うまく社外の技術を見つける方法(3回目) 2.社外に求める技術の粒度感を調整する(その2)

前回、社外に技術を求める際は、求める技術の粒度感を調整する必要があるケースもあるとお話しました。今回は、そのまま社外に求めても競合他社しか解決策保有者にならないような技術課題(前回のコラムの③のケース)につきまして、課題の要素分解や、課題の置き換えについて説明いたします(1)

■技術課題の要素分解について

前回のコラムで、例えばある自動車関連メーカーが「運転手の眠気を検知する技術」をそのまま社外に求めても、出てくる組織としては同業他社とその周辺企業のみとなってしまう可能性が高いとお話しました。このようなケースでは、異分野組織との協業によるイノベーションは起こりにくいでしょう。これを打破するには、自社の技術課題の解決策保有者を、異分野の研究者・技術者まで広げられるよう、技術課題を要素分解することが必要になってきます。

この際のポイントとなるのが、自分たちが社外に求める技術、今回のケースでは運転手の眠気を検知する技術にはどのようなものがあるのかという、「アプローチの洗い出し」です(前々回のコラムの質問1に対する答えの幅出し)。

このケースで具体的に考えてみますと、運転手の眠気の兆候は、

①目の動き

②脳波の変化

③脈拍の変化

に表れると言われているため、これらの信号のいずれかを正確に測定できれば、「運転者の眠気を検知する」という元々の技術課題を達成できると考えられます。

たとえば、目の動きを捉えることで眠気を検知するという技術アプローチの場合は、昼夜問わず、また眼鏡の有無にかかわらず、運転者の目の動きを正確に捉えられる高性能なカメラや画像処理技術が必要になってきます。高感度カメラにおいては、セキュリティ用の認証カメラや、軍事用のモニタリングカメラなどを開発している組織が有望な技術を保有している可能性が高いですし、そこでとらえた目の動きを解析する技術としては、人間の表情を読み取ることを目的にしたマーケティング用やロボットのセンシング技術が有望な技術となり得ます。

脳波の変化で眠気を捉える場合も同様です。脳波測定は、医療、スポーツ、軍事と、多様な用途で研究されており、例えば、脳しんとうを起こしたスポーツ選手や、頭部を負傷した兵士の脳波を非接触で検査する技術などは海外で盛んに行なわれているため、それらの技術に期待することができます。

このように技術課題を要素分解することで、異分野にも解決策を求めることが可能になります。
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■技術課題の置き換えについて

異分野の研究者や技術者にも反応してもらえる技術課題の設計方法として、上記のような技術課題の要素分解以外にも、技術課題を別の課題に置き換えるというやり方も機能します。

例えばあるビールメーカーが、「喉越しの良いビールつくりたい」と考えているとします。その場合、そのまま社外に技術を求めますと、「ビールの喉越しを良くする技術募集」として世界中に発信することになりますが、そこで問題が生じます。「喉越し」という言葉や感覚は日本人特有のものであり、日本人以外はそれほど気にかけていないのです。「喉越し」に当たる英単語もありません。つまり、このまま募集をすると受け手の想像力に全面的に委ねることになります。国内の競合他社やそれらとの協業経験のある組織は手を挙げないとすると、手が挙ってきたとしても大きくズレが生じてしまい、課題解決の糸口さえつかめない、となりかねません。

このような場合、社外に求める技術課題に対して、「解決するためにはどのようにすればよいか」と繰り返し問い掛け、技術課題を置き換えるということが機能してきます。具体的なやり方は以下の通りです。

①「喉越しの良いビールつくりたい」、そのためには、喉越しの良さとはどのようなものなのかを科学的に解明する必要がある

②「喉越しの良さを科学的に解明する」、そのためには、ビールの物性値と人が喉で感じる感覚の相関を解明する必要がある

③「人が喉で感じる感覚とビール物性値の相関性を把握する」、そのためには、人がモノを飲み込んだ際に感じる喉の感覚を定量化できる技術が必要である

このようにアプローチを深堀していくことで、「喉越しの良いビールつくりたい」という技術課題を「人がモノを飲み込んだ際の喉の反応を評価する技術」へと置き換えることができます。置き換えた技術課題に対しては、例えば嚥下障害を持つ患者向けの製品開発を行っている組織などが有望な技術を保有している可能性があり、異分野の技術も対象に含めて、課題解決のアプローチを探ることが可能となります。

そのまま社外に求めてしまうと競合他社しか解決策保有者にならないような技術課題に対しては、このように技術課題を要素分解したり、また別の課題に置き換えることによって、解決策となり得る可能性のある技術アプローチの幅を広げられるようになります。その結果としてオープン・イノベーションを想定したパートナー探しが有意義なものとなるのです。ぜひ今回の事例などを参考に、皆様自身の課題の要素分解や別課題への置き換えを試してみてください。 11-3-240_F_55759592_am3AXe16MumuIahH3rpnvX8As22lKdXk

さて、次回は「うまく社外の技術を見つける方法」に関するコラムの最終回となりますが、「技術課題に合った探し方」についてお話します。

参考文献:(1)星野 達也, “オープン・イノベーションの教科書”, ダイヤモンド社, 2015年