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特徴的なオープンイノベーション事例⑨:化学分野におけるオープンイノベーション動向

これまでのコラムでご紹介してきましたように、ナインシグマでは自動車、製薬、食品、美容(化粧品)等々の様々な業界のオープンイノベーションを技術的な観点からの調査・公募を通じて支援しています。今回は、化学・材料業界におけるオープンイノベーションの動向をご紹介します。

 

BtoBかつ製品として直接目にする機会が少ないため、化学メーカーに対する一般的な認知は低い傾向にありますが、日本の化学・材料メーカーはシェアの高い製品を多数有しており堅調な企業が多いことが特徴と言えます。例えば、半導体製造の前工程用材料においては、日本企業のシェアは50%に達するとの試算もあります。この数字からも日本の化学・材料メーカーの強さが理解いただけるかと思います。

この強さは、材料系の研究開発がノウハウ蓄積型であること、また特に電子材料分野の製品では顧客の細かい要望に応える擦り合わせ対応力が採用時の重要な判断基準の一つになっておりその対応に日本企業が長けていること等の特徴に由来するのではないかと考えられます。一方、ノウハウ蓄積型(化学原料を買ってきて、合成、組成開発、評価までを自社で実施できる)であるため特に研究開発段階におけるオープンイノベーションには、自社の技術を外部に売り込む(シーズアウト)型に期待するところが多くなりがちな傾向にあります。

 

とはいえ、今ある技術の事業化(導出)だけでなく新しい技術を生み出していくことも当然メーカーの研究・開発部門として求められる機能です。その際、新製品顧客ニーズの高度化・多様化・求められる技術改善速度の加速などにより、やはり自社内だけで全ての研究・開発を完結させることが時間的・マンパワー的観点から難しい等の理由で、技術・開発パートナー探索の相談も一定数あります。

今回は、その化学・材料分野における技術・開発パートナー探索に関連したオープンイノベーションの動向・特徴をご紹介したいと思います。

 

化学・材料分野における技術探索内容としては、大きく「材料探索」及び「加工・製造」が8割近くを占め、その他は「改良」と「分析・品質評価」に分類できます。

  • 「材料探索」:社内で検討を行うことが難しい、または行ってこなかった新しい材料系の技術探索や技術開発。新規材料開発が主な対象。
  • 「改良」:主に社内で研究開発を行ってきた材料系について、物性などの特性向上や新たな特性を付与する技術探索や技術開発。
  • 「加工・製造」:材料を用いて混合を行う開発やフィルム成膜などを行う加工プロセスに関わる技術探索や技術開発。また、材料の量産や効率的・低コスト化に関わる製造技術。
  • 「分析・品質評価」:材料の物性評価及び品質評価に関わる技術探索や技術開発。

直近(2018年~2019年6月まで)実施した化学・材料分野の技術・パートナー探索では、下記グラフに示したように「材料探索」及び「加工・製造」が77%、16%が「改良」と「分析・品質評価」、残り6%が「その他」に分類される内容となりました。

 

「材料探索」及び「加工・製造」が8割という傾向は、化学・材料メーカーが自社にない新規材料の探索や材料の性能向上のみならず、新規アプリケーションに繋がる加工プロセスに外部技術を求めるオープンイノベーション戦略を合わせていることの表れと考えられます。

一方、自社内で検討が行いやすい既存材料の「改良」、または開発には必須であり既にある程度の評価設備が整っている「分析・品質管理」は2015年~2017年の3年間では20%程度あったものが、15%まで減少しています。特に分析技術は、分析専門の社内部署や外部組織に依頼するケースも多い為、自社内・自部門内で外部技術を取り込んだ新しい技術開発にまで繋がらないのではないかと考えられます。

また、「その他」としてシーズアウト型のテーマ創造や新規アプリーケーション・サービスに関するアイデア探索も見られました。B to B事業が多くを占める材料・化学業界では、技術のサービス事業への転換は取り組みに時間がかかるテーマかもしれません。しかし、世界の大手各社がAIやビッグデータを活用した革新的な材料創出(マテリアルズ・インフォマティクス)の取り組みを行っている中、日本メーカーも多様な顧客ニーズに積極的に対応していく必要があります。

今後、化学・材料メーカーによる技術・パートナー探索型オープンイノベーションにおいても、従来型の「材料探索」「加工・製造」「改良」「分析・品質評価」に分類されないオープンイノベーションの増加が予測されます。化学・材料に留まらない、多分野のオープンイノベーションを支援してきた実績があるナインシグマだからこそお手伝いできることもあるかと思いますので、是非お気軽にご相談いただけましたら幸いです。

 

最後に2018年~2019年に実施しました技術・パートナー探索型オープンイノベーションの事例をいくつか紹介いたします。

①水素の透過を抑制するガスバリア材料「材料探索」

売上兆円規模の大手メーカーが、金属製タンクに替わる水素貯蔵技術を実現すべく、水素の透過を抑制するガスバリア材料技術を求めている。異分野にて研究開発、実用化されている技術の応用提案も含め広く歓迎している。

※募集要項の詳細

 

 

②福島第一原子力発電所の汚染水から放射性物質を吸着・除去する材料「材料探索」

東京電力ホールディングスが、福島第一原子力発電所の汚染水処理設備で用いる、放射性物質を吸着・除去する材料を求めている。具体的にはセシウム137とストロンチウム90を同時吸着、または、ストロンチウム90のみを選択的に吸着可能な材料に期待している。

※募集要項の詳細

 

③柔軟性、復元性、耐熱性に優れたフィルムの開発パートナー「加工・製造

大手材料メーカーが、高温下での柔軟性・復元性および耐熱性に優れたフィルム材の開発パートナーを求めている。従来技術では柔軟性・復元性と耐熱性を両立することが難しいため、新規ポリマー材料、複合材、積層フィルムの提案や、優れた成形・加工技術による性能改善に期待している。

※募集要項の詳細

 

 

 

④270ºC以上で使用可能な、プラスチック固化/結晶化を促進する添加剤「改良」

売上高数千億円規模の大手部材メーカーが、270ºC以上の耐熱性を有し、プラスチックの固化/結晶化を促進する添加剤・結晶核剤を求めている。依頼主はこの添加剤をポリアミド系のガラス繊維強化プラスチックの成形後の冷却プロセスに用いることを想定しているが、現時点では当該プラスチックへの適用実績は問わない。

※募集要項の詳細

 

(※こちらの公募は終了しています。タイムリーな公募情報の取得にはニュースレターへの登録が便利です)

 

次回は番外編として、化学・材料の新しい研究開発分野として注目されるマテリアルズ・インフォマティクスに関して紹介いたします。

 

 

齊藤 隆一
ナインシグマ・アジアパシフィック株式会社
東京大学/工学系研究科 修了、JSR株式会社・株式会社東芝を経て、ナインシグマ入社

 

 

 

 

 

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