東京電力ホールディングスは年間1000基程度の送電鉄塔の塗装メンテナンスを続けていく使命を背負っている。
人手に頼る形以外の方法がないため、今日までは、ぼう大な工数と費用をかけてメンテナンスが行われてきた。
一方、少子高齢化によって、もともと数に限りのある高所作業者の人口も減っていくため、鉄塔塗装メンテナンスの劇的な省力化(完全自動化、あるいは、半自動化)は必然的な将来課題である。
送電鉄塔への適用経験を求めると、該当組織は希少である。
そのため、橋梁などの社会インフラへ適用すべく、検査・メンテナンスロボットの開発に挑むベンチャー企業や大学等に幅広く問いかけた。
遠大なテーマであるため、依頼企業の本気度を伝えるべく、社名を開示し、共同開発に意欲を有するパートナーを探索した。
鉄塔に自ら登り塗装メンテナンスを行うロボットの開発を提案したオーストラリアのシドニー工科大学(University of Technology Sydney, Center for Autonomous Systems)のLiu教授との共同研究、ならびに、人手で鉄塔の各所に持ち上げた後にメンテナンスを実施するロボットの開発を提案した立命館大学 生物知能機械学研究室の馬教授との共同研究に進んだ。
シドニー工科大学はシドニーハーバーブリッジの塗装メンテナンスロボットの開発・事業化実績があり、一方で立命館大学はへび型ロボットや象の鼻型ロボットなどの開発実績があった。
ナインシグマの技術募集を通し、東京電力は海外の英知と国内の英知の二本柱で遠大な課題への挑戦を始めた。