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新しいオープンイノベーションの活用方法 ②社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション:  2.オープンイノベーションの形と実践方法

オープンイノベーション

前回、「社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション」という新しいタイプのオープンイノベーションが必要となってきている背景についてお話しました。

経済産業省は、このタイプのオープンイノベーションの目的を、「サービス・ソリューションの価値を最大化するための、多様なプレイヤーとの協調等によるビジネスモデルの構築」と定義しています。

例えば、自動運転で、自動車メーカーが別々に自動運転の機能を高めているうちは、もちろん、安全性や快適性は高まるかもしれませんが、燃費向上に関しては、多少エコドライブ度合が高められる価値にとどまります。しかし、路上のすべての車を最適に制御できるようになると渋滞が大幅に緩和でき、燃費向上の価値を最大化できます。

これを実現する上では、自動車同士を制御する仕組みを標準化する必要があります。しかし、このような「標準化のためのコンソーシアムなら従来からあるので目新しくもない」と思われるかもしれません。しかし、今日より強く求められているソリューションは、ビデオのエンコードの標準化のように、同業種で同様に技術を持っている企業同士が、互換性を高めるために行う活動よりはるかに複雑です。

それぞれの自動車にできる範囲で加速や減速をさせて渋滞回避を実現することは、エンジンやモーター、燃料やバッテリーの状況を把握して制御するセンサーやソフトウェアといった自動車に関わる技術だけでは、難しいのです。道路・インフラ側からの事故や工事など情報発信や、膨大なデータの信頼性高くやり取りする通信技術や最適解を導き出す人工知能など、必要となる技術やスキルが多岐にわたり、とても自動車メーカーの技術だけでは間に合いませんし、仮に自前で目指したとしたら成功率も下がってしまいます。

そこで、餅は餅屋ということで、求められる技術を開発するだけの実績やスキルのある組織同士がこれまでにない形で協力していく必要があるわけです。これまでにない新しい結びつきが生まれるわけで、これがまさにオープンイノベーションなのです。

このような大がかりな「社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション」は国主導で行われることも多くあります。この場合、標準を築きやすい一方で、特に日本は、各業種、必ずと言っていいほど有力企業が複数あるため、各社が、何をブラックボックス化し、何を共同開発するか、という「オープンクローズ戦略」を明確化したうえで参加しないと、同業他社同士がけん制してしまう難しさがあります。

最近では、所謂「国プロ」でも、協創領域と競争領域を明確にした上で、競合同士が組んで協創領域での開発を行う提案をしないと採用されにくくなりました。従来からのコンポーネントレベルでの協創であれば、学会などで知り合いになっているので組みやすいですが、ソリューションとなると、直接のつての無い異業種の企業にも参加してもらって連携を組む必要があるので、一緒に提案する相手を見つけるの容易ではなくなってきています。

業界リーダーの大手企業同士で垂直連携の骨格を形成した上で、他の組織を巻き込む進め方は、それぞれの会社にとっての競争優位の源泉にできるため力を入れやすいものです。その一方で、それぞれの思惑もあるため、ビジョンと目的をしっかり合意することが不可欠なうえ、後の競合他社の巻き込みが難しい、という課題もあります。

いずれにせよ見落とされがちなのは、大手企業が複数社集まっても万能ではなく、「時間をかければできなくはないが、得意ではない」「担当部門はあるが、分野のトップとは言いがたい」という領域が多数出てくることです。担当する人材がいるからその企業が行う、というスタンスでは到底、高いレベルのソリューションは実現できないですし、遅れにもつながります。

そこで、主要企業が骨格を形成したうえで、冷静に、技術・スキルの弱いところを見極め、そこにピンポイントで強い組織を巻き込むことが不可欠になります。本気でベストを目指すのであれば巻き込む相手は国内に固執すべきではないことは言うまでもないでしょう。

例えば、DTEエナジー・デンソー・Wells Fargoは、スマートシティーのプロジェクトを進める上で、イノベーションコンテストを開催し、スマートパーキングやスマートインフラといった自分たちではカバーしきれない領域でのコンテストを行い、優れた技術やアイデアを持った仲間を世界中から集める活動を行っています。

より大がかりなシステム・ソリューションの構築に海外各国、グローバル大手が邁進する中、数あるコンポーネント供給者の一社として振り回されないためには、世の中の「社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション」の動きを見据えることが大切です。その上で、オープンクローズ戦略を錬り、待ちの姿勢ではなく、自ら積極的に乗り込み、周囲を、仲間を巻き込んでいく必要があります。

しかし、戦う上での自社の強みがまだ明確でない場合には、先に、「アイデアを発想するためのオープンイノベーション」ですべきことを明確にし、「開発を加速するためのオープンイノベーション」を通じて早期に強みを築くことが必要かもしれません。

(ナインシグマは「コンテスト」プログラムで、主要企業が弱い分野の仲間を集める支援を行っています。 また、国プロで大規模なプロジェクトを共同で提案するパートナーを探している場合もご相談ください。)