開発のための社外技術調査のすすめ【後編】

前回に続き、簡易な技術調査の手法と、社外技術の導入を前提とした手法をメーカーの開発担当者が実施する意義について解説します。この簡易な調査は、ナインシグマの「テクノロジーサーチ」というグローバルな技術公募サービスの前に実施されるものです。

社外技術の活用を前提とする調査において、メーカーの開発担当者の方に意識して頂きたいと考えるポイントは2つあります。前編では1つ目のポイント“深入りしない”点を紹介しました。

後編では2つ目のポイントをご紹介いたします。

社外技術調査のポイント2:要件を緩和する

第2のポイントは、技術を要素分解し、必要に応じて要件を緩和し、キーワードを変えながら、適用の可能性のある技術を探ることです。このような調べ方には2つのメリットがあります。

 

要件を緩和するメリット

1:有用な類似技術や異分野技術が見つかる可能性が高まる

2:要件を緩和しながら試していく過程で、適切なキーワードが見つかり、

 本命技術の解決の糸口が見える場合がある

 

要素分解によって具体的に何をするか、例を挙げてご説明しましょう。

 

「CVD合成における窒化ホウ素ナノチューブ(BNNT)の直径制御」というテーマがあったとします。この場合、①BNNT×②CVD合成×③直径制御という要素分解が可能です。

最初に求める技術そのものを調べ、この①~③のすべてにあてはまる事例がなかった場合、そのいずれかの要件を外すか緩和します。例えば、②を外して「合成法に拘わらず、BNNTの直径制御を行う技術」や①の元素(窒化ホウ素)の制限を緩めて「CVD合成によるナノチューブの直径制御を行う技術」で探します。

すると本命の「BNNTの直径制御」という技術はみつからなくても、「カーボンナノチューブの直径制御」の技術がみつかったとすれば、この技術の応用による本命の技術課題の解決の可能性が見えてきます。

 

要素分解を試しながらの探索による第二のメリットは、その過程で適切な検索キーワードがみつかり、結果的に本命を掘り当てられる可能性があることです。前述の例でいえば、「ナノチューブの直径制御」という調査を行っている過程で、カーボンナノチューブの分野で「触媒の制御」がキーワードとして重要だということがわかれば、それを新たな軸として調べることで、本命のBNNT関連で近い技術が出てくるといった場合があります。全ての要件を満たす技術だけを探している場合でも、一度条件を緩和して探してみると、回り道をして本命の技術に近づける可能性があるのです。

 

このほか、同じ概念を検索しているつもりでも、用いる表現方法(キーワード)によって探索できる技術も異なります。調べていくにつれて分野特有、英語特有の表現があることがわかるので、そのような種々の検索キーワードを試しつつ、開発の背景の把握や部分的な要件緩和を行いながら技術分野を模索していくことをお勧めします。

 

あるインフラ系業界のお客様の課題では、本命の技術は存在しないという前提で公募のための予備調査を行いました。調査を始めた当初は、「やはりなさそうだ」という感触でしたが、その過程で見つかる色々なキーワードを試していった結果、実は本命の技術がすでに海外に存在していることがわかりました。本命の技術が存在していても、適切なキーワードで調べなかった場合には見つけられないことがあるのです。

なお、テーマや前提条件によっては、要素分解が難しい場合があります。要素分解がほとんどできないか、一部の要素の条件緩和をしようとすると、あまりにも一般的で参考にならなくなるようなケースです。こうしたテーマの場合は、本命の技術をそのまま探すしかないでしょう。

 

探索対象とするテーマは「あれば儲けもの」

 

以上が、私が社外技術の簡易調査に関して意識している2つのポイントです。一言で言えば「広めに見る」ということになると思います。

このコラムをきっかけとして、ご関心のある開発テーマの1つについて社外技術調査を試してみて頂ければ幸いです。ひとつの開発テーマといっても、探索対象とすべき具体的な技術の候補は複数考えられます。頭に浮かんだ製品設計のコア技術や、周辺技術、生産技術などの中で「このような技術があれば画期的だが、おそらくないだろう」と思っていてあまり探索してこなかった技術について、「あれば儲けもの」という気持ちで試して頂きたいと思います。

 

一方、今回の公知情報に基づく簡易的な調査だけでは、当然、具体的な有望技術が特定できないケースも多々あります。このようなとき、課題によっては技術公募が非常に有効です。

 

例えば以下のようなケースなどは、技術公募が課題解決の上で有効な手法になる可能性があります。

「ピンポイントでそのものの技術はみつからないが、使えそうな技術はどこかにありそう」

「研究分野が広すぎてパートナーの選定に手間がかかる」

「公知文献からは、自社の技術公募への有効性が判断できない」

「この分野の研究者であれば、よい解決策を知っている人がいそうだが、特定できない」

なぜなら技術公募では、依頼主企業が提示した特有の課題に対して、複数の具体的な技術提案を比較し、その中から最も好ましいパートナーを選ぶことができるからです。ナインシグマ独自の大規模な研究者データベースを活用した技術公募により、技術課題の解決パートナーのグローバル探索をお手伝いいたします。お気軽にお問合せください。

 

Working on steps shaped jigsaw puzzle. Drawing up arrow on blackboard.

おわりに:社外技術活用も開発手段のひとつ

2回のコラムを通じて、社外技術活用を前提とした調査方法の例をご紹介してきました。この手法は特別に難しいことではありません。しかし、お客様がみつけられなかった技術が、このような調査手法で実際に発見できたケースがあることも事実です。そのようなケースでは、社外技術が視野に入っていなかったか、「そんな技術があれば社内の同僚や競合企業が知っているだろうから、探しても無駄だ」 などと考えて、それほど粘り強く探索してこなかったのではないかと考えています。そのような場合は、一定の時間を使って「社外技術活用を前提とする」という視点から調査を実施することによって、新しい発見や気づきが得られる可能性があります。

 

一般的には、開発担当者の主な任務は、実験などで独自の技術を完成させることです。一方、NIH(not invented here)症候群という言葉があるように、自前の技術に対して必要以上にこだわりすぎてしまうケースもあります。

 

開発担当者が社外技術を積極的に使うことは、決して怠慢ではありません。むしろ、あらゆる手段を視野に入れて、より速くより良いものを作ることが開発担当者の使命です。よい技術アイデアについては、ベストなアプローチをとるため、自前の技術にこだわるだけではなく、社外技術活用の可能性も模索することが重要ではないでしょうか。