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NINESIGMA

トップダウンでも、ボトムアップでも駄目。オープンイノベーションの取り組みは、現場と経営が一貫してつながってやっていくことがとても大切だと思います。

出光興産株式会社 様

  • 技術・CNX戦略部 オープンイノベーション推進グループリーダー(取材当時)丸山 淳平様
  • 技術・CNX戦略部 オープンイノベーション推進グループ(取材当時)横澤 希様
  • 技術・CNX戦略部 オープンイノベーション推進グループ(取材当時)小川 大地様

御社には、弊社のサービス:自社技術の用途探索を目的としたOIカウンシルや社外技術を探索するテクノジーサーチ等を大変多くご活用いただいております。最初に、社内でオープンイノベーションをどのようなものとして、位置付けていらっしゃるのかをお伺いできますか。

弊社は石油の会社ですが、急速な少子高齢化による人口減に加え、EVの普及により、国内の石油需要が減っていくことは明らかです。売上の約8割が石油販売に依存していることから、ポートフォリオ変革を進めなければという危機感が以前からあり、その手段としてオープンイノベーションの取組みを始めました。

弊社では、石油以外では有機EL材料などの高機能素材を幅広く扱っています。オープンイノベーションを推進し、新しいアイディア・技術を外にも求めていくことで、事業化までのタイムラインをいかに短縮していくかというところに重点を置いています。

オープンイノベーションの取組みに本腰を入れるに至った背景、変化のポイントはどのあたりにあったのでしょうか。

パリ協定のあたりから世の中で環境問題が大きく叫ばれました。社内においても「この先どうしていくのか」という気運が高まり、「R&D規模をこれまで通り維持していくのか?」といった議論がありました。その中で、「これまでR&Dは大学のみ、また個人のつながりでのみでやってきたが、今後に向けてもっと積極的にネットワークを拡大していくべきなのではないか」という話が経営企画部の中で始まりました。そういった流れの中で、2019年にベンチャーキャピタルに出資をし、オープンイノベーションをより加速させていくといった意志決定がありました。

R&Dをより活発にするためにまずベンチャーキャピタルに投資をするという選択があったのですね。その次のステップとして何をされたのでしょうか。

ベンチャーキャピタルに出資をした結果、スタートアップの情報は入ってくるものの、「それを社内に配ったところで、特に何も始まらないね」という意見がありました。また、社内の組織の問題として、縦割り文化が非常に強く、そこに横串を刺して各部門を変革させていく必要性がありました。そのため、1年後には、高機能材の部門全体で、技術戦略室(コーポレートの部門)を立ち上げ、そこにOI推進グループを配置してR&Dを加速させていくことになりました。

OI推進グループという新しい組織の設置は、会社にとってかなり大きなディシジョンですよね。

背景には長く有機EL材料に関わり、育て上げた弊社のある役員の存在があったと思います。石油ビジネスではない新しい分野で長年ビジネスを作ってきた人で「イノベーションを加速させるためには、もっと外部を活用する必要があるのではないか」と、強い課題感を持っていましたね。

高機能材素材の1つとして有機EL材料の例をお話しすると、自社のR&Dとしてこれまでずっと研究開発を行なっていますが、青色発光素子の発見から事業化まで30年とかなり時間がかかっています。また、別の例では、全固体電池を始めたものの、同じくらいの時間がかかっている。そして事業化はまだ先という状況です。

先程の役員は、自分達だけでやることに対して強い危機感があったのだと思います。

なるほど、課題感の強さ故の組織変革だったのですね。新しい組織ができた時の現場の反応はいかがでしたか。

現場の反応は、正直なところ皆「ポカン」という感じでしたね。当時発足メンバーは、たったの3人(注:取材当時は6人のメンバーから成る)で、「社内キャラバン活動」という形で、各部に「オープンイノベーションとは何なのか」という話をしていきました。今振り返ると、その当時はごく一部の方にしか内容は響いてなかったと思います。

「ポカン」とした社内との距離を詰めるために、どのような工夫をされたのでしょうか?

コロナ禍での実施でしたので、キャラバン活動はオンライン上で実施しました。初期は部単位で全員集まってもらい、かなり大きな規模でやりました。全部で10回くらいは実施したと思います。

運営側としては、実務者や担当者の声を拾いたかったのですが、どうしても質疑になると上役からばかり。時間も限られていますし、担当者が質問し辛くなります。その結果、もう少し小さい単位にしないとダメだという話になりました。それからは部から室単位へと、小さな単位で複数回実施する形に変えましたね。実施していく中で4-5人の規模感が良いということがわかり、最終的にはそのサイズに落ち着きました。1回あたり1時間ぐらいの内容で、関係会社も含めて実施していきました。

技術・CNX戦略部 オープンイノベーション推進グループ(取材当時)
小川 大地様

少人数を対象としたキャラバン活動の結果、メンバーの反応に変化はありましたか。

変化はありました。欲しいと思っていた担当者からの質問が出てくるようになりましたね。興味を持ってくれた人は自らコンタクトをしてくれるので、その後でさらに少人数で具体的な話をしていく流れができていきました。そういった中でディスカッションが生まれ、担当者の理解がどんどん深まっていくような感じでした。

現場には、新しいことに積極的な方とそうでない方がいらっしゃるかと思います。その辺りの温度差についてはどのように感じていましたか。

個人間の温度差はやはりありますよね。もちろん中には「オープンイノベーションって何だよ」という方も、正直いらっしゃいます。ただそれを気にし過ぎないように、やる気がある方の意志や熱意を、まず大事にしてあげたいと思っていました。

また、開始当初は、「今回の費用はコーポレートが持っているので安心してください」「スタート1年目は誰の、どんな案件であっても全て応えるし、何でも対応します」というメッセージを伝えていました。

この数年の社内での変化を考えると、最初の頃に入り口を狭めずに、どんな案件にも応えると宣言して、対応を広げていったことが、今となってはとても良かったと思います。ポジティブな感情を持ってくださっている方をサポートしていくことで、組織風土が醸成されていくことを実感しています。

なるほど、大変興味深いですね。そのような進め方はやりながら辿り着いたのでしょうか。

我々3人が元々研究者だったことも大きく影響しているかもしれないですね。過去にトップダウンで降りてきたことを資料だけで説明され、「え?」という思いを持ったことがありました。自分達の経験からも、現場の担当者には、「オープンイノベーションは仕事で活用できる」という実感を持ってほしいと思っていましたね。

また、「組織の風土を醸成しなければいけない、ではどうやってやるのか」という話の中で、社内を繋ぐために専任者を立てようということになりました。

専任は、部単位からスタートして、課、チーム、個人へと現場との繋がりを強めていった感じです。研究所に定期的に常駐する日を設け、その場で担当者に説明やディスカッションをすることで、個人ベースまで繋がりが持てるようになってきました。

初めたばかりの頃は、現場から相談が来ることはあまりなかったのですが、回数を重ねていくごとに、だんだん存在が広まっていきましたね。個人と個人の関係性を丁寧に作ることを意識していった結果、次から次に相談をもらえるようになってきました。大変地道な活動ですが、少しずつ社内にオープンイノベーションが広がってきた印象があります。

個別プロジェクトを推進するうえで、OI推進グループとして留意されている点があればお教えください。

推進するうえで、行動につなげる、今まで接点のないところと繋ぐことが大事だと考えています。まずは研究員の方には研究テーマを進めたいと思うモチベーションを持っていただければ良く、具体的なオープンイノベーションの使い方をレクチャーするのがOI推進グループと認識しています。ただし、OI推進グループの介入度合いは重要で、推進するのはあくまでも現場の仕事という軸はぶらしていません。あまり入り込みすぎると、現場の主体性が損なわれるので、引き際が大事だと考えています。

その他、社内でオープンイノベーションの文化を作るコツはどんなところにありますか。

部単位で社内キャラバンをやった後くらいから、各部署でオープインイノベーションのツールを業務に取り入れ、周囲より一足先に有用性を実感していたアーリーアダプターが出てきていました。自分達の身近な場所で「使ってみて良かった」という声を聞き、口コミが広まっていく中で、「オープンイノベーションのツールを使うと、こういうことができる」という理解が、広がっていきました。

やはり現場の担当者が「自分の仕事に活用できるんだな」と実感を持つことが重要だと思っています。そのため、定期的にポータルサイト上で、事例紹介・資料等々をアップデートすることはやってきました。

それ以上に大きかったのは、ナインシグマさんのOIカウンシルです。OIカウンシルは、短期間(数週間)でグローバルなエキスパートのアイディア・知見が集まるため、現場の担当者に非常にわかりやすいツールですよね。自社で保有している既存技術の用途探索で使わせてもらうことが多く、大変参考になっています。

素材ビジネスですので、エンドユーザーにはなかなか繋がることが難しく、得られる顧客の声はかなり限られています。そのため、これまではどうしても限られたコネクションの中で検討をしていました。

そんな中、現場の担当者がOIカウンシルを活用していく中で、「OIカウンシルを使えば、エンドも含めた幅広い人の意見が聞けるんだ」ということがわかり、社内ではかなり広まってきています。OIカウンシルの有用性が短期間で現場に伝わったのだと思います。担当者が今後ツールを活用するにあたって、自分の身を持って有用性を実感できたことは、かなり大きかったと思います。

オープンイノベーション支援企業の中で、どうしてナインシグマを選んでくださったのでしょうか。

ナインシグマさんとは昔からのお付き合いで、大きく分類すると今回が3回目になります。オープインイノベーションの会社としては老舗ですし、信頼がおける会社さんかなと思い、タッグを組ませていただくことになりました。

1回目は10年前のチャレンジです。オープインイノベーションのことは何もわからず、トップダウンで「ナインシグマとオープインイノベーションをやる」という話が来て、当時、一研究員だった私は、検討テーマを出せと言われ、どんなテーマを出したら良いかが分からず上手くいかなかったという経験がありました。

2回目は、「新規テーマを推進するにあたり、でナインシグマを活用して外部技術を探そう」となった時です。テクノロジーサーチを使わせてもらい、海外企業のリストを出してもらったのですが、最終的に予算が付かなかった。「果たしてここにこの金額をかける価値があるのか」、「自分たちでそこまでの技術評価ができているのか」という議論になり、立ち消えになりました。

今回3回目に関しては、これまでの経験を踏まえ、プロジェクトの予算やディシジョンメイキングは、コーポレートの部署でやることが明確になっていた上での実施となりました。

ナインシグマと付き合ってよかったなと思うところはどんなところでしょうか。

OIカウンシルを利用するにあたって、非常に的確なアドバイスをいただいた点ですね。未知なところに対して、どんな観点で実施すれば良いか、設問設計の仕方、プロジェクトの進め方の留意点、こちらの意図を汲み取っていただき、大変助かりました。ときには「このやり方は良くないんじゃないか?」というような指摘もしていただきながら、伴走してくださるところは有難いですね。また、「もっとこうしてほしい」と伝えるとフットワーク軽く、すぐ反応し、改善してくださる点にはとても感謝しています。

さらに、オープンイノベーション活動を推進するにあたり、弊社社員に対してオープンイノベーションに関する講演会をして頂いたのも非常に良かったです。約500人の社員が参加・視聴する中で、外部の視点からオープンイノベーションの有用性を語っていただき、説得力が増しました。

技術・CNX戦略部 オープンイノベーション推進グループ(取材当時)
小川 大地様

弊社がさらにお役に立てるようになるためには、どんなことが必要でしょうか。

ナインシグマさんにはこれまで注力してきた「今ある事業の成長を加速させる」という観点で、とても感謝しています。

今後は、「新しい事業のアイディアをどうやって発掘していくか」、「アイディアのタネをどう創出していくか」という観点でアイディエーションの重要性が増していくと思います。その部分でオープインイノベーションを活用していかなければと思っていますし、どうやっていくかが本年度の課題です。

弊社のコーポレート研究所の中でも、「サービスを使って考えよう」ということをやり始めていますが、ナインシグマさんは、多くの企業をサポートされている中で、弊社がどのように進めていくべきかという点について、ご意見を伺えたらより有難いです。

OI推進グループが立ち上がって3年目、この7月に部署名が新規事業推進グループに変わるということでしたが、今後の展望としてはいかがでしょうか?3年後こうなっていてほしいというイメージはありますか。

今までは我々が主導しながら、各研究員に働きかけて共感を得て、オープンイノベーションが少なからず広まってきたという感じがあります。3年後にはオープンイノベーションのツールが個々の研究員の頭の中にあって、自分自身で活用できているのが当たり前という状態にまで持っていきたいですね。

広め方のイメージとしては、1つ目はこれまで通り地道な活動を繰り返して口コミで広まる、2つ目は新人教育に組み込む、3つ目は専任の担当は置きつつも、ジョブローテーションのような形で若い人たちにオープンイノベーション推進の仕事を経験してもらう。2年後くらいに現場に帰った際には、経験をもとに広めてもらうということを繰り返していけると、より広まっていくのではないかと考えています。

コーポレートの立場としては、現場に対してよりプロフェッショナルなアドバイスができるようになりたい。現場からの依頼も増えて、全ての案件に応えていくことが出来なくなってきているので、内容を確認の上、取捨選択をして、しっかりと断るというスタンスに変えていくことも必要だと考えています。

最後の質問になります。企業内でオープインイノベーションを推進する方に向けて、メッセージをいただけますか。

推進は、トップダウンでもボトムアップでも駄目で、両面でやっていく必要があります。我々の立場のように経営と現場の間にいて、現場の気持ちがわかる人間が文化を広めていくことが大事だと思っています。

トップダウンだとやらされ感が残ってしまう、何もない中ボトムアップで新規事業の創出活動をやれというのも辛い。オープンイノベーションの推進には、現場と経営が一貫してつながってやっていくことがとても大切だと思っています。

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