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オープンイノベーション実践者との対談(第13回)
住友ベークライト株式会社
常務執行役員 研究開発本部長
朝隈 純俊

半導体封止剤で世界一のシェアを誇り、プラスチックのパイオニアとして世界に躍進する「住友ベークライト」。
プラスチック総合メーカーとして、半導体や電子部品、自動車、医療、包装などプラスチック製品を製造・開発する同社で、常務執行役員を務める朝隈純俊氏に、R&Dの取り組みについて伺いました。

目指すのは研究所の体制強化
新規事業の創出を担う「25年活動」

諏訪今年(2014年)の1月の化学工業日報の紙面に、朝隈さんのコメントが掲載されていましたね。記事は、住友ベークライトの売上高3000億円を目指すにあたって、新規事業の売上比率をこれまでの20%から50%へと引き上げるという内容でしたが、この点について詳しくお聞かせください。

朝隈はい。現在、当社の年間売上高は約2000億円です。新規事業とは、既存技術をベースにした新分野・新領域への事業展開や、既存事業領域での新製品投入も含めた事業拡大を念頭にしていますが、それらの売上比率を50%まで引き上げるとなると、新たに1000億円規模の新規事業を創出しないといけません。

諏訪1000億円規模を新たに生み出すのは、非常にアグレッシブな目標にも思えますが、R&Dの果たす役割も自然と重要になってきますね?

朝隈ええ。当然、研究体制の強化は欠かせません。住友ベークライトでは、各事業部が研究開発から製造、マーケティング、営業全てを行っています。さらに、事業部の研究所とは別にコーポレートの研究部門を置くことで、研究体制の強化を図っています。

諏訪どのように研究体制を強化されているのですか?

朝隈事業部とコーポレートのそれぞれの研究所の役割を明確にすると同時に、事業部の研究部門とコーポレートの研究部門間の連携、連動性をもたせることによって、グループ全体としての研究開発機能の強化を進めています。

諏訪ではまず、事業部の研究所はどのような役割を担っているのですか?

朝隈基本的に事業部の研究所は実際に事業を行う部署なので、お客様への日々の対応から、次にリリースされる製品に対しての取り組みなど、比較的時間軸が短くて出口のはっきりとした開発を行っています。

諏訪既存製品の改良が中心ですか?

朝隈改良的な要素もありますが、既存品の改良は、基本的には工場の製造技術部門が担当しますので、研究所ではあくまでも新製品の開発という役割ですね。ただ、どのような材料が適しているのか試行錯誤をくり返しながら進めるというよりは、あらかじめ目標となる材料の特性(製品設計)や顧客における事業計画がすでに明確になっているケースが多いので、やるべきことを納期通りにやり遂げる、という仕事に重点がおかれます。

諏訪では、コーポレートの研究所ではどのような研究をなさっているのですか?

朝隈コーポレートの研究所は事業部とは異なり、新たな顧客を開拓して市場を作り出すことが多いため、どういった特性の材料を探して開発すればよいのか、最初は明確になっていないことも多く、少し長いスパンでの研究になります。

諏訪それぞれの役割が、最初からはっきりと異なりますね。そうした役割の違いは研究所間でも共有されているのですか?

朝隈ええ、もちろん。研究所自体それほど大きな規模ではありませんが、これまで、研究所間のコミュニケーションがあまり十分ではありませんでした。同じような内容の研究をお互いよく知らずに進めていたこともありましたから。

諏訪そうした背景もあって、各研究所の役割を明確にしたのですね?

朝隈はい。最近、経営的に研究成果が見えにくいと感じることがありましたから、体制も含めて目的・目標をはっきりさせることが狙いでした。また、事業部研究所間、事業部研究所とコーポレート研究所間の連携や、技術開発から製品開発までの連続性、さらに、解析技術などの支援研究との連動性を、より深める取組みにもかなり力を入れて取り組んでいます。

諏訪そうはいっても、ニーズがはっきりしている場合であれば目標や目的は明確ですが、コーポレートの研究はそもそもテーマ自体をどう設定するのか、他社も含め頭を悩ませることが多いと伺います。将来のテーマ設定などはどのように行っているのですか?

朝隈いろいろな取り組みをしておりますが、中でも大きな一つが「25年後先の世界をイメージする」という活動です。

諏訪それは、どういう活動ですか?

朝隈25年という年数にあまり根拠はないのですが、私が入社して、25年経ったということもあって、「自分が会社に入社したころの社会や世の中はどんな時代だったのか?」それに対して「今はどう時代なのか?」といった議論をしています。今から25年前といえば、テレビは全てブラウン管でしたし、携帯電話や自動車電話も携帯するには程遠い大きさのものばかりでしたからね。

諏訪25年というスパンで見ても、技術が大きく変化をしていることが分かりますね。

朝隈ええ。次に25年前にこんな世の中になるということをどういう人が想像していたのかも考えてみます。

諏訪一部では、まるでSF世界のような進化を遂げた部分もありますね。

朝隈そこには若い社員も入り、逆にこの先1年〜25年先まで、どういう世界になっているのかを検討しています。言葉からすると今もあるのですが、ライフサイエンスやエネルギー、環境、人口がどのくらいになっているかといったことも、具体的なデータを算出し予想しています。

 

研究者の意識改革を促す
短期集中によるテーマの抽出

諏訪しかし、25年先となると、かなりふわふわとした話になりそうですが。

朝隈ええ。そこで、一気に25年先を考えて、いったん15年戻ってみるんです。今から10年先がどういう世界になっているのかをじっくり考えてみると、もう少し具体的な先の世界が見えてきます。

諏訪なるほど。25年先を考えずに10年後を考えてしまうと、ついつい今の延長で考えてしまうので、あえてストレッチした将来をイメージした上で、時間軸を戻して考えた方が良いということですね。

朝隈そうです。コーポレートの研究所では、こうした考え方をもとに様々なテーマを探索するチームを編成しています。10年先に実現したいテーマだからといって、10年かけてやればいいかというと決してそうではありません。逆に、3カ月くらいの短期間で10年先につながるいい発想やデータが出てくることもありますから。まずは、どんどんトライしようと思っています。

諏訪材料メーカーでR&Dを担当する役員の皆さんは口をそろえて、「新しい材料の開発にはとても時間がかかる」とおっしゃいます。実際に、着想からラボスケールの実証まで7、8年、そこから量産し、さらに大きな事業へと育つまでには10年かかると聞いておりましたから、将来テーマの検討も割とゆったりとしたペースで進めていらっしゃるのかと思っておりましたが、御社の場合は違うのですね。先は見据えつつも3カ月程度の短いサイクルで将来テーマを検討されているとは、驚きました。

朝隈研究者の意識変革も視野に入れ、あえて3カ月くらいの短いスパンで考えようと思っています。

諏訪先程、若手社員も参加されているとおっしゃいましたが、様々な年齢の混成チームですか?

朝隈特に人数は固定しないようにしていて、2人の場合や1人の場合もあります。

諏訪体制も固定せず、開発テーマまでを一気に進められるのですね。

朝隈フェーズとしては、正規の開発テーマになる前段階までですが。

諏訪前段階のテーマとなると、他社では空いた時間を使って細々と検討することが多いと聞きますから、かえって時間がかかるように感じていました。むしろ集中的に検討することで、ある程度の段階まで一気につめていくのですね。

朝隈ええ。他社では、労働時間の内10%とか15%というルールを設けて、いわゆるアングラ(アンダーグラウンド:正規テーマ化する前)テーマの検討を促進されているところもありますが、当社では研究所内にそうした機能を一部持たせています。

諏訪実際に、3カ月という短い期間で、前段階のテーマまで決まるような事例は出ていますか?

朝隈数はかなりありますよ。要は新陳代謝といいますか、数多く挙がったテーマの中から、次のフェーズに進むテーマを引っ張り上げていこうというスタンスです。もちろん、そこで終わったテーマも無駄にすることなく、常にデータとして保存はしておきますが。

諏訪テーマを選んで引っ張り上げていく際、売上規模の目標が事前にあれば「実際にいくらの事業になるのか?」という視点を持つことができますね。一方で、規模を意識し過ぎることで、あの市場もこの市場も取り込めるようにと考えてしまい、かえってぼやけた、中途半端なテーマになってしまうリスクもあるかと思います。また、3カ月という短期の検討となると、市場の数字にばかり時間を割いてしまっても、逆に意味がないように思うのですが、そうしたバランスはどのように見ていますか?

朝隈もちろんテーマのフェーズを上げていく段階で、どういう条件を満たすべきかは事前に決めています。しかし、たとえ100億円の規模であっても、この段階ではまだ誰も正しいとも間違っているとも断言することはできません。なので、最初の段階では、数字はあまり意識せず、むしろ自由にやっています。

諏訪まずは自由な発想の下で、テーマを出していくことを第一に考えるのですね。

朝隈ええ。今後、5年、10年、そして25年先にどんなものが生まれてくるか分かりませんが、一部のリソースでは将来のビジョンや夢についても自由に考えてもらっています。 これまで、住友ベークライトではあまりできてこなかったことですが。

 

究極のCSと多層的な関係強化で
顧客の見えないニーズを掘り起こす

諏訪将来のテーマを短期で探索するなどの取り組みを始めたきっかけは、現状に問題意識をお持ちだったからですか?

朝隈確かに、世の中の変化に対して、我々がうまく順応できていないな・・・という危機意識は、以前から抱いていました。私が入社した1985年ごろまでは、電電公社や国鉄からいろいろと仕事をいただいていて、「こういうモノを作れば幾らぐらいで買ってくれる」ということが事前に分かっていました。当時の我々の仕事は、「顧客の要求にいかに応えるか」が使命のようなものでしたから。しかし、85年に電電公社が、87年に国鉄が民営化し、NTT、JRになり自由化が進んだことで、より競争は激しくなりました。これまでのようなスタイルが通用しなくなったのです。

諏訪次の課題を自分たちで見つけていかなければならなくなったのですね?

朝隈ええ。会社としては、そういう変革を経験しながら今に至っているのですが、その時代を経験していないはずの今の若い社員までが、それまでの会社のカラーや姿勢、考え方に染まっていることに気付いたのです。

諏訪それは、お客様のニーズに対応さえしていればいいという以前の考えですね?

朝隈そう。我が社は自分達で新しいテーマを見つけ出す力が他社に比べて弱いのではないか、もっと強化すべきではないかと・・・。

諏訪つまり、お客様にきちんと向き合えていないということですね?

朝隈ええ。研究について議論する時に考えるCS(Customer Satisfaction:顧客満足)も、顧客の要求をただ単に満たしておけばいいのではなくて、顧客が誰で何を求めているのかという、「究極的なCS」を意識することが重要です。そうしたプロセスをきちんと経ることができれば、顧客も気付かないようなニーズにまで踏み込むことができますから。そうするとお客様からは、「そこまで考えが及んでいなかったけれど、そういうことまで考えてやってくれるのは非常に嬉しい」と感謝していただける。今はそのような意識で、お客様と向き合っています。

諏訪お客様も気付いていないニーズを掘り起こすための一つの方法が、先に述べられた「25年先から考える」という取り組みなんですね。

朝隈ええ、まさにその通りです。

諏訪しかし、これまであまり経験されてこなかった考え方や活動となると、研究者にとっては慣れていない分、生みの苦しみを経験されることも多いのではありませんか?

朝隈そのため、「マーケティングはどのように行うべきか」「お客様からの真のニーズや、お客様のおっしゃる言葉の裏にある真意をつかむには、どんな振る舞いをすべきか」といったテーマで社内研修を行うなどして、各研究者の理解を深めています。

諏訪そうはいっても、簡単なことではないですよね?

朝隈ええ。研修などのトレーニングで簡単に身に付くものではありませんから、実践的な活動も行っています。

諏訪どういった活動ですか?

朝隈ある特定の顧客を重要顧客と定め、一つの製品開発だけでなく、会社対会社の関係を深めながら、お客さんが求めているもの全てを我々で請け負う、という取り組みです。

諏訪実際のお客様との関わりを通して実践的に学んでいるわけですね?

朝隈ええ。我々は「階層別」と呼んでいますが、社長同士、担当役員同士、研究所長同士、研究開発の担当者同士それぞれの階層で、多層的な関係の構築を目指しています。

諏訪それは、全社的な取り組みですか?

朝隈はい。例えば、電子材料関連などは、他の事業部を巻き込んだ活動が欠かせません。その部門だけで解決できることではないので、よりお客さんのニーズを意識するように努めています。こうした取り組みを開始してすでに何年か経ちますが、徐々に社員の気持ちにも変化が生まれ、取り組みが実を結んでいます。

諏訪なるほど。できることの範囲が狭いと境界を越えた途端、思考停止に陥ってしまいますが、全社をあげてお客様のニーズを引き出すという、共通の認識を研究者全員が持っていれば、お客様のこともより深く理解することができますね。

朝隈ええ。信頼関係も深まっているように感じます。例えば、我々の提案に対して、お客様からも「そういうことができるのであれば、こういうことはどうですか」と逆にご相談いただけるようになっていて。良い循環が生まれ始めていますよ。

諏訪そうしたお客様は、海外の企業ですか?

朝隈今はまだ国内が中心です。当社の売上構成比からすると約半分は海外の企業ですから、将来的には海外のお客様ともこうした良い関係を築いていきたいですね。

 

オープン・イノベーションで「自前主義」からの脱却を目指す

諏訪今年1月の化学工業日報のインタビューで、「最近は自社だけでは解決できない課題が増えており、オープン・イノベーションが基本的な方針になっている」とありました。御社では、オープン・イノベーションをどう位置付け、今後どのように推進されていくのか教えてください。

朝隈社内でオープン・イノベーションという言葉を使い始めたのは、5、6年くらい前からだと思います。

諏訪日本の企業の中では、早い方ですね。

朝隈はい。社外の技術を取り込み、我々の技術と組み合わせることで、お客様のニーズにより深く応えていけるという考えから、研究方針の中でもあえて「自前主義からの脱却」を掲げています。

諏訪オープン・イノベーションを積極的に進めていくお考えですね。

朝隈ええ、その方針です。

諏訪オープン・イノベーションを成功させるには、何でもかんでも外に求めるのではなく、「自分たちのコア技術(強み)は何で、それをどのように伸ばしていくか」といった考えをもとに進めることがとても重要だと考えています。

朝隈今の立場になり、研究部門の人と話しをする中で、うちのコア技術について突き詰めていくと、いろいろと曖昧さを含んでいることが分かってきました。高分子設計や複合化技術といっても数ある中で、何がうちの強みなのかをしっかり理解した上でその技術を誇るのであれば問題ないのですが、自社の強みが曖昧だと逆に混乱を招いてしまいます。

諏訪「一橋ビジネスレビュー」(東洋経済新報社刊)のオープン・イノベーションの特集で、米倉先生と清水先生が、オープン・イノベーションを進めるメリットの一つに、「自社のコア技術の棚卸が進む」という点を挙げられていました。御社はまさにコア技術の選択と集中を進めているといってもいいかもしれませんね。

朝隈ええ。我々の強みを明確にするためにも、あらためて会社とコア技術とは何か、再規定が必要だと考えています。

諏訪化学や材料メーカーの皆様は、材料そのものを強みに事業をされているので、外部から取り込む技術はプロセス技術や検査技術の場合が多い、というのが我々の理解ですが、御社の場合、社外から技術を取り込んで強化したい技術領域はありますか?

朝隈当社は化学のメーカーですが、あくまでルーツはフェノール樹脂です。フェノール樹脂は自分たちでいろいろな反応を含めて重合していますが、例えばポリエチレンやポリアミドといった他の材料は、他から樹脂を買ってきて、社内でコンパウンディング(配合)したり成型加工をしたりしています。これまではただ買ってくれば良かったのですが、やはり元の素材の性能が最終製品の性能をかなり左右するので、ゆくゆくは自前で素材を持たなければならないという思いは以前からありました。そのため、プロセス技術や検査技術だけでなく、材料のベース技術の強化も視野に入れています。これまでも、新しい樹脂のベース技術を持った企業を買収したり、独占的な実施権を獲得するなどしてきましたから。

諏訪れは、多様なお客様のニーズに対応する上で、さらに選択肢を広げたいという意味ですか?

朝隈そうです。今も新しいベースの材料技術を探索しています。

諏訪今後、さらに広げたい領域はありますか。

朝隈今年(2014年)の6月に航空機の内装部品を製造し、航空会社に直接納めるTier 1(一次サプライヤー)のポジションにあるアメリカの会社を買収しました。その会社は、我々が今持っている素材だけではなく、もう少し加工度を上げた、より川下に近い製品を作っている会社です。

諏訪つまり、川下の加工度を上げる技術も必要になってくるのですね?

朝隈ええ。そうなると当然、川上の素材技術も高めていかなければなりませんから、両方の技術が必要です。

諏訪この対談の読者の中には、就職先を検討している学生や転職を考えている研究者も多くいます。「こんな人に興味を持ってもらいたい」もしくは「どういう準備をして臨んでもらいたい」など応募者に対して何かご意見やアドバイスはありますか?

朝隈研究の仕事はまず好奇心を持って何でもやってみようと思う人が向いていると感じます。住友ベークライトではこれまで、与えられたことをしっかり進めることを得意とするタイプの方が多く集まる傾向にありました。しかし、今後の研究者には、もっと視野を外に向けて研究に取り組んでほしいと思っています。

諏訪外に視野を広げることは、競合の動きをより早く察知することにもつながりますからね。

朝隈ええ。特に研究においてこれまでは、具体的な開発目標があって、競合がどこでどういうものを持ってきているか、ある程度情報が入っていました。しかし最近では、そういう研究をしているところが世の中にあるのかどうかも、またたとえあったとしても相手がどのくらいのレベルに達しているのかも見えにくくなっています。 相手が見えなくなると、自分のやっていることは「すごい」と思えるのですが、逆に、一所懸命やっていても他との比較がない分、ペースが落ちてしまいがちです。 今の時代、スピードも求められるので、その意味でも視野を外に向けることはとても重要です。

諏訪25年先を考えつつも3カ月でとにかくいろいろやってみるというプログラムや、特定のお客様に対して全社的に提案する活動などは、視野を外に向けるという意味で有意義ですね。

朝隈ありがとうございます。これらの活動以外にも、製品開発を行う応用研究開発研究所ではすでに、研究者であっても、積極的にお客様のところに出向いて事前にニーズをつかむような取り組みも進めています。お客様のニーズをつかむとスピード感も把握でき、研究に対するモチベーションも維持できますから。

諏訪それは研究でも同じですか?

朝隈もちろん。研究に近いところでも、企業だけでなく大学を訪問するなど、自分でテーマを開拓する余地はあると思っています。「どんなことでも、やろうと思えば何だってできるんだ」という強い意志を持って取り組んでほしいですね。

諏訪強い志があればどんな状況においても解決を導く手助けとなってくれますからね。

朝隈ええ。研究開発は当たるかどうか誰にも分かりません。もちろんうまくいくことに越したことはないのですが、当然、途中で中断したり、場合によっては中止になってしまうこともあります。自分の手掛けるテーマが中止になると負い目を感じるのはよく分かりますが、そういうことにめげることなく、さらにもっと良いテーマを見つけてトライ&エラーをしながら進んでいくんだ、という強い意志も必要です。

諏訪前に向かって進む力と強い志が必要なんですね。

朝隈ええ。会社で行う研究ですから、当然、将来どういう形で事業を創造していくのかというビジネス的な位置付けを感じるセンスも必要です。そうした感覚を持ちながら、しっかり考え抜いて説明できるマーケティング的な視点も、研究者には持ってほしいと思います。私の役割は、そうした研究者が一人でも多く出てくるような組織や仕組みへ進化させることだと自負しております。

諏訪まさに、お話しいただいた御社の取り組みはその一環ですね。 本日はテーマ創出の新しい試みや求める人材像等、貴重なお話をありがとうございました。

朝隈こちらこそ、ありがとうございました。

(2014年10月9日)
PROFILE: 朝隈 純俊(あさくま すみとし)

1985年 3月 九州大学大学院工学研究科合成化学専攻修了
1985年4月 住友ベークライト入社
2002年11月 基礎研究所 研究部長
2010年6月 執行役員
2013年10月 研究開発本部長
2014年4月 常務執行役員