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アウトバウンド型オープンイノベーションの活動事例

オープンイノベーション

オープンイノベーションと聞くと、企業が研究・技術開発を進める際に、ミッシングピースとなっている部分を社外に求めるタイプのもの、いわゆる「インバウンド(技術探索)型」をイメージされる方が多いかもしれません。しかし、オープンイノベーションは、そのようなインバウンド型のみならず、逆に企業が保有する技術で、自社の既存のチャネルやビジネスモデルでは収益化が難しいものを社外に発信し、興味を持ってもらった先とともに追加開発を行い、収益化をめざしていくという際にも機能します。

ナインシグマでは、このようなタイプのオープンイノベーションを「アウトバウンド(技術提供)型」オープンイノベーションと呼び、技術の用途仮説検証に特化したプログラムを提供しております。

 

ナインシグマの提供するアウトバウンド型オープンイノベーションでは、「①企業が保有している技術を、自社の既存のネットワークを越えて社外に売り込むことで収益化できる」「②社外企業との連携により自社の技術に更なる価値の付加を行える可能性がある」という理由から、様々な相談が寄せられております。ただ、インバウトに比べて、アウトバンド型オープンイノベーションは成否の見通しを事前にすることが大変難しく、結果のぶれ幅も大きいものとなります。そのため、ナインシグマでは、対象技術が以下の要件を満たす限りにおいて、支援を請け負っております。

 

1. 用途仮説が明確であること(アイデアレベルでも可)

2. 他社技術と差別化できる競争優位点があること

3. 特許を取得しているなど権利化されており、広く世の中に公表できること

4. 自社技術の付加価値向上のため、社外企業との追加開発の要素があること

 

ここで最も重要な要件となるのは1「用途仮説が明確であること」です。

このように書くと、「用途仮説が最初から分かっていれば苦労しない」、「オープンイノベーションでは自社が思いもつかない用途仮説を特定してくれるのではないのか」という声が聞こえてきそうですが、実際のところ、アウトバウンド型オープンイノベーションはそのような万能なものではなく、①用途仮説の構築→②用途仮説に基づいたコンタクト先のピックアップ→③コンタクト先への売り込み→④コンタクト先からのフィードバック→①用途仮説の再構築→…という泥臭いプロセスを回すことで用途仮説を検証していくものとなっております。

用途仮説ですが、ここではアイデアベースのものでも構わないものです。

例えば「この材料は生体適合性とすべり性があるから、インプラントの医療機器の駆動部に使えるのではないか?」くらいで十分です。対象となる技術が、そのアイデアベースの用途仮説で本当に使えるものであれば、コンタクトした先から引き合いがあるでしょうし、逆に魅力的でなければ引き合いは全くないことになります。引き合いがなかった際は、また別の用途仮説を考え、コンタクトするという先述のプロセスを回すことで、対象となる技術と親和性が高い用途を探していくものとなっております。

もし自社だけでは用途仮説の構築が難しい場合には、様々な分野のクリエーターやエキスパートを加えたアイデアセッションも導入するので、そのようなセッションをファシリテートできる会社と一緒にやるというのも一案になると考えることができます。

 

Puzzle doors open to the dreamy clouds.

 

では、実際にナインシグマで取り扱った「アウトバウンド型オープンイノベーションの活動事例」をご紹介します。

対象となる技術は、大手化学メーカーが開発したプラスチック製の多孔質薄膜で、すでに電池用部材として採用実績があるものでしたが、その他の用途展開を行うべく、ナインシグマをご利用頂いたものです。

 

このアウトバウンド型オープンイノベーションにおいては、依頼主側が想定している用途仮説に基づき、ナインシグマがコンタクト先を1,000組織弱ピックアップし、実際にコンタクトを行ったころ、ポジティブなもの、ネガティブなもの含めて約100組織、割合として10%もの組織からフィードバックを頂くことができました。「10%」と聞くとそこまで多くないと思われる方もいるかもしれません。しかし、返答を得られる確率は、我々のこれまでの経験では5%未満であるため10%という値は非常に大きいものであることが分かって頂けるかと思います。

この事例を成功裏に完了できた理由としては、対象となる技術の競争優位性があったことはもちろん、依頼主側で非常に多くの用途仮説を考えて頂いたことにあると考えております。実際、このプラスチック製多孔質薄膜は選択透過や物質担持などの特徴を有しており、その特徴に基づいた用途仮説を10以上も出していただいております。

用途仮説の数が多ければ多いほど、当然コンタクト先も増えますし、また各用途仮説に対するコンタクト先からのフィードバックの濃淡も出て参ります。その結果、対象となる技術と親和性が高い用途が見つかりやすくなるのです。

実際、本事例においても、10以上の用途仮説のうち、特に2~3個のものに対してポジティブなフィードバックが多く、これらの用途仮説に関して市場の期待値が高いことが分かりました。一方、ネガティブなフィードバックにおいても、その中には、「この用途仮説に用いるには、この物性をこの値まで向上させないと使えない」という今後の開発を進めるに当たって有用なヒントとなるものも得られている、そういった点も興味深いものです。

 

この事例からも、アウトバウンド型オープンイノベーションにおいて、用途仮説の構築がいかに重要か分かって頂けるかと思います。ただ用途仮説が増えるとそれに伴うコンタクト先も増えていくため、自社だけではコンタクトしきれないというケースもあるでしょう。その場合は技術仲介業者を利用するというのも一つの方法であります。