NINESIGMA TOP > 研究開発TOPとの対談 > 第6回 三菱化学株式会社 執行役員 経営戦略部門長 浦田 尚男

三菱化学株式会社

執行役員 経営戦略部門長 浦田 尚男

「事業」「R&D」「知財」の連携。そして将来を担う新事業の種

諏訪開発までに「3年かかると思っていたところが、1年に短縮しなければならない」という時間軸に関する情報は、どの部署から入ってくるのですか?

浦田事業部から入ってきます。三菱化学では、「事業戦略」「R&D戦略」「知財戦略」の三位一体の運営を、戦略の一つに打ち出しています。事業のためにR&Dを行い、事業として実質的に実施することができるような「知財戦略」を立てることで、事業とR&Dの相互の知財がシンクロして動くことを目指しているからです。

諏訪事業とR&Dの連動は、すでに開発した材料を事業化するという短期的な視点においては、非常にイメージしやすいですよね。しかし、材料開発の視点で考えると、そううまくいかないようにも思えます。なぜなら、材料開発は、モノによっては5~10年くらいの時間が必要ですよね。事業はそんな先まで見通せないので、R&Dが先行すべきではないかと思うのですが、その点はどうお考えですか?

浦田確かに、研究をスタートさせ、研究開発が順調に進み、マーケットもあって、事業化して利益が得られるまでの期間を考えると、新しい事業に関しては、10年の時間軸が必要です。そのため、新事業に関しては、「APTSIS 10」という2008年5月に発表した経営戦略の中で、将来我々の収益となるような主力事業を育てるための創造事業として、「有機太陽電池」など7つの領域を明確にし、新しい技術を育ててまいりました。

諏訪さらに今では、「有機光半導体」「サステイナブルリソース」「次世代アグリビジネス」「高機能新素材」「ヘルスケアソリューション」を加えた6つの領域も重点領域として掲げていらっしゃいますね。創造事業はどのように選ばれたのですか?

浦田そこは経営として戦略的に「こういう事業を次の世代として打ち立てるぞ」とトップダウンで決めました。ただし、研究開発自体は、2008年より前からすでに進めていた領域の中から選んでおり、それを創造事業として方向付けていますが。

諏訪創造事業を支えるコア技術として、じっくりと育てるためですね。

浦田ええ。その目標に向かって、リソースを集中的にかけていこうと考えています。三菱ケミカルホールディングスの社長の小林が2005年にCTOに着任する以前は、研究テーマが山のようにありました。その状況を見て、あまりリソースを分散させるとどれもが大きく育たないのではないかと危惧した小林が、トップダウンで、打ち立てるべき事業を絞り込み、明確にしました。今でもその考えの下、研究開発は進められています。
だからといって、明確な事業ばかりに集中しているわけではなく、コーポレートとしては、研究者が主体となって、次の創造事業を担う新たな研究開発も同時に進めています。

諏訪その次、となると事業サイドの計画もまだイメージできていない段階で、時間軸を明確に設定するのは難しいように思えるのですが…。また、そのような新しい研究を見極める、判断基準はあるのですか?

浦田三菱ケミカルホールディングスが掲げる「Sustainability [Green](環境・資源)・Health(健康)・Comfort(快適)」の3つの判断基準に照らし合わせて、研究に取りかかるかどうかの判断をしています。我々としても判断基準が明確であれば、「これはきっとこんな用途で使用されるから、サステイナビリティの領域に当てはまる。だからこの研究を進めていこう」という、後押しにもなりますから。
そのため、研究開発の初期段階では、必ずこの判断基準を当てはめ、方向性にズレがないかを確認しています。
そうは言っても、マーケットが全く想像できない状況での判断は非常に難しいので、あらかじめ社外も含めた関係各位に、事前に相談してはいますが。

諏訪それは、今のお客さんも含めた社外ですか?

浦田そうです。「この材料を使うとこんな変化が起きるので、製品化するといいでしょ」という感じでね。初期段階なので、あくまで大まかな方向性だけではありますが、お客さんから多くのポジティブな反応をいただけると、今後の市場形成にも大いに期待できます。

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