オープンイノベーション推進者の役割 1.なぜ重要か?

オープンイノベーションは企業経営において、「するかしないか」の選択肢ではなく、「いかにうまく実践するか」が問われる段階に来ています。

オープンイノベーションで成果を上げるためには、「トップのコミットメント」、「優先度の高い重要なテーマでの実践」、「予算の確保」など、必要な要素はいくつもあります。しかし、「オープンイノベーション」という言葉が日本に入ってくる前の2003年から、800件以上のオープンイノベーションのプロジェクトを支援してきた経験と立場から見ると、オープンイノベーション推進者の果たす役割こそが最も重要であると断言できます。

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若手研究者にとって「オープンイノベーションにチャレンジすることはかっこいい」というイメージを作り上げ、一気に社内普及を実現させたオープンイノベーション推進者もいれば、これまで盛り上がってきた活動の息の根を止めるような「しているふり」が得意なオープンイノベーション推進者も目にしてきました。

 

なぜここまで、オープンイノベーション推進者の役割が、企業にとってのオープンイノベーション活動の成否を左右するのでしょうか? その最大の理由は、ほとんどの日本の企業の経営システムが、「既存の事業を効率的に回すことに最適化されている」ことにあると考えています。

既存の事業を効率的に回そうと考えると、事業方針と開発の在り方の関係を根本的に見直す必要はありません。大半が、気心の知れた既存のパートナーと開発を行いますので、今現在、無いものを見つける前提でテーマを考える必要も、付き合いのない相手と協業する必要もありません。それゆえに、新たに方針を立てる必要も、相手を探して選定する仕組みも、慣れない相手との契約や協業をサポートする仕組みも、そのようなことができる人を育てる仕組みさえも、そもそも存在しないのです。

そのような環境の中でも「できる人は、昔からオープンイノベーションを十分に実践できている」という意見もあります。それはそうでしょう。オープンイノベーションが実践できている人は、成果を上げるための臨機応変な対応力、つまり、ハッキリ言ってしまえば、そういった人たちには、社内ルールの拡大解釈力や、例外扱いの承認獲得力が備わっているのですから。しかし、そんな能力を持った人というのは社内でほんの一握りしかいません。それ以外の大多数の社内のルールにちゃんと従う優等生でも実践できるようにならないと、オープンイノベーションを活用した成果が会社として目に見えるレベルにまで上がっていかないのです。

 

オープンイノベーションの推進者には、まさに優等生でもちゃんと進めて成果をあげられるよう、新たに方針を立てたり、相手を探して選定する仕組みをつくったり、慣れない相手との契約や協業をサポートする仕組みをつくったり、また、その実践を、ロールモデルとなって支援する役割が求められているのです。

 

人の内的動機を診断し、仕事との適性を評価するサービスを提供するキャリパー社と米国ナインシグマが共同で約70人の「オープンイノベーション実践者」と「オープンイノベーション推進者」を対象に、“求められる資質”に関する調査を実施しました。その結果、実践者に求められる資質は「ビジネス的洞察力」、「成果に対するこだわり」、「計画・整理能力」(要は、やりたいことを強く意識し、その実現に向けてしっかり進められる力)といった、通常のプロジェクトで成功を収める上でも必要とされるものでした。
一方、推進者に関しては、「イノベーションビジョン構築力」、「変革のけん引力」、「社内コミュニケーション力」といった特殊な資質がより重要であることがわかりました。どのような役割を果たすために、このような資質が求められるのでしょうか?

 

次回以降、優れたオープンイノベーション活動を行っている国内企業8社の推進者や研究開発トップにヒアリングした結果見えてきた、「オープンイノベーション推進者」に求められる具体的な役割とその理由についてご紹介します。