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ベンチャーとの付き合い方

オープンイノベーション
スタートアップ

ここでは、大企業とベンチャー企業双方より聞こえてくる「ぼやき」をとりあげてみます。

近年、新規事業や革新的な製品やサービズの創出に活かせないかということで、日本国内でも、ベンチャー企業の活用が注目を集めています。一方で、ベンチャー企業側からも大企業側からも、相手方について必ずしも良くない話を聞くケースが少なからずあります。

なぜなのかと考えてみますと、そもそもの「ボタンの掛け違いが起きている」のではないかとの思いに至りました。両者が相互理解を深め、よりよい関係を築いていただくうえで、いくばくかでも参考になれば幸いです。

 


① ベンチャー企業には大した技術がない?

これは、大企業の研究開発系の方より耳にすることのある言葉です。学術研究を見るような視点で見ているせいではないか、と思います。ベンチャー企業のミッションは技術を突き詰めることではなく、新しい市場に果敢に挑戦することにあると思います。彼らが狙っている市場の可能性と彼らがそれを切り拓けるかを見るべきなのに、大企業の研究開発者は、技術単体の独自性・優位性ばかり見てしまうあまり、原理的には新しい話じゃないですよ、などといった扱いをして、残念ながら、それっきりとなってしまうケースも見られます。

② ベンチャー企業は言うことを聞いてくれない?

これも大企業の方より度々耳にする言葉です。ベンチャー側は大企業の言うことを聞きたくても聞けないのではないか、と思います。ベンチャー企業は、次のマイルストーンにコミットする形で投資家より資金を得ています。現行の開発案件を疎かにしかねないリスクをとって新しいテーマに取り組むなど、単独で決められるはずはないと思います。「技術的にできそうだから」とか「こちらで開発費を払うのだから」という理由だけで、大企業側がベンチャー企業に、事業性があるのか・ないのか不透明な自身の研究開発に付き合わせようとするのは酷な話かもしれません。

③ ベンチャー企業との付き合いには金がかかる?

ベンチャー企業にサンプル作成を依頼したら、想定より1桁大きい金額を要求されて断念した、などという話を大企業の方よりしばしばうかがいます。大企業の方には理解しがたいかもしれませんが、ベンチャー企業の多くは赤字を垂れ流しながら、夢を追いかけています。工数チャージを載せることなく、材料費+αでサンプル試作などに応じ続けていると、キャッシュがショートしてしまうリスクさえあるのです。どのような名目で対処するかはともかく、大企業の方には、ベンチャー企業側に何か頼む際は、相応の人件費をカバーする心づもりで、付き合っていただけたらと思います。

④ 大企業はないものねだりをする?

大企業の研究開発系の方には、ベンチャー企業に対して過大な期待を寄せる方が少なからずいらっしゃるように見受けられます。見たことのない革新的な技術で、ある程度実績がでてきていて、魅力的な市場規模になりそうなものがいい、などとあれもこれも要求しているケースにもしばし遭遇します。そう言われたベンチャー企業側は、どう思っているでしょう。そんなすごいものを持っていたら、既にEXITしてますよ、と心の中で叫んでいることでしょう。大企業には、一芸に秀でたベンチャー企業に、自社の総合力で梃入れし、彼らの可能性を開花させる心意気を期待したく思います。

⑤ 大企業はあまり支援してくれない?

某ベンチャー企業の方が、某大企業の方に、資金やオフィスを提供するかどうか考えるに当たり、どうやって弊社の新規事業創出に貢献できるのか、その根拠とともに示してほしい、と問われたとこぼしていました。もちろん、何ができそうかという案は出せますが、ヨチヨチ歩きの技術しかもちあわせていない当社が考えるより、そうした技術を活用してどのような事業を創出すべきかについては、貴社こそが考えるべきことなのではないかと、と思ったとのことです。ベンチャー企業にとって、資金やオフィスも大事ですが、それ以上に、大企業の人的ネットワークや内部リソースによって、どのように梃入れしてもらえそうかに興味があるのではないでしょうか。

⑥ 大企業と付き合うのはお金と手間がかかりすぎる?

大企業の方からは、場所が離れていようといまいと、「とりあえず打合せに来てくれ」と言われることが多いが、お金も工数もかかるし、そう易々と呼び出されてはたまったものではない、とこぼすのを時々耳にします。こちらの技術について協議しているのに、相手(大企業側)のNDA雛形で進めたいと求められ、NDAの内容に修正を加えようものなら、何週間も待たされたあげく、修正はまかりならんと言われることもある、といった声も聞こえてきます。大企業の方には、圧倒的に工数の足りないベンチャー企業と対峙する際には、どっしりと構え、できる限り相手方の土俵でやり取りしてあげていただきたいものです。


 

上記のぼやき事例から分かるように、大企業とベンチャーのコラボレーションは、大企業同士や大企業と大学とのコラボレーションとはだいぶ様子が異なります。ベンチャー企業は、投資家に資金面でのリスクを取ってもらう代わりに、ハイリターンな事業に挑む人たちなので、大企業や大学と価値判断が異なって当然です。大企業との付き合い方を学ぶインセンティブをもつベンチャー企業もいますが、彼らにそうした努力を強いるより、総合力で圧倒的に有意な大企業側がベンチャー企業の長所を引き出しながら付き合っていくすべを体得してこそ、ベンチャーの力を活用した新規事業創出が前進するのではないだろうかと思います。