インタビュー 大阪大学 正城先生

「何か成果が出たのか」「本当に何が大学に必要なのか」ということが問われている

日本の産学連携に関して、どのようなお考えをお持ちでしょうか?

2004年に国立大学が法人化され、その一環で知財の取り扱いに関する考え方も変わりました。「知財に関する契約はしっかりしましょう」、「シーズをニーズにマッチさせましょう」と言われて10年となりますが、「何か成果が出たのか」と指摘を受けることも多く、いま改めて「本当に何が大学に必要なのか」ということが問われていると思います。 そのような中で、徐々にではありますが具体的な動きも出始めています。大学も「技術を生かす」ことに注力し始めているので、これからがその集大成だという意識でいます。

大阪大学は、産学連携活動が最もうまく進んでいる大学の一つだと思いますが、実際どのような取り組みをされているのでしょうか?

大阪大学は産業界の支援を受けて設立したという背景もあり、もともと産業界との結びつきは強く、産学連携に前向きだと思います。 法人化以降は、Industry on Campusと銘打って、共同研究講座の開設や協働研究所の設立など、日本で初めてといわれる制度を導入し、特に積極的に産学連携を進めています。たとえば2013年4月時点で、共同研究講座が29講座あり、企業からいただく1講座当たりの平均年間研究費は2, 600万円になります。また、5つの協働研究所では、平均年間研究費3, 900万円をいただいております。年間の共同研究費総額は、約30億円となり、ここ10年で2. 5倍になりました。具体的な成果も出始めているので、近い将来、実用化につながるモノが出てくると期待しています。

その一方で、大阪大学の取り組みに関して、どのような課題を感じていますか?

一口に「共同研究」というくくりで議論できないと感じています。大阪大学でも、約900件の共同研究の8割は、研究費300万円未満の少額です。具体的な成果を求めているというより、広くネットワークを維持することが目的のように見えます。一方で、事業化の目的を明確化して「これを解決するために共同研究しましょう」という姿勢で、人も派遣するしお金も出す、本気度の高い企業もありますが、結果の差は明確です。こういった事情に合わせた新しい取り組みが必要かもしれません。
例えば、共同開発で得た知財を企業が独占的に所有するため、せっかく共同研究で得られた成果をほかの研究に活用できない、という一面もあります。自らの投資で得た成果を独占したいと思うのは当然ですが、日本という国レベルの目線で考えた場合、もう少し柔軟に動ければよいと感じています。一業種に複数の大企業が存在する日本の場合、「●●先生はすでに競合の●社と組んでいるから、一緒にはできない」という声を聞きますが、「それでよいのか?」と疑問を感じます。小さな共同研究が多数あり、知財が分断されていく様子を見ていると、日本連合として効率化できる部分はあるような気がします。

基礎研究の場としての大学と、実用化のための産学連携の両方が実現できて、理想の姿になる

大阪大学 正城先生

大学としてはどうするべきでしょうか?

大学としても、実業につながる研究をもっとすべきではないでしょうか。「基礎研究の場としての大学」という位置づけはこれからも絶対に必要ですが、同時に、企業と連携して価値を創造していく研究もするべきだと思います。基礎研究の場としての大学と、実用化のための産学連携の両方が実現できて、理想の姿になると思います。
大阪大学では、「テクノアライアンス棟」を2011年に設立し、100名以上の企業の研究者が常駐し、システマティックかつ迅速に大学と企業の協働を進めています。大学が行う基礎研究のそばで、実用化を担う様々な人材がキャンパスに集まる施設や仕組みを今後も進めたいと考えていますし、国等の支援も期待しています。

ナインシグマのような技術仲介業者の役割はどうお考えでしょうか?

この仕組みは、昔から各大学の制度にある「技術相談」を、思いきりグローバルに広げたものだと感じます。大学のポテンシャルを生かす機会なので、うまく使えばよいと思います。大阪大学の場合、ナインシグマが配信する募集要項を、産学連携本部の担当が選り分けてしかるべき先生にお届けするという仕組みをとっています。同時に、定期的に配信される募集要項は、学内メーリングリストや大学のポータルに掲示して、広く教職員の目に触れるようにしています。
それから、募集要項を通して世界中の大手メーカーの技術ニーズを知ることができるのは貴重です。大手メーカーが困っている課題や探している技術をリアルタイムに見ることができるので、今後の研究の方向性を考える際にも役に立つと思います。
他の国立大学も、それぞれ面白い研究をされていますし、各地域において独自に産学連携に取り組んでいます。このような仕組みを利用して、既存の枠にとらわれない産学連携を進めるというのもよいのではないでしょうか。ナインシグマの仕組みは、いろいろな意味で、産学連携を支援するツールとなると思います。

大阪大学 正城先生

教授/工学博士 正城 敏博

大阪大学
理事補佐

産業連携本部
総合企画推進部 部長
知的財産部 部長

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