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オープンイノベーションの新潮流
第3回「日本の社会課題にも、オープンイノベーションを活用する ①」

ナインシグマ・グループ
顧問 渥美 栄司

ナインシグマのグローバルネットワークの事例からオープンイノベーションの応用編を紹介する「オープンイノベーションの新潮流」。第3回は、日本国内における事例を3週にわたって紹介します。

 

たとえば危険な作業現場。課題解決の一助として。

世の中には、解決しなければならない社会問題が数多と存在します。第2回の事例で挙がった「海洋プラスチック」は「環境問題」の一つですが、その他にも「教育」、「人権」、「労働」など、課題のジャンルは多岐にわたります。こうした社会問題は必ず解決しなければなりませんが、繁雑な理由から解決が進まないケースは珍しくありません。

 

連載第2回でもご覧いただいた通り、単一の企業や自治体、国家では解決できない困難な問題であるからこそ現在も解決が難しいとされている『社会課題』を解決するためには、オープンイノベーションは非常に有効な手段あることは、オープンイノベーションの仕組みと、特性からも明らかです。

 

まさにその特性を生かした国内事例のケースをこの第3回ではご覧いただきたいと思います。2017年、ナインシグマは、経済産業省関東経済産業局による『土木建設現場における人手不足』という社会課題の解決支援に参画する機会を得ました。土木建設現場における社会課題を解決する「技術テーマの設計」から「コンテスト形式の技術公募」、そして「共同開発者の選定」について、一連の流れに沿ってご紹介します。

 

依然として手作業への依存度が高い土木建設現場では、「労働力不足」は逼迫した問題です。さらに「熟練工の高齢化」や「属人化された技能の継承」も、早急に解決しなければならない課題として挙げられています。

 

一方で、世界の土木建設現場では、安全性確保の観点から、一部の作業を「人」ではなく「ロボット」に代替する動きがみられます。日本の土木建設現場においても、働き方改革や労働環境の規制強化によって、作業の全自動化ないし半自動化が求められていますが、大きな進展はみられません。その理由は、ダム、橋、空港といった建造物が一品一様であり、作業を自動化する技術を開発したとしても、横展開しづらく、企業視点で見た場合投資対効果の魅力に欠けるからです。また、そもそも、どの作業を自動化するのかという「技術テーマ」を選定すること自体、困難極まりないということも作業の自動化を阻んでいます。

 

そんな建築業界の課題を背景に、今回、経済産業省関東経済局のオファーを受け、私たちはこの「技術テーマ」を設計する段階からプロジェクトに参画することとなりました。

 

オープンイノベーションというスキームに寄せられた期待。

本プロジェクトは、「社会課題の解決」というテーマだけでなく、「日本の中小企業の技術を活用する機会を創出する」というテーマも、同時に設けられていました。ナインシグマはグローバルネットワークで注目されることが多いのですが、実は全国各地の中小企業と深い有機的なネットワークでも繋がっているのです。メカトロニクス技術(機械工学と電子工学を組み合わせた技術)は、日本の中小企業が得意とする技術分野ですが、技術を活用する先がなければ、技術発展も、技術伝承も望むことはできません。日本のメカトロニクス技術の進歩を見据え、これまで表にはでてこなかった優れた技術を発掘し、社会課題の解決に生かす。これもまた、オープンイノベーションの社会的使命であります。

 

加えて今回のコンテストをプログラムするには、ナインシグマが2000年以来世界各国で様々な課題にチャレンジする技術コンテストを主催してきた知見が、必要不可欠でありました。どうすればこのようなニッチな技術課題のコンテストを成功に結び付けることが出来るのか、それにはこれまでの経験が必要だったのです。コンテストの応募者がこの課題を自分事として捉えられるようにすること、その目的を提示できなければ、コンテストを成功に導くことはできません。そうしたノウハウが求められたのです。このような具体的なコンテスト設計の秘訣に関しては、「日本の社会課題にも、オープンイノベーションを活用する③」にてお話したいと思います。