討を行いたい
  • 課題 :
    新しい事業領域を見つけたいが、自社の既存事業領域外についてはあまり知見がないため、他の領域でのニーズや、それらの領域において自社コア技術がどのように活用できるかイメージできない
  • ご支援のポイント :
    業界エキスパートの知見・潜在顧客のニーズから、クライアントのコア技術“群”の強みを生かした新たな事業領域候補を特定

本プロジェクトでは、技術群の強みの整理から注力すべき有望領域を見出すまでを、以下の3ステップで検討を行いました。上記のステージゲートに沿った形で書くと以下のような部分の検討を行ったイメージになります。

3-1. Step1(ステージ-1) : 技術の棚卸しによる強みの整理

自社技術として特に複数のコア技術を持っている場合、競争力があると考えるコア技術を中心に市場を考えてしまい、なかなか既存の事業領域の外を積極的に見ることが難しいものです。このような場合、有望な新規事業の可能性を最大限広げて考えるため、複数のコア技術をまとめた技術“群”を検討の単位とし、技術群としての強みを抽出することで本質的な強みを見出すことができるのではないかと考えています。例えば、センシング方式などといった具体的な仕様が異なる様々なセンサーを個々のセンサーの単位で考えると、どうしても既存事業の外が見えにくくなってしまいます。このプロジェクトでは、個々のセンサーができることとその価値をまとめていき、技術“群”が持つ強みとして大きく捉えることで、“XXができるセンサー”とユーザーに提供できる真の機能価値を見出しました。

3-2. Step2(ステージ0) : 市場ニーズの幅広い探索によるニーズのある機能の特定

Step1で強みの整理を行った技術群について、OIカウンシル(リンク)を活用してグローバルな各種業界のエキスパートへヒアリングを行い、幅広いニーズの抽出を行いました。現行技術における課題や新たな用途提案における技術要件などのアンケートを実施し、市場から生の声からXXセンサーが持つどの価値機能が市場のニーズを満たしうるのかを分析しました。OIカウンシルでの結果を整理すると、機能が提供できる価値がどの分野のどんな用途で活かせるのかが見えてきます。すでに事業をされている既存分野では活かせていなかった機能が、これまでよく検討していなかった分野でニーズが見つかったり、あるいは、ニーズがあると考えていた他分野の用途ではそれほど課題が上がってこなかったりなど、OIカウンシルのアンケートから分かることは多くあります。このような分析や議論を重ねることで、XXセンサーのニーズの全体感を捉えつつ、深堀りの検討を進める分野や用途を絞り込んでいきました(図赤枠部分)。

3-3. Step3(ステージ1) : 客観的な情報収集と評価による有望な事業領域の絞り込み

続いて、Step2で捉えたニーズがありそうな機能や業界、その用途に対して、実現へ向けた際の技術的な実現の可能性と市場規模や市場成長率といった市場性をそれぞれ調査しました。

想定する用途が、保有する技術だけで実現できるのか、あるいは他社の技術を取り込んで実現できるのか、という自社技術とどの程度親和性があるのかをクライアント様と議論して検討していきました。今回のプロジェクトでは、自社技術を広く技術群として捉え、他社技術の導入も視野に入れていたため、情報としてやや粗く収集されていましたが、議論に加えてディスクトップ調査や弊社の知見も入れることで“技術実現性”や“市場性“を相対的に見た定性的な評価(middleやhighなどの指標)を行い、最終的に有望と考えられる事業領域を特定することができました。

プロジェクト終了後はクライアント様にて継続して検討を進めていただいています。本プロジェクトでは、自社技術を広く捉えた技術群を起点にし、提供価値が生かせる業界や分野の全体感を見ながら、議論やOIカウンシルでの客観的な意見、調査を総合的に組み合わせて、可能性のある事業領域をうまく見出せた事例だと考えています。

4.まとめ

自社技術を活用した新市場開拓は、そのポテンシャルを最大限に引き出し、異分野や異業界への応用までを模索することで、未来の収益源を確保するための難しいチャレンジになります。本コラムでは、ステージゲートのアーリーステージに絞った取り組みをご紹介しましたが、プロジェクトの初期段階から広く客観的な目を入れた検討により成功の確度を上げられると考えています。このような挑戦には、専門知識と豊富な経験を持つパートナーとの協力が重要となります。我々ナインシグマはそのような挑戦をクライアント様と同じ情熱を持って支援させていただきますので、まずはご相談からでもお声掛けいただければと思います。

詳細についてのお問い合わせはこちらから: contact_ap@ninesigma.com

緒方 清仁

事業部 本部長

・最終学歴
筑波大学大学院 人間総合科学研究科 フロンティア医科学専攻
・前職
食品メーカーの基礎研究部門で5年間、腸内細菌の解析手法の研究開発、ならびに開発手法を用いた国内外の研究機関との共同研究に従事していました。