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オープンイノベーションの目的・戦略の重要性~ISOの見地から~

【イノベーション創出に関する国際規格ISO56000シリーズ】
イノベーション・マネジメントシステムに関する国際規格(ISO56002)が2019年7月に発行されました。これは「既存組織からはイノベーションは生まれにくい」という課題に対し、2013年にISOが委員会を立ち上げ、59カ国が議論に参加し、設計されたものです。
さらに経済産業省では、このISO56002をベースにした、日本企業におけるイノベーション創出のための行動指針をまとめています。この中には指針7のようにオープンイノベーション活動そのものに言及したものもありますが、今回は以下の指針1を取り上げてみます。

行動指針1:実現したい未来価値を構想・定義し、価値創造戦略をつくり、社内外に発信する

  • 経営者は、自社のミッションを実現した時の社会像(未来価値:ビジョン)を設定し、その実現を推進する主体が具体的なアクションを取れるよう、方向性を示すことが重要。
  • そのため、経営者は、実現したい未来価値の領域や価値創造への資源配分方針、部門間や社内外連携の考え方を価値創造戦略として策定することが望ましい。

【なぜ改めてのオープンイノベーションの目的・戦略策定なのか】
一見するとこの指針1は戦略策定という当たり前のことを改めて書いているように見えますが、なぜでしょうか。これは残念ながら、日本企業では明確な目的や戦略を設定せずに、オープンイノベーションを進めているケースが多いためと考えます。当然このようなケースが具体的な成果に繋がる可能性は高くありません。結果、「オープンイノベーション活動はうまくいかない」「イノベーション創出はやはり自社には難しい」と言った声も既に聞かれ始めています。
日本では、2015年にNEDOからオープンイノベーション白書が発行されてから、「オープンイノベーション」という言葉が急速に広がりました。それに伴い様々なオープンイノベーション活動が行われてますが、目的や戦略策定が伴っていないと、一過性のブームで終わってしまうでしょう。このような状況を危惧して、上記の指針1では、その部分の重要性・必要性を改めて説いているのではないでしょうか。

【オープンイノベーション成功企業は目的や戦略をしっかり固めている】
オープンイノベーション活動が企業の枠組みとして根付き、成果に繋がっている企業では、やはりその点がしっかりされています。一例ですが、ナインシグマの過去のコラムでも取り上げたオランダのPhilips社や日本の大阪ガス社の取り組みを以下紹介します。

  • Philips社での取り組み
    コンシューマーエレクトロニクスからとしてコンシューマーヘルスへの事業転換を行うに際し、6ステップからなる新規事業の立ち上げプログラムを立案。その第一ステップが戦略構築
  • 大阪ガス社での取り組み
    「オープンイノベーションの方針・ビジョン・計画、とそれに沿った予算計画をしっかりと作り、「我が社はこういうやり方でやっていく!」といった自社独自の方針をがっちりと固める」

【具体的な目的や戦略の策定を行う前に必要なこと】
ここで難しいことは、オープンイノベーションの目的や戦略の策定はテーブル上だけの議論だけでは不十分ということです。具体的な策定に当たっては、トライアル的なオープンイノベーション活動の実践が必要不可欠なのです。どういうことでしょうか。
オープンイノベーションはあくまでイノベーション創出のための考え方・手段であり、組織のスキルや風土によって、できること・できないことが分かれてきます。その見極めのため、オープンイノベーションのトライアル的な実践を通じて、自社に合うオープンイノベーションの形を見出すことが重要となります。組織的に実践したことが無いのに、会社の成長戦略に役立つ活用方法や戦略を描いても、絵に描いた餅に過ぎなく、時間の浪費となってしまいます。
このトライアル期間としては、ナインシグマでは2年程度を推奨しております。少し長いと感じられる方もいるかもしれませんが、その期間で試行錯誤を繰り返さないと、どのように自社に役立つのか中々見えてこないものなのです。

ナインシグマではこのトライアル段階での取り組み内容に対する知見やノウハウも取り揃えておりますので、ご興味あります方は遠慮なくご相談ください。しっかりとしたオープンイノベーションの目的や戦略の策定のため、一緒に伴走させてもらえればと思います。講演会・セミナーという形でも対応いたします。

 

若宮 俊太郎
東京工業大学大学院 化学工学専攻 修了 修士
花王でプロセスエンジニアとして、製品製造プロセス開発や海外工場立ち上げに携わった後、ナインシグマに参画。
自身のバックグラウンドである化学やエンジニアリング分野のみならず、自動車、材料、機械分野なども対象にこれまで200件以上のオープンイノベーションプロジェクトを遂行するとともに、企業内におけるオープンイノベーション推進の枠組み・仕組み作り支援コンサルティングなどにも携わっている。