新しいオープンイノベーションの活用方法 ②社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション: 1.必要となる背景 

80~90年代に世界を席巻で来た日本の電気メーカーが、なぜ、今、苦戦しているのでしょうか?

アップルがiPodで音楽業界に革命を起こした際には、デバイス技術もソフトウェア技術も音楽コンテンツさえも持っていたソニーに同じことができたはずだ、という声をよく耳にしました。しかし、実際には先を越されてしまいました。

日本の企業は、自社、自部門でできる範囲のことにコツコツと磨きをかけ、パフォーマンスを高め、コストを抑えていくのは得意です。しかし、すでに多くの分野で、その方法でできることの限界が見えています。

例えば自動車の燃費は、エンジンをより効率化し、車体を軽量化し、空力を最適化すれば、見かけのパフォーマンスは上がります。しかし、新興国で起こっている大渋滞においては、それらは大した意味を持ちません。 コンプレッサーや熱交換器を改良し、風を送る先を制御してエアコンの効率をあげるにしても、部屋ごとのエネルギー負荷がいきなり0から100%になる状況では効率向上には限界があります。モノづくりでも、工場のラインを改善し、ロボットを入れて自動化したところで、少量多品種生産に対応できなければ、工場自体の稼働率が上がらず生産コストは抑えられません。

しかし、すべての車が自動運転に対応できるようになると、事故は減り、不要なブレーキを回避することで渋滞は大きく緩和され、個別の車では実現できないレベルの実際の燃費向上につながります。家庭のエネルギー使用に関しても、部屋や家、多様なインフラがエネルギーの視点でつながったスマートハウスやスマートコミュニティー、スマートシティーができると、エネルギー負荷が平準化でき、蓄電池などの高価なインフラを共有できるので、エアコンなどの個別設備の改善よりはるかに高いエネルギー効率が実現できますし、コストも抑えられます。 工場も、機械同士、機械と人が協調するスマートファクトリーになれば、少量多品種生産に対応できるようになり、個別の機械の最適化ではできないコストダウンにつながります。

このような大きなシステム・ソリューションが実現できればユーザーの利便性の視点でも、地球環境の視点でも素晴らしいですが、企業にとっての競争環境はどう変わるのでしょうか?

例えば自動運転のシステムをウーバーやGoogleが作ったとします。すると、自動運転車やその車に使われているセンサーなどを作っている日本のメーカーは一コンポーネント提供者に過ぎなくなり、同じスペックのモノをいかに安く作るか、コスト競争に巻き込まれ、最終的には人件費の安い新興国の企業に負けてしまうかもしれません。 世の中に求められているニーズが、テレビなどの単品から、複雑なシステム、ソリューションになってきたにもかかわらず、コンポーネントの磨きあげにばかり注力し続け、ソリューションを築くスキルを高めてきていないことが、日本企業が苦戦している大きな背景ではないでしょうか?

政府の総合科学技術・イノベーション会議においても「日本は、ハードウェアコンポーネントは強いが、ソフトウェアコンポーネントを開発するとともに、それらをバリューチェーンとしてシステム化して事業価値を高めていく」必要性があると議論されています。しかし、今の世の中に強く求められている、自動運転、スマートコミュニティー、スマートファクトリーなどのシステムやソリューションを築く上では、必要となるテクノロジーやスキルが多岐にわたるため、一企業が単独で実現するのは非常に困難です。どう実現していけばよいのでしょうか?

この実現において、「開発を加速するためのオープンイノベーション」、「アイデアを発想するためのオープンイノベーション」に次ぐ第三のオープンイノベーション、「社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション」が重要な役割を果たします。

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次回、「社会実装・市場獲得のためのオープンイノベーション」とは何か、どのようなものがあるか、それらの成功の鍵は何か、をご紹介します。