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オープンイノベーションにおける情報開示の考え方

オープンイノベーション
技術募集

オープンイノベーションにより外部から技術やノウハウを求める際には、自社のニーズを明確に示す必要があります。その一方で、具体的なニーズを開示することにより、「自社の今後の研究開発の方向性を競合他社に知られてしまうのではないか」といった懸念を抱く企業も多くあります。このジレンマを解く鍵はどこにあるのでしょうか。

「情報開示」に対する日本企業の考え方

求めるニーズが革新的なほど、自社の戦略が漏れてしまうリスクに対する懸念が強くなる傾向にあります。また、それは欧米やアジア企業に比べて、特に日本ではニーズの開示に慎重な姿勢が見受けられます。

しかし、情報漏えいのリスクを必要以上に恐れて、あいまいなニーズしか提示しなかった場合にも同様にリスクがあると考えられます。

例えば、自らが技術やノウハウを提示する側に立った際に、相手の企業が何を求めているか分からない状態で協業することや、技術情報を提示することを前向きに検討することは難しいのではないかと思います。

また、弊社のプログラムを活用したパートナー探索では、社名を非開示とする場合が多いのですが、シーズを提供する側からすれば、相手が見えない状況なので、ニーズについてはきちんと具体的に示すことで相手の意欲を削がないようにしています。

 

「オープン・イノベーション」を武器にするためには

革新的な取り組みを知った競合他社が、後追いで研究開発を開始するリスク、またその企業におけるリソースが自社より上回っている場合などは、取り組みの開始時点では先行していても、最終的に追い越されてしまうリスクもあります。そういった場合において、オープン・イノベーションは、非常に有効な武器となると考えています。

オープン・イノベーションは、自社の技術力の向上・補完、事業ドメインの変革等をもたらすことにおいて有効な手段のひとつです。主なメリットとしては、研究開発のスピードアップにあると考えています。自社単独の取り組みでは、上記のようなリスクへの懸念からニーズをオープンにすることは難しいでしょう。しかし、オープン・イノベーションにより、最先端の技術を有するパートナーを見つけることができれば、仮に競合他社に塩を送ることになったとしても、大幅に先行して製品を上市することが可能となるのです。

オープン・イノベーションにより、競合他社を先行した事例としては、フィリップス社のノンフライヤーが挙げられます。こちらは、フィリップス社に持ち込まれた技術を自社技術と融合させることにより、製品上市までの時間を飛躍的に短縮できた事例です(弊社星野が執筆した「オープン・イノベーションの教科書」(ダイヤモンド社)にも紹介されているので、詳細について併せて参考にしていただきたい)。

「オープン・イノベーション」で最適なパートナーを探すためのコツ

例えば、製薬企業が糖尿病の革新的な新薬創出を目指している、食品企業が天然由来の成分でヒトの健康増進を目指している、自動車メーカーが熱効率の向上を目指しているといったものであれば、ニーズそのものではなく、内容の具体化が必要になります。自社の研究開発の方針、これまで検討してきた内容、そして自社の強みが最大限に生かせることがポイントです。

ニーズや要件の具体化だけではなく、パートナー候補となる組織の“やる気”に訴えかけて協業意思を高めるためには、パートナーが有していない技術的な強み、自社のチャンネルやネットワークの提供、さらには、金銭などのインセンティブを示すこともとても重要です。

自社だけでの取り組みで得られる成果が、線形的な発展に限られる以上、先行して革新的な製品を上市するためには、社外パートナーとの連携が不可欠となっています。最適なパートナーを選定するためには、技術を求める側にも本気の姿勢あるかどうかを確かめること、その1つがニーズなどの情報開示であると考えています。

 

DIsclosure form on typewriter

 

「情報開示」内容の程度は使い分ける

ここまで、情報開示の重要性を述べてきましたが、もちろん戦略上どうしても開示できない課題はあると思います。どのような内容であれば開示するのか、また非開示とするのかを使い分ける工夫が必要となってきます。オープンイノベーションの先進企業においては、その使い分けを非常にうまく実施しています。

例えば、業界共通の課題や社会的課題であり、自社のPRに有用であれば社名まで開示し、むしろ積極的に自社のオープンな姿勢をアピールしています。一方で、そのような会社も社内独自の具体的な課題の場合は、社名を非開示にし、その分技術的な課題を具体的に開示することで、有用なパートナーを効率的に探しています。

この使い分けも「オープンイノベーション」をうまく進めるためのコツだと考えます。