成果を上げるオープンイノベーションの考え方(3):風土の変革 予算

オープンイノベーションの成功率を高める最大の鍵は、重要なテーマで実践すること、とお話しました。

企業のトップにこのお話をすると、多くの方が納得され、そのようなテーマでオープンイノベーションを実践したいと答えます。しかし、数か月後に実践状況を伺ってみる、かなりの割合で、「オープンイノベーションを活用する重要なテーマがなかった」という返事が返ってきます。

なぜそうなるのでしょうか? 理由はいたってシンプルです。オープンイノベーションの成功体験が乏しい企業や部門では、皆、自前(含む既存のパートナーとの協業)でできる範囲で目標設定をしているので、そもそも、新しいパートナーとのオープンイノベーションを必要としていないのです。さらに、オープンイノベーションの成功を収めるには重要なテーマで実施する必要がありますが、成功体験がなければ重要なテーマも出てこないのです。

一方、オープンイノベーションですでに成功体験がある企業はどうでしょうか? 成功体験の乏しい企業と比べて、自前だけではできない、魅力的なテーマがより多く生まれるようになります。それは、多くの研究者、技術者が「あいつが、すごいパートナーと組んで、すごいテーマを進めているらしいぞ。自分も考えてみよう!」、と普段から考え始めるからなのです。

つまり鍵となるのは、「成功体験そのもの」というよりは、普段から、「自前でできる範囲にとどまらないテーマを考えられる風土を如何に作るか」ということなのです。

さらに、社外のリソースを活用した、より魅力的なテーマを生む風土を築く重要な鍵は、成功体験以外に、「①予算」「②統一された目標・評価指標」「③マネジメントによるテーマデビュー方法の変更」の3つあると考えています。
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まず、今回は、「①予算」についてお話いたします。

ナインシグマのような技術仲介事業者を活用する予算も、できれば十分に確保いただきたいところです。「見つけられる可能性が高まる」、という期待感から、自前でできる範囲を超えたテーマは出やすくなります。

さらに重要なのが、「協業の予算」です。これが確保できるか不透明ですと、本人としても検討しにくいですし、予算を預かる部門のトップからのサポートも得られにくくなってしまいます。有望な協業相手を見つけたあと、「弊社の予算サイクルの都合で、スタートは来年4月まで待ってください。ちなみ3月末にならないと予算が下りるかわかりません。」と伝えれば、相手には「スピード感が無い」、「本気度が低い」と判断され、協業を辞退されてしまうリスクも高まります。

そこで有効となる方法が、期の途中で見つけたパートナーとの協業の予算を、予め企画部門・戦略部門がある程度プールしておくことです。大きな額である必要はありません。最初の協業フェーズの数か月でかかる費用は、せいぜい数百万円程度ですから、新たな協業先と組む魅力的なテーマを増やしたい件数分に数百万円を掛けた、数千万円もあれば十分です。

企画部門・戦略部門がプールする、という理由は2つです。全社的な視点から、より優先度の高い重要なテーマを選んで実施することが望ましいこと、そして、使途が予め決まっていない予算の確保は、そのような部門の方がしやすいためです。

初年度、期の途中からでも協業がスタートできれば、その実績をもとに、翌年度以降は現場部門でも予算確保がしやすくなります。このような仕組みがあると、真剣に考えるテーマリーダーが増えてくることは言うまでもありません。

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