オープンイノベーションの巧者

オープンイノベーションの先進企業はどこかと訊かれると、海外では「P&G」「フィリップス」「GE」など、国内では「大阪ガス」や「味の素」を挙げる人が多いのではないでしょうか。

ただ、90年代からシリコンバレーの技術へのアクセスを試みてきた日本の電機メーカーの名前が挙がってこないのはなぜでしょうか。自動車の完成品メーカーにとって国内海外問わず社外組織との共同開発は必然であるにも関わらず、彼らの名前が挙ってこないのはなぜなのでしょうか。本稿では、「オープンイノベーションの巧者」と呼ばれる企業に見られる特徴を眺めながら、その理由を考えてみたいと思います。

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① オープンイノベーションへの本気の姿勢を表明している

オープンイノベーションの先進企業と目される企業は、社長などのトップがコミットし、トップ自ら、あるいは、推進リーダーが、会社としてオープンイノベーションに本気であることを社内外に表明しています。元来、技術者・研究者は、自分でやることを好み、社外技術活用に抵抗感を持つことも少なくありません。先進企業は、そうした技術者・研究者の心を開き、社外技術活用に目を向けさせるよう手を尽くしています。その1つとして、社内外に対して本気度が表明されているようです。

② オープンイノベーションを戦略的手段と位置づけている

オープンイノベーションの先進企業は、オープンイノベーションを、社外技術をソーシングする戦術的手段にとどめることなく、新しい着想の獲得と研究開発効率の向上の戦略的活動と位置づけ、徹底的に社外技術を活用する体制に変革を図っています。
P&Gは、新製品の開発プロジェクトにおける社外技術活用プロジェクトの比率を2000年当時の15%から一気に50%まで高める目標を掲げ、その達成に向けた努力を通じて会社を変革していきました。フィリップスも、P&Gに倣い、新製品の差別化要素の50%を、これまで付き合いのなかった社外組織の技術を得て達成する目標を掲げ、オープンイノベーションに舵を切りました。

③ 自社開発のための情報収集でなく、協業先を求めて社外にアクセスする

オープンイノベーション型企業は、既に社外に類似技術があるなら、わざわざ自社で開発しようとはしない。ある程度できている技術が社外に存在するなら、その保有組織と協業し、自社技術を加えてプラスアルファを追求していきます。自社でもやればできそうだからとか、社外技術を超えるものを創りたいからという理由で一から自社開発しようと考えるのは、クローズドイノベーション的な考えである。自社でよりよいものを開発する目的で社外より広く情報収集するのは、オープンサーチではあるが、オープンイノベーションとは呼べません。

④ 社外技術の活用機会を広げるためのガイドラインを有している

オープンイノベーション型企業では、新製品や新技術の開発プロジェクトの企画時に、自社の既存ネットワークの内と外に関わらず、所望技術があるかどうか確認するステップを設けている。ある場合は活用し、ない場合は、自社で一定期間内に開発できそう判断した場合は自社単独でリスクを背負って開発する。見通しが不透明な場合は、社外技術の台頭を待つ、あるいは、社外とリスクをシェアして共同開発する、などといったガイドラインを有している。例えば、シスコシステムズ社では自社開発に踏み出すかどうかは、6ヶ月以内に開発できそうかどうかで決まってくるそうです。

⑤ 社外組織から組みたいと思ってもらえる強み・魅力を有している

オープンイノベーションの先進企業は、異分野・新規領域でのパートナーを得るために、自社の強みを掘り下げ、それらをどのように訴求するかに知恵を絞っています。ここと組めば、ハイリスクなプロジェクトに挑戦させてもらえる、荒削りな技術でも取り込んで磨いてもらえる、グローバル市場に展開してもらえる、などと認識してもらうことで、これまでつきあいのなかった組織に注目してもらえるよう努めています。長年のつきあいを通して気心の知れた社外組織に加え、これまで付き合いのなかった組織からも注目してもらい、仲間になってもらえるようアンテナを張り巡らせている。

上記特徴は日本の電機や自動車メーカーには必ずしもあてはまらないとの印象をえた方が多いのではないでしょうか。確かに、彼らにとって社外技術へのアクセス、社外の任意の組織からの売り込みは日常ゆえ、そうした姿勢をわざわざアピールしてこなかったという面はあると思います。しかし、それがすべてではなく、P&Gなどのような大胆なレベルまで、社外知の活用に踏み込めずにきてしまったためと推察します。社外の膨大なリソースを社内と適応的に組み合わせて活用する組織的能力を高めてきたオープンイノベーション型企業と伍していくには、彼らを真似て社外技術活用にもっと大胆に挑戦するのはもちろん、自社の技術やその他資産と組み合わせるからこそダントツな技術や製品を提供できる組織能力に磨きをかけ、社内外にアピールしていく姿勢が求められるのではないでしょうか。