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オープンイノベーション推進者の役割 2.方針の策定

オープンイノベーション
推進者

「オープンイノベーションは手段であるはずなのに、いつの間にか目的化している」

オープンイノベーション活動に関して、このような批判をときどき耳にします。「目的化している」と批判されるくらい熱心に進めていても、残念ながら、大抵このような会社はオープンイノベーション活動が成果につながりません。

一体、なぜでしょうか? 会社の経営計画とオープンイノベーション活動のつながりが見えないと、経営陣からの「オープンイノベーションをもっと実践すべき」の言葉にも本気度が伴わず、予算もあまりなく、プロジェクトリーダーからも、途中ではしごを外されかねない「あっても良い」程度の活動に見えてしまうからです。

 

オープンイノベーション推進者が最初に行うべき活動は、会社の経営計画を反映させたオープンイノベーションのビジョン・方針を策定し、それを経営陣に魅力的に伝え、経営陣からの賛同を得ることです。特に行うべきことは、会社の経営計画を実現する上で経営陣が必要と考えていることに対し、「開発を加速するためのオープンイノベーション」、「アイデア創出のためのオープンイノベーション」、「社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション」の3タイプのオープンイノベーションのどれがどういう形で、どのくらいの時間軸で貢献できるかを示すことです。このビジョン・方針は会社の経営方針や外的環境の変化を反映するものなので、毎年の見直しは必須です。

 

また、どの領域でオープンイノベーションを実践すべきかについて、具体的に合意することも重要です。例えば「環境」の領域でオープンイノベーションを実践するというのは範囲が広すぎで、ぼんやりとした印象を与えます。なぜなら、「環境」の領域の中に、これまで自社がコアとしていた領域が含まれているとすると、そこまで社外に求めて良いのだろうかという混乱が起こるからです。「環境×IoT」、「複合材料のリサイクル」など、もう1、2要素をプラスし、具体的な領域を提案して合意するのが効果的です。

 

契約や共同開発、量産にかかる期間を考慮すると、スタートから数年で売上の成果を求めるのは現実的ではありません。そこで、技術や製品開発のパイプラインにおけるシーズの件数の充実度で短期的な目標を立てることが有効です。これは、オープンイノベーション活動が、短期的に費用対効果を求めるべきものではなく、将来に対する投資であることを認めてもらうことに他なりません。これができれば、オープンイノベーション活動を実践する側にもプレッシャーを軽減させることができ、積極的な参加を促すことができます。

 

経営方針を反映させたオープンイノベーションのビジョン・方針を示すことができれば、オープンイノベーション活動の予算確保もしやすくなります。予算としては、目標を実現する上で必要な探索・調査費用だけでなく、期の途中から期末までの協業を実践するための費用を、オープンイノベーション推進の立場で確保しておくことが望ましいです。なぜなら、オープンイノベーションのプロジェクトを実践する部門では、来期の新しい相手との協業を前提とした予算をあらかじめ確保することは難しいからです。オープンイノベーション推進部門が初年度の協業予算を出してくれれば、協業実績ができますので、翌年度以降は現業部門で予算確保ができるようになります。

もう一つ、経営陣と合意しておきたいのが、自身(つまり、オープンイノベーション推進者)とオープンイノベーション実践者のパフォーマンスの評価方法です。オープンイノベーション活動の目標が合意できていれば、難しくはないはずです。注意すべき点があるとすると、オープンイノベーションは新しいことのチャレンジであり、現業を回すよりリスクが高いため、失敗に対する減点評価があると誰もチャレンジしたがりません。自身だけでなく後任の推進者や実践者のためにも、加点評価方式で合意することが重要になります。

 

他に、オープンイノベーション推進者の重要な役割として、「手段・プロセス構築」、「啓蒙・育成」、「実践支援」がありますので、次回以降でお話します。