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オープンイノベーションの新潮流
第5回 「身の回りにあるオープンイノベーションの成果④」

ナインシグマ・グループ
顧問 渥美 栄司

 

食品・日用品の製造・開発企業がオープンイノベーションを成功させるために。

ここまで、5つの事例をご紹介いたしましたが、思いもよらないところで、オープンイノベーションが行なわれているという事実に、驚かれたのではないでしょうか。食品・日用品業界ほど、異分野から情報提供を求める傾向が強く、そのおかげで多くの成功事例が誕生しているともいえます。今回ご紹介した事例はほんの一部に過ぎません。世界には数え切れないほどの成功事例が存在します。今後も、様々な事例についてご紹介し、皆さんのビジネスのヒントになる情報を提供していきます。

さて、今回は、食品・日用品業界の製造・開発企業が、外部から得た「アイデア」や「技術」をどのようにイノベーションに結実させるのか、オープンイノベーションを成功させるための3つのポイントをご紹介します。

1つ目は、可能な限り「異分野」に協力を要請することです。ご紹介した5つの事例はすべて、異分野から技術提供を受けたことで製品化が実現しました。自社から一歩抜け出せば、たくさんの宝が転がっています。失敗を恐れず、異分野にアイデアや技術を求めてみてください。

2つ目は、アイデアや技術を求める際は、必要な「ピース」を規定するだけでなく、ピースが空いた「穴」についても規定することです。この場合の「ピース」とは、探索したい「技術課題」を指します。「技術課題」を明確に提示できるのであればそれに越したことはありませんが、具体的な定義が難しい場合や、技術課題の開示が新製品のネタバレに繋がる場合は提示することができません。そうした場合には、「ピース」ではなく、その「ピース」をはめ込む「穴」について、詳細に提示していただきたいのです。【事例4】某チョコレートメーカー:くっつかないチョコレートでご紹介したチョコレートでいえば、そのチョコレートの形状や表面の状態に関する情報、「互いに癒着しないようにしたい」「剥離しやすいようにしたい」などといったニーズもまた、「穴」の規定に繋がります。実は、この「穴」について規定した方が、発想が広がって、より多くの分野、より多くの組織から、技術やアイデアが提供されるかもしれません。「ピース」あるいは「穴」を詳細に定義づけることを意識していただきたいと思います。

3つ目は、欲張らず、段階的に技術探索を進めること、そして繰り返し挑戦し続けることです。食品業界には、可食性や品質など、クリアしなければならない項目が多数設けられています。しかし、異分野の技術者・研究者は、そういった可食性や品質に関する知見は持ち合わせていません。第2章のペプシコ社の例にあったように、技術的ハードルの高い課題に対して技術探索を行う際には、「コンセプトの検証」から始めて、「可食性の検証」、「品質の改善」、「コストの改善」と、一つひとつ段階的にクリアしてほしいと思います。異分野に求めるからこそ、段階的に探索する必要があるのです。

そして、諦めず、繰り返し挑戦してください。まれに、オープンイノベーションを魔法のツールのように思われている方がいて、一発で成功して当たり前だという誤解されている場合があります。一度失敗しても、決して諦めないでください。食品・日用品のライフサイクルは短く、研究開発にかける時間は多くありません。実際に製品化するまで試し続けることが重要です。恐れず、様々な打ち手を試してみてください。

食品・日用品のライフサイクルは今後も、ますます短縮化するでしょう。競争が激化する市場で、いかに競合他社に打ち勝つ魅力的な製品を開発できるのか。その解を、オープンイノベーションに見出していただきたいと思います。

 

次回は、ヘルスケア「産業」におけるオープンイノベーションに焦点を当て、オープンイノベーション動向・戦略からみるヘルスケア産業の未来に関して紹介します。