「オープンイノベーション」とは何か

ここ数年、「オープンイノベーション」という言葉をよく耳にするようになったのではないでしょうか。

しかし、グローバルな視点からみると、日本はやや遅れをとっている状況です。そこで現在、世界の先進事例に遅れまいと、多くの企業でオープンイノベーション推進室のような部署を立ち上げ、積極的にあらたな手法による革新的な研究開発に取り組んでいます。

通常の研究開発でもイノベーションは可能です。それでは、オープンイノベーションは、これまでの研究開発と何が違うのでしょうか。オープンイノベーションの意義や必要性、ナインシグマの実践的支援について、分かりやすく説明します。

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ブームとしての「オープンイノベーション」

日本に先立ち、全社的にオープンイノベーションへと舵を切った米国P&G社、蘭国フィリップス社、米国GE社、韓国サムスン社などの成功を見て、日本でも各社こぞってオープンイノベーション推進室を立ち上げ、この流れに乗り遅れまいと尽力しているのが昨今の状況です。

慎重な日本企業ですら、大手メーカーに限って言えば、もはや「レイトマジョリティ・ステージ」へと入っているのではないかと思われます。

ところで、「オープンイノベーション」とは一体なんなのでしょうか?この質問を周囲に投げかけたところ、「何それ?」「普通のイノベーションとの違いは何?」「外から何か持って来るイメージ?」といった回答が戻ってきました。つまり、仕事でオープンイノベーション活動にでも関わっていない限りは、ほとんどの方にとって、馴染みのないものであることは否定できません。ハッキリ言ってしまえば、「よくわからない」というのが、正直なところでしょう。

「オープン」と「イノベーション」という一見わかりやすい単語を組み合わせたものですが、その分かりやすさが、逆にどのようにも解釈できる状況を生み出してしまい、結果、分かりにくくしているのかもしれません。しかしながら、昨今のオープンイノベーションブームを、ブームとして終わらせるのではなく、組織に新たな知識をもたらすべく、正しく理解する必要があるのです。

 

 オープンイノベーションをブームで終わらせない

「オープンイノベーションとは何ですか?」

周囲に質問を投げかけたところ、「何だろう?」「普通のイノベーションと違うのか?」「外部から何かを持ってくるようなイメージ?」という回答が返ってきました。つまり、仕事でオープンイノベーション活動に関わっていない限り、ほとんどの方にとっては馴染みがない言葉です。「よく分からない」という認識が実情といえるでしょう。

「オープン」と「イノベーション」という分かりやすい単語を組み合わせた概念のため、どのようにも解釈できる曖昧さがあります。しかしながら、昨今のオープンイノベーションブームは、ブームとして終わらせるのではなく、組織に新たな知識をもたらす手法として、正しく理解して実施して成果を出すことが大切です。

日本に先立ち、全社的にオープンイノベーションに舵を切ったアメリカのP&G社やGE社、オランダのフィリップス社、韓国のサムスン社などの成功は、大きなインパクトがありました。したがって、日本においても各社こぞってオープンイノベーション推進室やイノベーションセンターを立ち上げて尽力しています。ところが大手メーカーに限れば、もはや「レイトマジョリティ・ステージ」の印象があります。

諸外国の成功に焦りを感じて、形だけの推進室や建物を設置するだけでは意味がありません。まず、オープンイノベーションの本質を理解することが重要です。

 

オープンイノベーションは社内外を通じた価値の創造

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「オープンイノベーション」という言葉を初めて提唱したのは、UCバークレー校のヘンリー・チェスブロウ教授でした。2003年、チェスブロウ教授がハーバード・ビジネス・スクールで教鞭をとっていた際に出版した「Open Innovation: The New Imperative for Creating And Profiting from Technology」という著書には、以下のように書かれています。

“ビジネスを取り巻く環境は変化している。イノベーションのプロセスもクローズドからオープンに変わらなければならない。”

書籍のタイトルに「オープンイノベーション」が使われていたことから、この言葉は広く知られるようになりました。チェスブロウ教授は、オープンイノベーションを次のように定義しています。

“the use of purposive inflows and outflows of knowledge to accelerate internal innovation, and expand the markets for external use of innovation, respectively.”

日本語に訳すと、以下になります。

企業内部と外部のアイデアを有機的に結合させ、価値を創造すること”

この定義にしたがえば、日本国内で既に行われている、企業間の提携、企業と大学間の産学共同の研究、自由参加型のコンソーシアム、グループ企業内の連携などもオープンイノベーションに該当します。

つまり、オープンイノベーションそのものは、まったく新しい概念ではありません。しかしながら従来のスタイルは、特定の業界、企業、個人による特別な活動であり、あらゆる局面で活用できる手法ではありませんでした。ところが、オープンイノベーションは、あらゆる企業のプロジェクトにおいて、社外組織を活用する可能性を検討することが特長です。

事業化や利益の追求に有効なことから、欧米などで多くの先進企業は「戦略的提携型オープンイノベーション」を定常的に活用しています。戦略的提携型オープンイノベーションでは、事業を行いたい企業が明確な目的達成のために、必要な技術を持つ企業や組織を見つけ出して、主体的に協業を持ちかけます。

チェスブロウ教授は著書の中で、オープンイノベーションには2つの側面があると述べています。1つは「外から中へ(outside in)」、もう1つは「中から外へ(inside out)」の側面です。

戦略的提携型オープンイノベーションも、2つのパターンに分けることができます。

1つは、研究開発に必要とする技術を広く探索する「技術探索(インバウンド)型」オープンイノベーションです。そしてもう1つは、これまで築き上げてきた技術を有効利用する「技術提供(アウトバウンド)型」オープンイノベーションになります。

ヒット商品が生まれにくい現在では、技術探索型(インバウンド型、How To Do型)に加え、「そもそも何をすべきか」を考えなければならないため、外部の知恵を積極的に活用するWhat To Do型のオープンイノベーションが注目されています。この手法では、スタートアップとの連携やイノベーションセンターの新設などを展開していきます。

 

オープンイノベーションが必要な3つの背景

それでは、なぜ現在「オープンイノベーション」の取り組みが重視されているのでしょうか。その理由には、技術開発に関する3つの変化が背景にあります。

①開発スピードの加速化と開発すべきことの多様化

商品のライフサイクルは短くなりつつあります。従来よりも短期間で商品を市場に送り出すことが求められるようになりました。これまではブレイクスルーが生まれるまでに数十年かかっていた技術分野でも、数年で新技術に置き換わる時代です。スマートフォンの普及と新機種の開発競争をイメージすると分かりやすいのではないでしょうか。

かつては「時間をかけてもよい商品を」という時代だったかもしれません。しかし、技術がコモディテイ化する傾向にある現在では、先行者利益を得ることが重要です。すなわち「いかに早く商品を市場に投入するか」が求められています。

さらに、様々な技術が進化しており、どれがデファクトスタンダードになるか分からない時代だということもあります。自動車ひとつをとっても、駆動源は内燃機関だけではなく、電気、燃料電池など複数の種類があります。従来は内燃機関だけを対象に、コスト削減、燃費向上に注力すればよかったかもしれませんが、現在は内燃機関だけの研究開発では競争に勝てません。電気や燃料電池の技術も必要になります。だからといって、自社の研究者や技術者の人数を大幅に増やすわけにはいかないでしょう。

すべきことが多くなり、かつ、迅速に市場への投入が求められている昨今、自社ですべてをまかなうことは現実的な方策とはならなくなっているのです。

②大手企業だけが研究開発をする時代ではなくなったこと

このような変化とともに、研究開発を行う組織の顔ぶれが変わってきています。

数十年前は、研究開発は大手企業の専売特許のようなものでした。すなわち、世の中の研究開発費の多くは大手企業で使われ、大手企業は競合企業の技術だけをウォッチしていればよい時代だったのです。しかし、現在、世界的に潤沢な資金がベンチャー企業に投入されるようになりました。そして、資金を調達したベンチャー企業から、人工知能、IoTなどさまざまな技術が生まれ、そこから新しい商品やサービスが生まれています。加えて、その技術は驚異的なスピードで進化しているのです。

このような状況下で、大手企業がグローバル市場で競合企業に対して優位に立つためには、すべて自分たちで考え、開発を行うより、有望な技術やアイデアを持っている組織と協業関係を結び、外部との連携によって競争力を高めて勝利をつかむ(=オープンイノベーション)ことが、有効な解決策のひとつになっています。

③チャレンジングな目標設定

そして、最も大きな要因と考えるのが、企業としての成長目標を高いレベルに設定していること、またそれを株主から求められている、ということです。現状維持で満足する企業、株主はいません。いずれの企業もさらに大きく成長しようと高い目標を掲げています。たとえば、Mondelez International(旧クラフト)はお菓子メーカーとしては世界トップクラスですが、かれらの目指す世界は、“世界最大の健康とウェルネスの消費財メーカー”になることです。自社の能力を超えたチャレンジングな目標が設定されており、自社や既存のパートナーとの協業では解決できないことが明らかなのです。すわなち、到底自社だけでは実現しえないような目標設定であるため、目標を実現するためには、外部の力を使わざるを得ない、オープンイノベーションが必然になっているのです。

また、閉鎖的な環境で「タコツボ化」している研究者が、外部と対話しながら刺激を受け、視野を広げる効果を狙って、オープンイノベーションを実践している企業も少なくありません。

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オープンイノベーションの実践的支援

ナインシグマの特長は、オープンイノベーションの「What To Do型」「How To Do 型」の目的に応じたサービスを提供していることです。

What To Do型に関しては、世界中のスタートアップから破壊的創造性に富んだアイデア・技術を募り、かつ有望なスタートアップが異業種の大手企業と議論する機会として“リアルテック・ピッチ”を提供しております。第1回(2017年12月開催)は、味の素株式会社、コマツ、大日本住友製薬等など10社の大手企業にご参加いただきました。

How To Do型に関しては、求める技術や協業パートナーを世界中もしくは日本国内から募るテクノロジーサーチ”、“テクロス(国内限定公募)”を提供しております。

さらに、What To Do 型とHow To Do型のハイブリッド型として「特定の課題があるわけではないが、ある分野でスタートアップと話したい」という場合には、世界中のスタートアップとの接点作りのお手伝いをさせていただく“アウトリーチ”というサービスを提供しています。

オープンイノベーションは魔法ではありません。オープンイノベーションを実践すれば何もかもが解決するわけではなく、単なる手法のひとつです。さらにオープンイノベーションを「武器」にするためには、研究者や技術者の意識改革を行い、研究開発はもちろん事業の進め方(予算や体制)を変える必要があります。また、マニュアルがあるわけではなく、業界や会社の風土によって各社各様の適切な推進が求められます。

とはいえ、この強力な「武器」を使いこなせるかどうかによって、これから企業の成長性は確実に変わっていきます。いかにこの「武器」を自分たちのものにするか。これからの世界では、その試行錯誤と仕組みの構築こそがイノベーションを生む鍵となります。

ナインシグマは、まだオープンイノベーションという言葉が浸透する以前の2006年に設立以降、日本国内だけで220社1200件以上のプロジェクトを通して、大手メーカーのオープンイノベーション活動を支援してまいりました。

これらの経験とノウハウを生かして、具体的な課題を対象にした実践支援はもちろん、社内の啓蒙活動や推進体制などをサポートすることが可能です。ご興味のある方は、ぜひご連絡ください。

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