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クリーンラベルの現状と展望:OIカウンシル調査レポート

”消費者の健康意識や環境への配慮の高まりに応じて広がるクリーンラベルの取り組み。日本ではまだ大きなトレンドになっていませんが、グローバルではどのような取り組みが行われているのかを調査しました。結果、クリーンラベルへの関心の高さとともに課題も見えてきました。”

<クリーンラベルの広がり>
近年、健康志向の高まりとともに、「クリーンラベル」という運動が消費者から注目を集めています。

クリーンラベル とは、製品の成分をわかりやすく、かつ自然な形で表示し、また人工添加物や化学合成物質をできるだけ避けることを重視する取り組みです。

近年の消費者は健康志向がますます増加し、また成分表から製品がどのように作られているのか、どのような成分が含まれているか確認し、安全性と信頼性のある製品を選びたいと考えるようになっており、その需要に応じた食品メーカーもクリーンラベル対応の製品を増やしています。一方で、製品のクリーンラベル化に際し置き換えを目指す、人工香料、合成保存料、人工着色料といった添加物は大量生産においては重要な原料でもあり、代替に向けて様々な課題が生じていると考えられます。

そこで今回の調査では、現在取り組んでいるクリーンラベルの対応状況や課題について、食品業界のエキスパートにヒアリングしました。

<調査方法>

調査内容: クリーンラベルの取り組み状況と課題の把握
調査方法: OIカウンシルを使用した調査(業界エキスパートコミュニティへ質問を直接問いかけていただくサービス)
調査期間: 2024年9月

【質問】
Q1.主要製品のクリーンラベルの現状と今後の計画について教えてください。

1,現在クリーンラベルの取り組みを実施しており、今後も継続する予定である
2,現在クリーンラベルの取り組みを実施していないが、今後実施する予定である
3,現在クリーンラベルの取り組みを実施しているが、今後継続する予定はない
4,現在クリーンラベルの取り組みを実施しておらず、今後も実施する予定はない

Q2.Q1で選択した内容について、理由を具体的に教えてください。

Q3.クリーンラベルに取り組むうえで、課題となる点は何でしょうか?

1,クリーンラベル化に伴う味と食感への影響
2,クリーンラベル化に伴う製造プロセスへの影響
3,クリーンラベル化に伴う価格の上昇
4,クリーンラベル化に必要な代替原料の不足
5,その他(具体的に記載ください)
6,クリーンラベル化における課題はない

Q4. Q3で選択した内容について、理由を具体的に教えてください。

<調査結果>

有効回答数:17件

■ 回答者の所属地域

多くの食品企業でクリーンラベルの取り組みを実施中

Q1の回答結果より、エキスパートの所属する企業の約半数が既にクリーンラベルの推進を行っており、今後も継続予定であることが分かりました。また、現在推進していないが、今後推進予定の組織も含めると約90%となり、クリーンラベルは食品業界において取り組んでいくべき対応であることが改めてうかがえました。

Q1. 主要製品のクリーンラベルの現状と今後の計画について教えてください。

 

またQ2の回答結果 より、クリーンラベルの取り組みを進める組織では、「消費者の健康志向の高まりや食品表示における正確な情報伝達に向けた有用性から、クリーンラベル化を進めている」(食品原料メーカー、Senior、オランダ)といった回答が多く寄せられており、消費者のニーズに合わせて拡大が進んでいることが伺えます。

一方で、クリーンラベルを推進していないと回答したエキスパートは、「自社が展開する国での市場調査の結果より、消費者はあまり食品ラベルに関心が無かったため、積極的に取り組む対象となっていない」(食品検査メーカー、Senior、UK)との意見もあり、クリーンラベルに対する消費者のニーズは地域差が生じている可能性があります。

クリーンラベルに対する消費者ニーズは、消費者の健康意識や環境への配慮への関心の高さと相関が高いと考えられますが、その他の要素として食品ラベルへの関心の高さなど他の要素にも目を向けることも重要かもしれません。

製品価格の上昇だけではなく、製品開発工程でも複数の課題

Q3、Q4ではクリーンラベルの推進上の課題を挙げて頂きました。
最も大きな課題として挙がったのが、クリーラベル化に伴う技術開発や製造更新、原材料の変更による「製品価格の上昇」です。中でも酸化防止剤や香料といった人口添加物を代替品に変更した際のコスト上昇への言及が多くなっています。また、消費者の需要は高いが、価格の上昇を許容するほど強い欲求ではないとの意見もあり、価格を抑えることの重要性を挙げる方が多くなったのではないかと思われます。

価格面以外では、クリーンラベル対応原料への切り替えによる、味や製造工程への影響、代替原料の不足といった「製品開発に関わる部分への影響」に関しても課題が多く挙げられておりました。個別の回答を確認すると、十分な機能性を持った原料が無い、代替品の防腐効果が不十分で製品寿命が短くなるといった、クリーンラベル化代替原料の性能が現行の加工原料と比較し十分な性能に至っていないことが原因だと思われる課題が挙げられていました。

Q3. クリーンラベルに取り組むうえで、課題となる点は何でしょうか?

 

以下ではQ4の回答からそれぞれの項目で寄せられた課題についてピックアップして掲載しています。

 食感への影響
  • クリーンラベル化のため、添加物の代わりに物理的処理の代替プロセスを実施しているが、それにより官能面への影響が生じている。(Netherlands、乳飲料メーカー、Senior)
 製造工程への影響
  • クリーンラベル化に伴い、使用している防腐剤を削減する必要があることから、製品寿命の短縮に繋がっている。(Taiwan、加工食品メーカー、Director)
 代替原料の不足
  • クリーンラベル原料の中には、「非クリーン」原料と同じ性能を持たないものがある。特定の機能性を必要とするプロセスでは、クリーンラベル原料の活性が低下する可能性がある。(Taiwan、加工食品メーカー、Director)
 価格の上昇
  • 天然エキスを酸化防止剤として使用する場合、ブチル化ヒドロキシトクネやブチル化ヒドロキシアニソルのような合成成分よりも、その価格は高くなる。(Turkey、加工食品メーカー、Director)
  • 消費者はよりクリーンな食品を求める一方で高いお金を払う準備はできていない。 同じ価格であれば、よりクリーンなものを選ぶが、高価であれば、現在のものを使い続ける傾向にある。(日本、加工食品メーカー、Director)

クリーンラベル対応原料の市場は拡大傾向

エキスパートの回答にもありましたが、クリーンラベル化に際しての課題の一つに対応する原料の確保があります。クリーンラベル製品への関心の高まりに合わせて、近年市場は拡大傾向が続いています。ここでは、クリーンラベル対応原料として発表されている製品事例をいくつかピックアップしてご紹介いたします。各社、現行の加工原料と遜色ない機能をもつ材料の開発を進めていることが分かります。

  • 非遺伝子組換え酵母を使用した、乳タンパク質と栄養価・機能性が同等の代替カゼイン。本製品の仕様により、乳化剤等の添加物を不使用で代替ミルクを製造可能 (アメリカ、Pureture社
  • 加工でんぷんと同等の機能を持つ、クリーンラベル対応でん粉。食品ラベルにでん粉と記載可能 (日本、イングレディオン・ジャパン社
  • 廃棄する予定のホワイトボタンマッシュルームから天然防腐剤「Chiber™」 (カナダ、Chinova Bioworks社

 

<まとめ>

食品業界では、消費者の健康志向を背景に「クリーンラベル」が注目されていることが改めて分かりました。しかし、価格上昇の壁があるため、実際に強いニーズとして成立させるには、コストを抑える技術革新と原料開発が急務と言えます。日本ではまだ主流ではないものの、今後ニーズが拡大すると見られ、海外の競合企業に先行するためにも今こそ積極的な技術開発が求められています。クリーンラベルの取り組みを通じて業界をリードする準備が必要です。

今回の調査では、クリーンラベルに関して実際の深奥状況やその課題などをより実感を持って把握できたのではないでしょうか。様々な業界エキスパートが所属するグローバルなOIカウンシルというコミュニティでは、このように特定分野で専門的な経験を持ったエキスパート達から生の声を聴くことが可能です。ぜひお気軽にご相談ください。

詳細についてのお問い合わせはこちらから: contact_ap@ninesigma.com

ナインシグマの支援事例集はこちらから:https://ninesigma.co.jp/request/

 

関 真太郎

事業部 シニアアソシエイト(ヘルスケア・CPG)

<担当プロジェクト>
・大手食品メーカーに対する新規事業領域における共同研究先の探索支援
・大手食品メーカーに対するヘルスケア領域での新規事業開発支援 など
<略歴>
東京大学大学院にて植物ホルモンに関する研究を推進後、大手食品メーカーにて食品開発業務に従事。ナインシグマ参画後は食品・ヘルスケア領域を中心に、共同研究開発のパートナー探索やマッチングを支援​