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The next move 2
オープン・イノベーションは、『価値』の再定義の時代へ。

第二回の対談では、第6回グローバルオープンイノベーションフォーラムでも基調講演をお願いいたしました、コニカミノルタ株式会社 取締役常務執行役技術担当 腰塚 國博様にお話を伺いました。より速いスピードの変革が常に求められているこの時代において、常に新たなイノベーションを創出していくための成功の鍵について、コニカミノルタ様ならではのストーリーをご覧ください。

 

諏訪今後の企業存続にはオープンイノベーションが欠かせない、との意識が世界中に浸透してきました。自前主義がまだ根強い日本のなかでも、早い時期からオープンイノベーションに取り組まれているコニカミノルタ株式会社 腰塚 國博様に、大企業でイノベーション創出のプロセスを効果的に進めていくための成功の鍵についてお伺いしたいと思います。

諏訪まず、コニカミノルタさまのオープンイノベーション導入の経緯についてお話しいただけますか︖

腰塚弊社は、長い歴史を持つ2つの会社が2003年に一緒になった会社ですが、フィルム、カメラ等の両社の創業ビジネスを2006年に失いました。そこで、それら技術を他の事業に生かさざるを得ない状況に追い込まれ、「コア戦略」を立てました。業態と提供価値は変遷していますが、基本的にコニカミノルタのコア技術は、画像に関わる材料や光学、AIを含めた画像処理であると自認しています。ところが特に最近は、技術の進歩が激しく、コア技術だけでは戦えないので、オープンイノベーションが必要だと強く感じるようになってきたのです。

諏訪いつ頃から、そのように感じられたのですか?

腰塚2008年のリーマンショックのあと2012年から2013年頃、多くの企業が基礎研究を止めざるを得なくなりました。当時コニカミノルタでは、写真、カメラ、複写機のコア技術は、自前主義でクローズ性が強かったので、オープンイノベーション型の風土に変えて行くのは非常に大変でした。日本から海外へ輸出する産業はクローズドな気質が強いと思いますし、企業間競争しながらナンバーワンを目指していくことは得意でしょうが、そのクローズドな風土のままでは、将来はないと考えています。

図1.コニカミノルタ社が直面した3つの変化の波

<図1.コニカミノルタ社が直面した3つの変化の波>

 

「KM way」で、まずはイノベーション創出のブロセスから

腰塚2010年に私がヘルスケア事業部からコーポレート技術戦略部に異動になった際に、着任と同時に、あるミッションを与えられたのです。それは、単なる新商品開発的新規事業ではなく、『新規事業と新規事業のつくり方(型)を同時につりなさい』というものでした。そこで、新規事業創出の実践の中で、コニカミノルタ流の新規事業のつくりかた「KM way」、コニカミノルタ流のデジタルイノベーションの創出プロセスを創ったのです。

 

「KM way」では、オープンイノベーション(OI)を大きく2つのタイプに分けています。差別化のためにミッシングピースを補うHow to do型の技術OIと、ビジネスモデルの獲得のWhat to do型の事業OIです。そしてどちらのタイプのOIであっても、既存の3C分析(Company, Customer, Competitor)に、Collaboratorを加えた4C分析を行います。

その後、どのようなパートナー様と協業するかをあらかじめ決め、オープン・クローズ・アーキテクチャとして設計するのです。

<図2. KM wayの設計とプロセス>

 

我々は、このようなイノベーションの起こし方についての方法論の検討をオン・ザ・ジョブでスタートしたのですが、コーポレートR&Dのテーマについて、新しい顧客価値の創出に明確につながるものだけに一新しました。その際に掲げた哲学が「バリュードリブン」です。

私たちの会社のフィロソフィー、「新しい価値の創造」に、今一度立ち返りたいと考えました。直接的には価値創出に繋がらない「基礎技術開発」ももちろん必要ですが、そうした長期の仕込みは出来るだけ、産学官連携テーマとして外部の助けを借りて展開するようにしました。

 

差別化技術をどう使い分けるか。肝は競争力。

諏訪そういった創出期に、オープンイノベーションを導入するうえで、明確な使い分けをされていると聞いていますが、具体的にどのような使い分けをされてきましたか。

腰塚新規事業のどの要素を自社で進め、どの要素を社外に頼るか、下記の図のように4象限の枠組みで考えをまとめてみると、分かり易いかも知れません。

一つが技術のオープンさ(依存性)に対する、クローズ(支配性)の軸。もう一つが、技術のインターナル(自社性)に対する、エクスターナル(他社性)の軸です。

オープンとクローズは一般に、「独占するかしないか」で言い分けられているようですが、正確に言うと「オープンイノベーションは、エクスターナル・イノベーション」だと考えています。

諏訪おっしゃるとおりですね。オープンイノベーションのオープンは、そもそもネットワークを広げるという意味でのオープンなのですから。

 

<図3 技術OIと事業OIの4象限分析>

 

腰塚また、先ほども簡単に触れましたが、我々は『オープン・クローズ・アーキテクチャ』という考え方を大事にしています。まずは差別化技術を洗い出して、Base Build Borrow Buy 等の4B4象限のすべて埋めてみることが重要だと思います。

他社の技術を使うにしても、独占するにしても。自社の技術をオープンにするにしても、クローズドで使うにしても、それをどう使い分けるか。その判断はスピード、競争力、コストの三つで決めています。なかでも決定的なのは競争力です。

諏訪技術的なオープンイノベーションと事業的なオープンイノベーションの使い分けも意識されているようですが、差別化という点では、技術的なオープンイノベーションでも事業的なオープンイノベーションでも同じですね。

 

腰塚エクスターナルから導入するものを、技術ケースと事業ケースとで切り分けています。たとえば、R&Dが必要なら、技術ではなく開発力を求めます。M&Aの場合は技術と開発力の、両方の成分を含むことも少なくありませんが、なによりもその目的の明確化にはとてもこだわっています。

諏訪なるほど。そうすると、組みたいパートナーのタイプや見つけ方が異なりますね。

腰塚そう、パートナーと何を協業するかの軸が異なってくるわけですね。

 

何をどう変えたいのか?既存事業の成功体験を捨てるところから。

諏訪新規事業に着手した当初は、御社の事業ドメインの中で対象領域を設定されたと思いますが、その後、新規事業をセグメントするうえで、どのようなドメインを想定して設定されていますか。

腰塚このドメインの設定も三つあります。技術のドメイン、市場のドメイン、機能のドメイン。この三つのドメインのナレッジを把握しておくことが重要です。

ドメイン設定は基盤なので、判断を誤ると利益率に大きく響きます。失敗すると取り返せません。新規に取り組もうとする際に、技術もチャネルも参入しやすいものに流れて、利益率の低いものに向くことが起こりがちになります。利益率の高い事業は、参入障壁が高くて当然着手しにくいですから。逆に言えば参入障壁が低いものは、往々にして利益率が低いのです。

たまたま知っていること、やりたいこと、おもしろそうなこと(だけど儲からないかもしれないもの)を選ぼうとするのです。技術者は、その容易な考えは捨てるべきだと思います。

つまり、利益率の高いレベルで自分たちの得意分野に持ちこめるか、との考え方を採ったのです。そうなると技術だけでは達成できません。事業をつくるにはドメインナレッジとチャネルが必要になります。そこで、技術、チャネル、ナレッジ、それぞれ相手先を検討して決めました。オープンイノベーションは技術だけではない、という考えはこの頃からのものです。

諏訪新規事業の選び方について、もう少しポイントを教えてくださいますか?

腰塚新規事業を単品で選んで、これでいきましょう!と提案しても決定されませんね。

全体のポートフォリオにおける位置づけや比較対象がなければ、経営陣は選べないですから。技術でも、事業でも、オルタナティブな選択があるなかで選ぶから意味を成すのです。森を示さなければ、木の良し悪しは判断できないわけです。

新規事業では、アプリケーション候補を捨てません。優先順位をつけて、「ディスカバリードリブン」の指標で優先順位を変えるだけです。真のローハンギングフルーツ、成果の確実なものを探してゆくと、最初良いと思ったアプリケーションより隣のほうが良かったというような、路線の変更は珍しくありません。

諏訪日本の大企業は、従来の発想や成功体験にとらわれて新しい発想がなかなかできません。いまだにベンチャー企業とお試しで付き合う大企業が、数多く見受けられます。そのような日本の大企業を、オープンイノベーションのマインドに移行させていくためにはなにが必要なのでしょうか。

腰塚明らかに言えることは、今まで使っていた勘やコツを一旦リセットしないといけないということです。そして、新しいことを猛烈に学ぶ必要がある。つまり、企業のなかでどういった人がそれを担うか・・ということになるでしょうね。

諏訪既存事業で頭がいっぱいな状態では、新規事業は生まれないですよね。既存事業に投入したほうがROIは、ずっと良いわけですから。

腰塚リスクを負わずに結果を得ようとする人はよくいます。数字上良い成績を出そうと思ったら、開発費を使わなければROIは上がります。弊社の気質は、積極的に投資を考えるタイプですが、どこまで新しいことに投入できるか、どこまで本気でトランスフォームを徹底できるかは、経営の堪え性と勇気が必要で、簡単なことではあませんね。

 

ビジネスモデルを導入する。オープンイノベーションの新しい潮流。

諏訪オープンイノベーションに取り組むという考えが企業内で受け入れられたなら、次に相手を見つけるのは容易なものでしょうか。

腰塚いえ、見つけるのは簡単ではないですね。一部の海外の企業にしてみればいわば朝飯前ですが、遅れている日本企業にとっては、大変難しい状況です。オープンイノベーションのニーズが世界中にあることを他の国は分かっていて、ちょっとした投資や素人的な調査による青田刈りは難しく、めぼしいものはすでに出払っている状態です。

中国はその意味において先進国であり、日本は周回遅れと言ってもいいと思います。シリコンバレーには既にめぼしいものが残っているわけでなくとも、まだお金を出そうとする日本企業がいるのには驚きです。イスラエルも、もう遅いかもしれません。いまならロシアやウクライナに眼を向けるのがよいかもしれません。コニカミノルタでも焦点はまだ欧米だけに向いてしまっているところがあるので、変えている最中です。

<図4 世界に拡がるコニカミノルタ社のOI拠点>

 

腰塚新しいビジネスの作り方が変わってきて、オープンイノベーションの目的も変わってきました。最初はビジネスをとりにゆき、次はチャネルやビジネスのケイパビリティを。さらに進んで、ビジネスモデルをとりにいくようにもなっています。これは新しい潮流ですね。

自社を技術革新したいと思った場合、本来であれば、一部署に導入してそれに倣って別部署も導入していくところですが、自社ではできないので、先進的なビジネスモデルの会社のやり方を取り入れて変えていくというやり方ですね。

 

ICTを活用した価値の再定義。「知恵比べ」の時代へ

腰塚今は、技術がすごく進歩して、デジタル・ディスラプションが起きているわけではないのです。起きているのは、ICTを活用した価値の再定義の「知恵比べ」と私は呼んでいます。

たとえば、Uberです。インターネットをプラットフォームにして自動車を使いやすく配信するビジネス。乗客による運転手の評価が価値付けされて、新しい価値概念が生み出されただけで、特別な技術を使ってはいません。技術的なイノベーションは何も起きてはいないのです。この概念を抽象化すると異業種にもいくらでも応用して使えます。

 

ICTは、技術、自然科学ではなく、むしろ社会科学です。今起きている「新デジタル経済」は、必ずしも技術イノベーションではなくて、重要なのは「価値」なのです。そうなると、パートナーを組む相手も、そういった価値が提供できるように変えていくのにふさわしい相手を選ぶ必要があります。それがこれまでとは変わってきていますね。

諏訪ICTを利用した価値の再定義。そしてそれが社会科学であるという視点。刻々とビジネスを取り巻く状況が変わるなかで『価値』にフォーカスしながら、新しく成長している領域に焦点を当ててネットワークを強化していく。今、まさに求められているオープンイノベーションの取り組みですね。

腰塚さん、OIの新潮流にふさわしい有意義なお話を、誠にありがとうございました。

 

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腰 塚 國 博(こしづか くにひろ)様
コニカミノルタ株式会社 取締役 常務執行役 技術、開発本部担当

1981年 東京工業大学化学工学修士課程修了。同年、コニカミノルタ株式会社の前身である、小西六写真工業株式会社に入社。2012年から 執行役 技術戦略部長に就任しMOTを推進。現在も取締役 常務執行役 技術、開発本部担当として、同社のオープン・イノベーションを牽引している。