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NINESIGMA

オープンイノベーション実践者との対談(第4回)
コニカミノルタ株式会社
専務執行役
杉山 高司

第4回のゲストに起こしいただいたのは、コニカミノルタ株式会社で専務執行役を務める杉山高司氏。
対談では情報機器事業、産業用材料・機器事業、ヘルスケア事業など、多彩なビジネスをグローバルに展開するコニカミノルタが強みとする、材料・微細加工・光学・画像分野におけるコア技術の開発、また技術戦略についてお伺いしました。

諏訪本日はお時間をいただき、ありがとうございます。
世の中の変化が激しくなり、従来通りの研究開発をしていては、なかなか事業につながらなくなった、とよく言われています。
そんな中、御社では技術戦略の基本方針として、「強い成長を推し進めるコア技術・基盤技術の融合化・複合化」、「中期環境計画2015を実現する環境配慮型技術開発の推進」、「グループ基盤技術強化の推進」、「技術価値の追求」、「技術人材力の強化」の5つを挙げていらっしゃいますね。
これらについて詳しくお話を伺いたいと思っております。
まず、事業につながる研究開発の在り方について、教えていただけますか?

 

 

 

 

事業計画をリードする技術の中期経営計画

杉山先を読みづらい時代になりましたが、コニカミノルタでは、競合と比べてリソースでは大きく劣りますので「5%、10%という低い確率で数を打てば良い」という状況ではありません。ですから、差別化できるコア技術を持ち、個々のレベルを向上させることで、開発した技術が事業に結びつく「確度」を高めていくことが重要です。
事業につなげるということは、まず、進むべき道をある程度明確に示しておく必要があります。そのため、我が社では「技術の中計(中期計画)」を作成しています。
まず大前提として、我々は大学とは違い「企業」ですから、開発した技術が事業につながらなければならない。しかし「素晴らしい技術を開発したとしても、その先の事業が見えてこない」という課題もあり、その辺りのズレを変えていかなければなりません。かといって、百発百中を目指すべきかというと、それも違う…。

諏訪百発百中というと、目先のことだけに走ってしまうので、先を見据えられなくなってしまいますからね。

杉山そう。事業として成長が見込める領域や、社会に貢献できる領域に、いつでも投入できるよう、常に技術を育てておかなければならない。そのバランスを保つことが、「技術の中計」に求められています。

諏訪だとすると、「技術の中計」は、「事業の中計」との密な連携をして立てているのですか?

杉山当然、技術と事業がキャッチボールをしながらになります。

諏訪では、どのような流れで「技術の中計」は作られるのでしょうか?

杉山まず、「環境・エネルギー」「健康・安全・安心」といった成長市場と、我々が戦略的に強化したい事業とを明確にします。その上で、我々が持つコア技術でどんなことができるのか、あるいは技術が足りないようなら、どのような技術を新たに取り込むべきかを考えます。
技術がなければ、いくら経営戦略や事業戦略を具体的に立てて、「この領域に向かって行こう」と思っても前へ進めませんからね。

諏訪「どうやって行くのか」の説明には、技術が不可欠ですね。

杉山今のように変化の激しい時代では、経営戦略や事業戦略を練れるのはせいぜい向こう3年~4年です。一方で、そのような戦略をもとに事業を実現するためには、技術はそれよりかなり前から仕込んでおかなくてはいけない。技術は開発に時間がかかりますから。つまり、技術は経営戦略や事業戦略に先行して、5年~10年先を見ていないといけないということになるのです。

諏訪技術が事業に先行して先を読む必要があるのですね。

杉山そう。そうなると、技術と事業とがキャッチボールをするとはいえ、まずは研究開発側が、「市場がどう変化していくか」あるいは「新たな市場がどう動いていくか」をある程度予測しながら、自分たちで技術のロードマップを描いていくことが、最初のステップとなるのです。それがないと、事業の経営、あるいは営業や販売、あるいは商品企画とキャッチボールをしようとしても、事業が具体化していないのですから、うまく球は投げられません。

諏訪しかし、市場の情報だけで将来の事業を具体的にイメージするのは、そう簡単なことではないですよね。それに、変化の大きな昨今において、「先を読む」こと自体、はるかに難しくなってきています。10年~20年前でしたら、例えば、「テレビはどんどん薄型化されていく」「半導体はどんどん集積密度が高まって小型化していく」ことが前提にあって、「フィルムの薄型化」や「より微細な加工を可能にする光学技術」など、その先に求められる技術も想像しやすかったように思います。しかし、テレビもこれ以上薄くしてどうするのかという議論もありますし、解像度を高めた先に果たして市場があるのかどうかも不明瞭です。5年~10年先を読むことは、至難の業とも思えるのですが?

 

「先を読む」精度を高めるには───「事業的なマインド」の普及に向けた3つの方策

杉山おっしゃる通り簡単ではありません。しかし、10年前にどんな研究開発をしていたのか振り返ると、意外と今の製品につながる重要な研究開発に取り組んでいたりするんです。ところが、その後の経緯を追っていくと、途中でそのテーマをドロップさせていることもある。それはやはり、我々の市場に対する予測や見方が甘く、市場が求めている視点とは別の視点で技術の良し悪しを判断してしまったことのあらわれなのです。

諏訪なるほど、過去の経緯からヒントが見えてくる…。では、先を読む精度を高めるには何が重要ですか?

杉山「発想の起点をお客様サイドに移す」こと。そして、「事業化のマインドを持つ」こと、「お互いに口を出し合う」こと。この3つが非常に重要だと考えています。

諏訪なるほど。ではまず、「発想の起点をお客様サイドに移す」という点について具体的にお伺いできますか?

杉山コニカミノルタのメイン事業である「複合機」を例に挙げると、以前は「画質をかなりきれいにしました」「スピードをここまで向上させました」と、メーカー起点で製品や商品となる技術を作り、それらをお客さんに受け入れてもらっていました。
ところが今では、メーカー主導で開発した商品はそうありません。逆に、数ある中からお客さん自らが商品を選び、価値を認めてくれるような、消費者ニーズを捉えた製品でないと、お客さんの支持は得られません。
しかし、お客さんの表面的な要求を聞いているだけでは、事業も単発的に、かつ短期間で終わってしまいます。ですから、ニーズの裏に隠れた本質的な要求を正確に捉えることが重要になのです。それを実現するには、研究者がどれだけ市場と近い距離にいるかがポイントになります。

諏訪御社はこの4月に、持ち株会社制から再度、事業部制に組織制度を変更しましたね。これは、技術開発部門と各事業部の距離を縮めることで、お客さんとの距離も近づけようという狙いがあったからですか?

杉山まさに、そうですね。これまで、コーポレートの研究開発部門では、将来の市場を見据えて、最先端の研究開発を行ってきましたが、なかなか事業に結びつかなかった。そこで、各事業会社で先端的な新しい研究開発を行っていた部隊や、もともと別の部署にいた企画部隊をコーポレートに集約させ、R&Dのマーケティング機能を持つ組織に再編しました。

諏訪企画部隊は、R&Dでどのようなマーケティング機能を果たしているのでしょうか?

杉山我々が持っている技術をお客さんに提示し、どのように受け止めていただけるかを検証し、一方では我々の技術を前提とせずにお客さんの要求を引き出すよう問いかけるなど、双方向の働きかけを行います。本来なら、これらの活動すべてを研究者に委ねられたらいいのですが、なかなかそうもいかないので、今は組織的にR&Dマーケティングがその役割を果たしています。

諏訪事業部の営業やマーケティングとは別に、R&Dの中に研究者ではないマーケティング担当を配置したということですね?

杉山はい。まだ機能を確立させている段階なので模索中ではありますが、バックグラウンドに技術の知識を持つ社員を20~30人ほど置いています。この部隊と研究者が一緒に動くことで、「注力すべきこと」「無駄になること」を見極める目を持てるよう期待しています。

諏訪なるほど。それは研究者にとっても強力なサポートですね。では次に、2つ目となる「事業化のマインドを持つ」という点についても、具体的に教えてください。

杉山冒頭で申し上げた技術戦略の一つ「コア技術の高度化、複合化・融合化による新たな価値の創造」にもありますが、研究開発の人間が技術の価値を創出するだけでなく、それを事業にまでつなげていくという強い意志を持つことこそが、「事業化のマインド」です。

諏訪そうした「事業的なマインド」は社内で養えるものでしょうか? それとも、採用の段階からそういうポテンシャルを持った人材を採用するということですか?

杉山技術経営に関する研修プログラムを去年から導入し、内部で育てています。

諏訪研修プログラムとは、どのようなものでしょうか?

杉山座学ではあまり役に立たないので、実践的に技術経営的なモノの見方や考え方を、中堅の技術者から学んでもらっています。
内容としては、自分たちの仕事にMOT(Management of Technology:技術経営)という考え方を取り込みながら、実践へと移行していくプログラムです。
教科書で学んで「はい、おしまい」というほど現実は甘くないので、現場で実践することで、壁にぶつかりながらも、新しく学んで成長するというスタイルです。

諏訪その過程を指導し、実践結果をレビューするのはどなたになるのでしょうか?

杉山社内にMOTのエキスパートがおりますので、研究開発部門内の主力のマネジメントメンバーを指導させています。彼らが育てば、次は彼らが下の若いメンバーを指導するというように、上の世代から下の世代へとマインドが受け継がれていくことで、技術経営的な視点が浸透することを目指しています。

諏訪上の世代から順々に受け継がれていくというわけですね。

杉山まずは、マネジメント側に事業的なマインドが無いと、どうしようもないですから…。

諏訪個人のマインドだけでなく、そのようなマインドが理解され評価される環境も重要、ということですね。 3つ目の「お互いに口を出し合う」ことと、「先を読む精度を向上させる」ことは、どう関係しているのでしょうか?

杉山特に、複合機をはじめとした情報機器事業では、オフィスでの働き方が将来どう変化していくかを見据えて、お客さんの期待を超えたニーズを予測する力が必要になります。
これは、たとえ優秀なマネージャーであっても、進むべき道を「ぽん」と決めればうまくいく、というほどたやすいものではありません。チーム力を結集し、未来のオフィスがどう進化しているかを予測していかなくてはならないのです。
その際、開発チームの一人一人が、「自分はこの分野のチャンピオンだ」という強い気持ちを持って、自分の担当している分野の範囲以外にも視野を広げながら、より精度を高めていく必要があります。

諏訪それは、自分の担当業務以外にも口をはさむ、ということですか?

杉山そうですね。そういう意味では海外と日本では、チームでの働き方が異なっているように思います。

諏訪どのように違っていますか?

杉山海外の場合、マネージャーがきちっと役割分担をしているので、メンバーは示された目標にただ向かって走っていれば、隣にいる同僚が何をしていても関与しない、という傾向があります。もちろんチームというのは、マネージャーがしっかり指示を出してさえいれば、無駄なくきちんと組織は動いていくものです。ただ、マネージャーや他のメンバーに対して、「これはおかしいよ」という反対意見を出したり、問題提起をしにくくはなってしまいます。
一方、日本人の場合は、よそでやっていることにいちいち口を出す「余計なお世話」的なところがある。無駄が多いようにも見えますが、逆にこれが新しい価値を生んできました。日本人にはもともと、そういう働きかけをする素養があるのだと思っています。しかしながら、最近はそういう動きが減ってきたように感じますが…。

諏訪「減ってきた」というのは、あまり周りに対して口を出さずに、マネージャーのもとで黙々と仕事をするタイプの人間が増えてきたということでしょうか?

杉山会社の人数が増え、役割分担が細分化されてきているので、自然とそうなってきたのでしょう。また、これまでは目指すべき目標も明確だったので、一つの役割に集中したほうが、様々な壁をブレークスルーしやすいと考え、会社としても、周りのことに口を出すことを要求してこなかった経緯があります。しかし、お客さんにとってそれが正しかったかどうかをあらためて考えると、決してそうとも言えません。価値があり、市場に貢献できる製品や商品を少しでも高い確率で世に送り出すためには、研究者がわざわざ周囲に口出ししてでも、多面的なモノの見方をすることのほうが求められ始めてきたからです。

諏訪一部の人だけがそういうことをできればいいのではなく、研究者一人一人が、より深い市場の情報をもとに、事業的なマインドを持って互いにインタラクションし合ったほうが、お客様の声を吸い上げ、効率的に研究を事業に結びつけられる、ということですね。

杉山まさに、そういう考えです。

 

差別化に向けたコア技術の強化
オープン・イノベーションの重要性

諏訪ここまでは「先を読む精度」を高めるために必要な3つの視点について、教えていただきました。お客様の所に赴いてニーズをつかみ、技術経営的な視点で5年~10年先の事業を考え、テーマを決めていくことの重要さがよくわかりました。
しかし、お客様の言うことをしっかり聞いて、技術経営の手法を忠実に実践すると、結局どこの会社も同じようなテーマ設定になってしまうのではないか、とも思うのですが…。

杉山他社との差別化を図るという意味において、テーマを選ぶ際は必ず「会社として適当なのか」という観点で見ています。そこで重要になるのが、「我々のコア技術がちゃんと生きているか」という客観的な視点を持つこと。これがないと、結局どの会社も似たようなテーマを選んでしまい、差別化することはできないからです。
確かに、ソリューションビジネスのように、お客さんの課題に対して、自社の技術に関係なく何でも集めて提供する、というビジネスモデルもあります。ですが、これは参入障壁がものすごく低いので、コニカミノルタとして世界で勝負できるかというと、決してそうではない。やはり、参入障壁を高く保つためには、我々の強みとするコア技術を最大限に活かし、世界トップクラスに高めることが、とても重要なのです。

諏訪冒頭で話していただいた技術戦略の「強い成長を推し進めるコア技術・基盤技術の融合化・複合化」に関わるお話ですね。もう少しお伺いできますか?

杉山ええ。コニカミノルタでは、材料、光学、微細加工、画像分野の4分野において、12のコア技術を定義づけしています。それらの多くは、フォトフィルムやカメラなど、過去の事業の中で培ってきた技術です。それはそれで歴史の古い技術なのですが、これらすべてが今の世の中でそのまま通用するわけではない。
しかし、技術の幅はかなり広いので、これらをベースにもう一段ブラッシュアップしたり、コア技術同士を融合させたり、技術を組み合わせることで、トップクラスの新しい技術をつくっていくことができると考えています。

諏訪つまり、「複合化・融合化」することで、他社から真似されにくいトップクラスの技術開発力を身に付け、新しい技術を創出できるということですね。

杉山そう。しかし、自社のコア技術だけをブラッシュアップして事業を見据えられるかというと、それだけでうまくいくような時代ではなくなってきた。
例えば、他社がしのぎを削って新しい材料を開発している状況で、昔から培ってきた自社の材料だけに頼っていても仕方がない。ですから、我々のコア技術と、外の技術を上手く組み合わせて、新しい領域に入っていくということがポイントだと思っています。

諏訪つまり、質的トップクラスの高度な技術を開発していくためにも、オープン・イノベーションが鍵を握っているということですね。

杉山そうです。目指すべき事業領域において、我々が持っている技術は何で、足りない技術は何かをじっくり見極め、不足している技術を外部からどう獲得していくかが重要なのです。つまり自前主義からの脱却が重要なポイントになります。

諏訪御社のオープン・イノベーションの浸透度合いはいかがでしょうか?

杉山「外から技術を持ってきて、自社のコア技術のレベルを向上させなくてはいけない」という意識はあります。実際にいくつかのテーマは動いていますが、事業化にまでは到っていない。まだまだ工夫が必要だと感じています。

諏訪どの辺りが難しいのでしょうか?

杉山「不足する技術を明確にする」という点が、特に難しいですね。
我々がこれから行こうとしている領域が、今まで足を踏み入れた経験のない領域だとすると、次に何をすべきか迷ってしまうことがあります。むやみに外部から技術を取り込んでも、「それで何を作るのか」という問いに答えられないので、やはり、目指すべきターゲットをより明確にしておく必要があるのです。その意味でも、お客さんについてもっと勉強し、創るべき価値をもう一段深堀していくことが必要だと考えています。

諏訪確かに、会社としてのターゲットが明確でないと、オープン・イノベーションを実践しても、協業・技術の実用化へとは進んでいかないですからね。

杉山しかし、ターゲットを明確にすることの難しさもあります。市場の動向を先読みしたとしても、従来通りの事業を行ってきた人間が、突然新しい領域の事業を想像できるかというと、そう容易ではありませんから。方向を決めて行く上でも、外部の知見をうまく活用していくということは必要だと思いますね。

諏訪外部の「知」の活用は、技術面だけではなく、方向を決める上でも重要だ、ということですね。

杉山事業面も含めてということです。

諏訪何か具体的に、事業の面で始めていることはありますか?

杉山新たな領域に行こうとする場合、その領域の専門家にコンサルティングを受けながら事業を進めるという活動を始めています。
我々の見ている視点とはかなり違う視点でモノを見てくれるので、先が読めないにしても、避けるべき注意点などを教えてもらうと、ある程度方向性が見えてきますし、仮説も立てられます。事業のインキュベーションは難しいので、技術に限らず、方針面でも第三者の知恵を取り入れることは重要です。

 

諏訪外部の視点が重要になる中で、今後、御社としてコラボレーションしたい領域はありますか?

杉山領域ではありませんが、これまでは日本人が主体となり研究開発を進めながら、事業を構築していくことが主でしたが、これからは海外の組織と協業することも必要だと考えています。
例えばアメリカでは、ICTが進んでいるので、その分野で我々の事業と結びつけて新しい価値が生み出せないかと考えています。ヨーロッパでも、例えばフランスは通信が強いなど、各国によって技術的な強みが異なります。医療の分野では、ある国で全然進められないことがシンガポールでは先進的に行われていたりする。各地域の技術的な強みと、我々の進むべき方向が合致すればいいわけで、そのようなグローバルな視点で開発を進めています。

諏訪おっしゃるように、技術は国の規制や方針、産業の競争力、著名な研究者がいるかどうかで大きく変わってくるため、ずいぶんと地域差がありますね。ある消費財のグローバルメーカーでは、国どころか「重要な技術の80%以上は世界の十数都市でカバーできる」かつ「地域ごとに強い技術がある」として、各地域で現地の中小企業や大学とのネットワークを強固にし、強化すべき技術領域をそれぞれ3~4ずつ定めていたりもします。米国でも、ボストン周辺とシリコンバレーでは、外部との提携によって注力する技術領域が異なるようですし。

杉山ええ。国ごとではなく地域単位ということですね。活動の規模的には小さいですが、考え方はうちも基本的に同じです。例えば、「健康」「安全・安心」の分野を伸ばすという意味では、漠然とアメリカであればどこでもいいということではない。例えば、南カリフォルニアのように、ハイテクヘルスケア関連の産業が活発なクラスターに注目することも大切だと思っています。そのようなR&Dとしてのアドバンテージがどこにあるかを探すことも、一つの重要な仕事だと思っていて、そうした強みを持つ地域には拠点を置き、他社に先駆けて一早くグローバルなR&Dネットワークを強めたいと考えています。

諏訪世界に拠点を置いて強化するのですね。

杉山海外の研究者が持っているセンスやモノの見方も、新しい事業を生む上で有益です。協業を通じてそうした新たな発想を取り込む、という意味では拠点も重要です。

諏訪技術だけでなく考え方までをも取り込む、ということですね。

杉山そうです。開発拠点の新設や設備の充実を計ることは、経営として難しい投資判断です。投資をしても成果がでるまでに時間がかかってしまいますし、成果が必ず出るという保証もありません。今の時代、定量的なインパクトの試算がより難しくなってきているのです。
一方で、今の事業は未来永劫続くわけではなく、やはりどこかで成熟から衰退の時期が訪れる。その時までに新たな事業を起こしていないと、会社は存続しません。今の事業に見切りをつけて新しい事業に進む判断を可能にするのは、やはり次の事業を生む研究開発なのです。
何もしなければ何も変わらないので、「新たな価値を創出する上ではこういう投資は不可欠」という、ある程度定性的な説明でも意思決定するのが、今日の技術経営のあるべき姿ではないでしょうか。
判断の成功率を高める上で、研究者には「事業化のマインド」や「周りへの口出し」を求めつつも、それを支えるマーケティング部隊の設置や開発拠点への投資の判断は、我々経営側がコミットする部分だと強く思っていますから。

諏訪本日は貴重なお話を、ありがとうございました。

杉山こちらこそ、ありがとうございました。

(2013年6月3日)
PROFILE: 杉山 高司(すぎやま たかし)

1974年 3月 東京工業大学理学部 卒業
1974年 4月 ミノルタカメラ株式会社 入社
2001年 4月 ミノルタ株式会社 第1開発センター長
2003年 10月 コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 取締役
2005年 4月 コニカミノルタホールディングス株式会社 執行役
コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 常務取締役
2009年 4月 コニカミノルタホールディングス株式会社 常務執行役
2011年 6月 同社 取締役 兼 常務執行役
2013年 4月 コニカミノルタ株式会社 取締役 兼 専務執行役(現任)