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オープンイノベーションの新潮流
第5回 「身の回りにあるオープンイノベーションの成果①」

ナインシグマ・グループ
顧問 渥美 栄司

 

オープンイノベーションの新潮流。
第1回から第4回まで、SDGsに関連した環境問題やHIV、オピオイドなど、課題解決には大規模な取り組みが必要となる社会課題に対するオープンイノベーションを活用した取り組みを紹介してきました。一方で、このような大きな取り組みだけでなく、身の回りにある製品においても、その開発・製造等の過程でオープンイノベーションが活用されています。

第5回は、皆さんにオープンイノベーションを身近に感じていただけるような、食品・日用品におけるオープンイノベーションの事例を紹介していきたいと思います。今週は、具体的な事例紹介の前に、食品・日用品業界について現状を紹介します。

 

お気づきですか? スーパーマーケットのシェルフは、オープンイノベーションで溢れている

食品、飲料、日用品、化粧品。私たちが気づいていないだけで、身の回りに存在する多くの製品が、オープンイノベーションによって開発されています。私たちの生活は、オープンイノベーションによって、より便利に、より暮らしやすくなっているのです。

しかし、多くの企業は商品開発にまつわる情報開示を好まないため、その事実が知らされることはありません。さらに日本では「イノベーション=技術革新」というイメージから、自動車業界や電機、製薬業界のオープンイノベーションばかりが注目される傾向にあります。ですが、オープンイノベーションによって、珍しい新製品が開発されたり、ビジネス課題が解決されたり、異分野の技術を使って製品化が実現されたり、食品・日用品業界には、たくさんのオープンイノベーションの成功事例が存在するのです。

 

競合他社に負けないアイデアは、社外に。

事例の前に少し、日本市場における食品・日用品業界の現状について言及します。まず、食品や日用品のライフサイクルの短縮化が叫ばれています。人口減少による市場の縮小から、顧客の奪い合い競争が激化しているからでしょう。また、市場に似たような商品が並び、顧客が品に飽きるスピードが以前に増して早まっている点も、原因の一つです。商品の開発サイクルを短縮し、消費者の購買意欲を喚起し続けられるかどうかが、食品・日用品企業の命題となっています。

こうした事態に陥った食品・日用品企業は、「新しい機能や価値を付加した新商品を開発したい」「既存商品の機能や性能をアップグレードしたい」「商品の製造技術、輸送品質を革新したい」という要望を抱えています。これらの要望に対して、オープンイノベーションが有効です。

自社開発にこだわらず、オープンイノベーションを活用して、社外の「アイデア」や「技術」を積極的に取り込めば、競合他社に打ち勝つ「高付加価値製品の開発」や「開発・製造サイクルの短縮化」が実現できます。そもそも食品・日用品企業は、市場に受け入れられる商品に仕上げる製造機能を有していますから、差別化につながるアイデアや技術さえ入手できれば製品開発が進む、という考え方もできるのです。一度社外に飛び出せば、世界が宝の山であることに気づくのではないでしょうか。

このように、食品・日用品業界は、オープンイノベーションが必須の背景を有するのと同時に、オープンイノベーションと相性のいい業界と言えます。

次週は、そのような食品・日用品企業が、オープンイノベーションを活用することにより生み出した製品を紹介していきます。