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オープンイノベーションの新潮流 第1回「『オープン・イノベーションの教科書』のその先に」

ナインシグマ・グループ
CEO 諏訪 暁彦

 

メディアでは毎日のようにオープンイノベーションが語られ、フォーラムやピッチと名付けられたあらゆるイベントも、頻繁に日本中で開催されるようになりました。

言葉がこれほど浸透してきても、実は2015年にダイヤモンド社から出版していただいた『オープンイノベーションの教科書』が、現在も5刷を超えて販売部数を伸ばしているということですから、まだまだその基本を知りたいと望まれている方も多いのではないでしょうか。

私たちナインシグマも特に最初の10年間は、技術ギャップを埋めるためのオープンイノベーションのご支援を、技術仲介という形で取り組んできましたが、近年では新規事業モデルを創造するためのオープンイノベーション支援にも注力しているのです。実は、これは弊社だけの傾向ではありません。

ナインシグマにはカスタマー・アドバイザリーボードという組織があり、日本を代表するような大手メーカーの役員の方々10名にオープンイノベーションの将来についても議論していただいているのですが、その中でも従来型に加え、新しい事業モデルのアイディアを取り込むための取り組みも増えているという実例がいくつもあげられていました。

私たちのグローバルネットワークには、このような新しい形の事例が複数あります。前書籍のいわば基礎編に加え、この度は応用編として、新しいさまざまな形態のオープンイノベーション事例を皆様にご紹介してゆきたいと考えています。

 

オープンイノベーションはバズワードなのか?

オープンイノベーションは、ナレッジマネジメントのような、一過性のバズワードという人もいますが、私はそうは思いません。

世の中が複雑になりつつあり、1つの製品やサービスに係る技術も多様化しています。たとえば自動車を開発するためには、これまでなら機械工学がメインだったものが、バッテリーに不可欠な化学や、ソフトウェアの開発力の重要性が増しています。より多くの技術が必要にたっていますが、結果的にできるものは同じような車なのです。そして技術が複雑になっても、開発期間が長くなるわけではなく、逆に短くなっています。もう、どんな優秀な会社であっても、自前で全ての技術を1から揃えようとすると、環境の変化に追いつけない時代になっているのは明らかです。

このようにスピードと要求が高まる中、オープンイノベーションはニーズの必然性から生まれ、今や不可欠なビジネス上の手法であり、そのうえ多様化もさらにすすんでいます。

 

オープンイノベーションの活用方法も、変化し進化している。

従来型のオープンイノベーションの活用方法では、他社との技術的な優位性を築くことが目的にされていました。つまり開発すべき目標、たとえば、「自動運転の安全性向上のために、50m先の路面の状況を99%以上の精度でリアルタイムに検出する」という目標と現状の技術力とのギャップを把握し、そのギャップを外部の組織が持つ「25m先の路面を95%の精度で検出できる技術」を活用することである程度縮めて、残りを自分たちで開発するということが行われてきたのです。
これは開発のスピードを早めると同時に、さまざまなリスクを小さくします。そのようなオープンイノベーションの形態は、技術導入型、もしくは研究開発加速型オープンイノベーションと呼ばれています。

最近ではそれに加えて、前述のような、優れたテーマや新規事業のアイディアを取り込むためにオープンイノベーションを活用される企業や団体が増えてきています。

たとえば自動車業界を見ると、Uberやカーシェアリングのようなサービスが登場して、自動車そのものが売れづらくなっています。その理由は明らかです。ユーザーは車を求めていたのではなく、移動する手段を求めていたのです。車というハードを売るビジネスモデルから、移動サービスを売るという新しい方向に転換しなければなりません。

こうした大きなビジネスモデルの転換が人工知能やIoTなどの普及で増えてきています。単に世の中で必要とされる技術が高度化しているだけでなく、取りうるビジネスモデルの選択肢が広くなっていて、どの企業も従来の『モノ売り』からの大きな進化を迫られているわけです。

世界中で起きている様々なビジネスモデルの進化に対し、逆に、歴史のある多くの企業側はこれまでの成功体験があるため、既存の事業にないアイディアを考える事を得意としていません。

これまで、モノを作って売る、という業務にばかり携わってきたので、シェアリングエコノミーが来るといわれても、「移動サービス」を売る、という発想にはたどり着きません。また、創るべきは、モノの企画ではなく、Uberのように新しいお金の流れや利用者のフィードバックから新しい価値を生み出すアイディアであり、これまで社内の誰もが実践・成功させたことの無い活動になります。

だからこそ、自社よりはるかに小規模でも、利用者のニーズをいち早く捉え、実践して成功させたことのあるスタートアップ企業が持つテーマや新規事業のアイディアを取り込む,
という目的でのオープンイノベーションの活用も盛んになっているのです。

現在、オープンイノベーションで新規テーマ創出を目指す場合は、アイディアを実践するスタートアップと提携したり、イノベーションコンテストを実施して 広くアイディアを集める手法が良く取られています。
オープンイノベーションはうまく活用すれば、技術探索のみならず、アイディアやビジネスモデルを外に求めるツールとしても真価を発揮します。その好例が、昨年弊社がコンテスト形式でお手伝いをした、海洋プラスチック汚染解決のためのコンテストでした。英国のエレンマッカーサー財団が主催し、今年のダボス会議で受賞者が発表されたのですが、BBC をはじめ世界中のメディアで取り上げられるほど、話題になっていました。

現在残されている様々な社会課題(SDGs)は、一社や一組織、一国では課題解決が困難であるからこそ、残されているのですから。オープンイノベーションをSDGs解決のツールとすることは理にかなったことでもあると言えるでしょう。

次回は、エレンマッカーサー財団が主催したコンテストに関してもう少し触れてみたいと思います。

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