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「経営統合」により、技術・顧客から企業風土まで様々に異なる両社が、その強みを合わせて社会課題の解決に貢献していこうと変革していくプロセスを経験。この稀有なチャレンジを成し遂げ、メリットも可能性も体感している自分たちだからこそ、社内・社外の組織の垣根を越えた「共創」を推進し、持続可能な未来を切り開いていくことができると信じています。

株式会社レゾナック・ホールディングス 様

    • 研究開発企画部 R&D生産性向上グループ グループリーダー
      松田 和也 様
    • 研究開発企画部 R&D生産性向上グループ プロフェッショナル
      冨田 みゆき 様

− 御社は2023年1月に経営統合をされたばかりです。新会社は「化学の力で社会を変える」をパーパスに掲げていらっしゃいますね。その背景や経営統合の狙いを教えてください。

松田さん: 近年では、マイクロプラスチックや二酸化炭素排出など、「化学」の「負の側面」が大きな問題となっています。化学会社として「生み出すことが世の中のためになる」フェーズは終わり、その「負」をいかに回収するか、また、「負」を出さずに価値を生み出していくことが問われています。私たちは、化学にはそれを可能にする力もあるはずだと考えています。一方、社会の変化も激しい中で、一社だけで対応できることには限りがあるとも認識していました。そこで、パーパス「化学の力で社会を変える」を実現するために、私たちは「共創型化学会社」として社外のパートナーとも広く連携をして価値を生み出していくことを目指しているわけですが、昭和電工と旧・日立化成(2020年より昭和電工の子会社として昭和電工マテリアルズ)の経営統合自体が、まさに「共創」の象徴といえます。昭和電工は石油化学産業を起点とした素材技術に強い会社、昭和電工マテリアルズ、旧・日立化成は、電子材料や半導体分野などで素材を組み合わせてさらに革新的な素材を作ることが得意な会社です。また両社ともに、AIなどを使った計算科学にも強みをもっています。この「作る化学」「混ぜる化学」「考える化学」の3つの強みを融合することで、社会課題解決に大きく貢献できる力になると考えています。

− 経営統合について、現場でのチャレンジはどんなところにありましたか?乗り越えるためにどのような取り組みをされたのでしょうか?

松田さん: 業態が全く異なるということで、そもそも研究開発は言うに及ばず、品質保証や知的財産についての考え方など企業文化が異なっていた点ですね。さらに両社とも大きな会社でしたので、大勢の方々がいらっしゃるわけです。具体的な話になると「意見が合わない」といった声は当初よく聞かれました。

冨田さん:統合に取り組み始めた当初は、組織が一緒になっても文化的な融合はなかなか進まないということはあったようです。新型コロナウイルス感染症の影響で、拠点間移動に制限もあって対面での打ち合わせができず、業務上の話には支障はないけれど、メンバー同士なかなか腹を割った話をする機会がない、という状況も要因の一つだと考えています。

松田さん: 一つの打開策としては、これまで2年ほど継続して「社内でシナジーをつくりだそう」という目的でワーキンググループを動かし、両社出身のメンバーたちが意見を出し合い新しい研究開発テーマを検討する、という機会をつくってきました技術の話をするうちに、オープンな気持ちで相手の立場や気持ちを尊重しながら理解していくという雰囲気も醸成されてきたと感じています。

− 共創するために「お互いを尊重する」という姿勢は欠かせませんが、なかなか簡単なことではありませんよね。

松田さん: 当初より、経営統合をすること、より革新的な技術を生み出していくこと、という「共通のゴール」を皆が共有していたことは大きいですね。

冨田さん: 2社の統合によって社内でより広範囲なバリューチェーンをカバーすることになりました。お互いに「お客様」となる方の話をオープンに聞けるようになったことは、相手を尊重することのメリットとして理解しやすかったと思います。ワーキンググループでの議論も、前向きな内容になることが多かったです。実際、新しいテーマをつくるという成果に着実につながってきています。

−経営統合によるシナジー、今後想定していることを教えていただけますか?

冨田さん: 経営統合により、あらゆる方面で選択肢がとても増えた、という実感があります。2社ともに、もともとの強みや姿勢が異なります。例えば知財に関していえば「攻め」「守り」のどちらに強いのか、といったようなことです。目的は同じだけれどアプローチは異なる、というケースが各領域で起こっていますので、今後、それがよい結果となって現れてくると思っています。

松田さん: 経営統合の2年に及ぶプロセスの中で、お互いを尊重する意識がかなり育まれてきました。この「オープンマインド」な姿勢が、社内だけでなく社外の方々とも共創を目指していく時に大いに役立つはずです。統合を経験した我々だからこそできることが今後ますます出てくると信じています。

− 御社は社内ですでに共創が推進されているわけですが、社外との「オープンイノベーション」について取り組みのご状況を教えていただけますか?体制やプロセスはどのようになっているのでしょうか?

松田さん: 私たちのチームはオープンイノベーションを推進する専門部署としてCTO直下にあります。協業関係にあるベンチャー・キャピタルとともに、社内ニーズを把握して、社外の技術シーズとのマッチングを推進しています。ニーズはトップダウンのこともあれば、現場から上がってくることもあります。扱うテーマは既存事業の強化から新規事業の創出まで様々ですが、すべて直接CTOとやりとりをして進めており、非常にスピード感がありますね。意思決定も速いです。また、ナインシグマのサービスをはじめ社外技術の調査ツールなどは有償・無償ともにリスト化して、社内のイントラで公開し、各事業部が業務で使える仕組みになっています。私たちは、外部知見の活用について相談や問い合わせがあれば対応しますし、各サービスについて、それぞれの事業の目的や予算に応じた使い分けのアドバイスをしたりもします。

冨田さん: わたし自身感じていることですが、以前はオープンイノベーションというと、新規テーマ創出やM&Aに近いような大きなテーマを扱うもので、現場の研究者や担当者には直接関係がないようなイメージがありました。経営統合後、オープンイノベーションがより身近になり、「こういった技術を持っているところはないかな」と、それまでは自分たちで検索していたような「ちょっとしたこと」も、オープンイノベーション推進の仕組みに頼れる、活用できるという気づきがあったことは大きいですね。現場でそれぞれにウェブ検索やデータベース検索をしていても、時間はかかりますし、何よりキーワードの選び方など特定の視点からでは限界がありますから。

− オープンイノベーションへの取り組みの一つとして、貴社には「OI(オーアイ)基金」という予算枠があるとお伺いしました。どのようなものなのでしょうか?

松田さん: 「OI基金」は、旧・日立化成が2015年頃から運用していた制度です。予算化していなかったけれど面白いテーマが出てきた、という時に、次年度の予算編成を待つのではなく、ベンチャーと競えるスピード感で機動的にリソースを割り当てられるようにというのがそもそもの狙いです。今回、レゾナックでも全社で使える制度として継承されました。ちょうど先月社内にアナウンスしたばかりで、この積極的な利用を広めていくことも私たちの仕事ですね。

冨田さん: 似たような予算枠があっても、一般的には予算外申請となり、手続きも煩雑でハードルが高い場合が多いと思います。この「OI基金」は誰でもより使いやすいものになっていると思います。

松田さん: そうですね、提案金額ごとに決裁者は変わりますが、基本的にはCTOが判断し、迅速に進む仕組みになっています。

− 今回、横浜市にオープンイノベーション拠点「共創の舞台」を新設されました。ユニークな名称ですが、その由来や狙いを教えてください。

冨田さん: 「舞台」には「一人ひとりが主役ですよ」というメッセージが込められています。「共創型化学会社」として、多くの人が集まり、この場所が共創のハブとなっていくことを目指しています。メインとしてR&Dの長期的なパイプラインの創出という機能を持っていますが、施設内には研究開発部門だけでなく、計算科学や分析等の評価部門、プロセス工学・生産技術部門、安全性の管理評価ができる部門が一緒に在籍していて、研究がまだ「種」の段階からこれらの部門と共同してプロジェクトを進め、開発テーマの事業化への加速を目指しています。また、そのために社内の他の拠点や社外とも広くコミュニケーションを図っています。

− 今後、社外のパートナーとの共創をより積極的に生み出していかれるとのことですが、具体的にどのようなコラボレーションをイメージされていますか?

冨田さん: 従来からご一緒しているお客様とさらに多様なプロジェクトを進めていくことはもちろん、これまでお取引のなかった企業様や、地域の皆様とのコラボレーションも進めていきたいです。技術的なことだけでなく、様々な人が集まり、「共創の種」を見つけていく場となっていくことも「共創の舞台」の役割だからです。テーマとしてはやはり、サステナビリティ関連など、社会課題の解決に直接貢献するようなことを扱っていきたいですね。社会課題の解決は一社の力では不可能ですので、研究分野や業種の枠を超えた多様な人や技術の出会いを通じてこそ、イノベーションの実現に挑戦できると考えています。

− 社外パートナーとの連携を深めていくことについて、社内でどのように理解を得て、推進されていますでしょうか?

松田さん: 先日ナインシグマさんにもプレゼンテーションしていただいたように、外部知見の活用に明るい方々をお招きして講演会を行ったり、オープンイノベーションについての自前のe-learning教材で社内研修を実施したりしています。教材にはナインシグマさんからいただいたナレッジも活用していますよ。特に若手技術者をメインに参加や活用を促し、オープンイノベーションの意識を広げていくようにしています。

冨田さん: 技術者の月次会議などに私たちの部署からも参加をしたり、個別にヒアリング機会を設けてもらったりして、私たちの方からも積極的にオープンイノベーションでアプローチできそうな課題やテーマを探していますね。いつでも頼ってほしいと説明しています。

− 経営統合以前より、各社様でナインシグマのサービスをご利用いただいていますが、どのような部分でお役に立てていますでしょうか?今後への期待もあればぜひ教えてください。

松田さん: 私たちはライフサイエンスから電子材料まで幅広い分野を扱っていますが、ナインシグマにはどの分野の技術にも明るいコンサルタントがいて、まさに「かゆいところに手が届く」感覚で利用しています。利用場面としては、現場から用途探索についての相談がある時に、「とりあえずナインシグマに相談してみよう」ということで、私からお繋ぎすることが多いです。調査の方法について複数の選択肢を提案いただいて、その中から自分たちで選べるのが利用しやすいですね。

冨田さん: 私がナインシグマの利点として実感しているのは、予算も含めて、研究開発の現場の状況を理解し、提案してくれることです。また、研究者・技術者が、調査を通じて何を知りたいのかというニーズや課題意識を上手に引き出してくれるという安心感もあります。当事者ではない第三者目線でのアドバイスや伴走をこれからも期待しています。

松田さん: 「共創の舞台」はまさにオープンイノベーションのあり方を模索しているので、オープンイノベーションを支援されているナインシグマともコラボレーションできたらいいですね!

− 最後に、今後のオープンイノベーション推進の意気込みをお聞かせください

松田さん: 複雑化する社会課題の解決は一社では達成できませんし、何よりスピード感を持って挑戦していくためにも、ますます積極的に社外パートナーとの連携に目を向けていきたいです。まずは、経営統合を成し遂げ、事業領域も文化も異なる私たちがお互いを認め合うという精神やスキルを身につけたはずなので、2社間だけでなく社外とのパートナーシップにもつなげられるはずです。そのために、私たちのチームでできることはなんでもする覚悟です。

冨田さん: 社員たちが「自分だけでなんとかしよう」と思わずに、ナインシグマはじめ様々なステークホルダーと繋がって、色々な力を使って、スピード感をもって「良い事業」を生み出していけるよう、私自身はその種を見つけることにこれまで以上に貢献していきたいです。