「オープンイノベーションは難しくて、途中で止まってしまうことが多い」という話を耳にすることがあります。せっかくスタートさせたプロジェクトを最後までやり遂げる!成功確率を高めるための方法についてお話しします。
目標未達のプロジェクトは、社外パートナーと行う場合は、外部への支払いが目立つため打ち切られるケースが多いと言えます。しかし、自社開発のプロジェクトの場合には、人件費をSUNK COSTとして扱うことで、目標期間を延ばして継続していることも少なくありません。ですので、本当に自社開発と比べて失敗リスクが高いのかを比較するには、「条件を同じにする必要」があります。同じ条件で失敗リスクが高い場合には、オープンイノベーションを実践する「テーマの選び方」から見直すことをお勧めします。
オープンイノベーションの経験が無いので、うまくいくかわからない、リスクの少ないテーマから試しに始めてみたい、という気持ちはわかります。しかし、成功の鍵は、あえて、「優先度の高い重要なテーマで実践すること」です。
ナインシグマはこれまで、国内だけでも800件以上の技術マッチングのプロジェクトを実施してきはました。600件ほど実施した段階で、過去数十件のプロジェクトを追跡調査いたしました。すると結果は、オープンイノベーションのプロジェクトが順調に進んでいる割合と、オープンイノベーションを実践する技術分野(材料、ソフトウェア、プロセス、検査など)や、オープンイノベーションの実践目的(課題解決、スキル補完、など)にはほとんど相関がない、というものでした。唯一、大きく相関があったのは、「その会社、その部門にとって重要なテーマで実践しているかどうか」だったのです。
なぜでしょうか?
追跡調査の結果、次の3つが大きく影響していることがわかってきました。
1.予算がおりやすい・予算が続きやすい
はじめての取引相手と協業する場合には、信頼関係がまだ構築されていません。つまり、「後で購入するから、技術改良にかかる費用は貴社で持ってほしい」といった話は通用しません。相手に協力してもらいたいのであれば、その分の費用は依頼する側が負担する必要があります。つまり、「キャッシュアウトの活動になる」わけです。そのような活動は経営の見る目も厳しくります。だからこそ、会社として、もしくは部門として優先度の高いテーマほど、予算がおりやすく、また途中でストップしてしまう可能性も低くなるのです。
逆に、せっかくプロジェクトが順調に進んでいても、テーマ自体がストップしてしまうと、オープンイノベーションがうまくいかなかった、と認識されるリスクすらあります。
2.十分に工数が割ける
これまで付き合ったことのない相手との協業は、慣れ親しんだ相手と比べて、コミュニケーションなど、いろいろ手間がかかります。あまり重要でない、小さいテーマに取り組んでいると、上司から他の仕事も割り振られて回らなくなってしまうことも少なくありませんが、重要なテーマであれば、専念を許され、チームを組んで取りかかれるので、達成率が上がるのです。
また、法務部門や知的財産部門の協力も不可欠です。小さいテーマでは、どうしても他の重要テーマへの対応が優先になるため、時間が掛かります。特に自分たちのテクノロジーの「旬」に敏感なスタートアップ企業との協業の場合には、「待ちきれない」、「遅すぎる」という理由でフラれてしまうケースもたくさんあります。優先度の高いテーマであれば、当然、速い対応も期待ができるというわけです。
3.踏ん張りが効く
技術開発では、途中、心が折れそうになることがよくあります。ましてや一緒に開発する相手がいて、なかなか順調に進んでいない、社内的にあまり注目されていないテーマの場合には、ひっそりと止めてしまうということも珍しくありません。しかし、社内的に、部門的にある程度注目を集めていたら、簡単に投げ出すわけにはいきません。踏ん張れば乗り越えられる壁も少なくないということなのです。
最後は根性論ですが、これが結構重要です。
オープンイノベーションで成果を出せている企業の多くは、オープンイノベーションを推進する部門が定期的に現場を回り、活用したいテーマを集め、その中から、会社として、もしくは事業部門として需要かつ優先度の高いテーマを選んで実践しています。